公開日2026.03.19
ショップの魅せ方に学ぶ、「アクアリウム」のある空間づくりのコツ
仕事や家事に追われ、慌ただしい日常を送る人々に注目されているのが「アクアリウム」。水中をゆったりと泳ぐ魚や、水のきらめき、生き生きと育ち揺れる水草。それらを眺める時間は心に安らぎを与え、空気の流れを作り、五感を呼び覚ましてくれます。
前回の記事ではショップに学ぶ、「吊る」テクニックをご紹介しましたが、今回はご紹介したいのは空間に「水を飾る」という新しい視点です。
8rium に聞く、アクアリウムのある空間づくり
▲ ビルの2階にある公園のような空間。8riumショールーム
今回は、大阪を拠点にアクアリウムの新たな可能性を追求する「8rium(エイトリウム)」さんを訪問。取り組みを紹介するとともに、代表取締役であり、水環境・生物クリエイティブディレクターの浦田恭資さんに、まず「アクアリウム」を取り入れる効果について伺いました。
▲ 8rium代表取締役、水環境・生物クリエイティブディレクターの浦田恭資さん
自然の摂理と最新技を融合し、五感で楽しむアクアリウムの可能性を追及する「8rium」。
アクアリウムとは、魚を飼うためだけの「飼育水槽」ではなく、水槽の中に水草やサンゴを用いてレイアウトを作り込むことで「生態系」を再現することです。再現された水槽内は、まるで小さい地球。8riumではこの生態系のバランスを再現することで環境負荷を抑え、植栽や照明も合わせた、豊かな暮らしの提案を行っています。
浦田さんは、幼少期から京都府舞鶴市の豊かな自然の中で、山や川を駆け回って過ごしてきたそう。「自然の一部を切り取って、飼育方法を研究し愛でる」という原体験が、現在の“循環”を重視するアクアリウムスタイルに繋がっています。
▲ 浦田さん「物心ついた頃から魚を捕まえてきて飼ったり、山から松の苗を取ってきて盆栽もしていました。」
“命の循環”を感じる、心豊かな時間
8riumが力を入れるプロジェクトのひとつが「アクアポニックス」。これは、魚と植物を同じシステムの中で共生させる、循環型農業システムを水槽に応用したもの。魚の排泄物を微生物が分解し、それを植物が肥料として吸収し成長。浄化された水が再び魚の水槽へ戻るサイクルを、アクアリウムの中だけで完結させた仕組みです。この「命の循環」を、自宅に設置した水槽で目の当たりにできるのが最大の特徴です。
▲ 新人スタッフがレイアウトを模索中の水槽
アクアポニックスの基本構造は、「水槽」「植物の栽培スペース」、水を植物の根元へ送り再び水槽に戻す「循環ポンプ」、微生物を定着させる「ろ過槽」の4つ。まず水と砂を入れた水槽に水草を入れ、ポンプを稼働。そこから約1カ月はバクテリアを増やし環境を整える期間として、魚など生き物を入れるのはぐっと我慢。目に見える生き物の飼育だけを目的にせず、生態系そのものを時間をかけて育み、楽しみます。
アクアポニックスの中で巡る循環のサイクルに、その場で暮らす人間も組み込んだのが、パセリやレタスなど食べられる野菜が育つ水槽。観賞用だけでなく食や教育を学ぶ場として、子どものいる家庭に設置されることも多いそう。
▲ 金魚の糞が肥料になり循環。パセリが元気に育っています。
「綺麗な水草も良いですが、食べられるものが育てば嬉しいですよね。」と浦田さん。
さらに、アクアリウムを住まいに取り入れることは、多面的な価値を暮らしにもたらします。
水が流れる音は、「アルファ波」を発生
アクアリウムは光・音・動きを同時に提供できる装置。水が流れる微かなせせらぎの音は、ストレスを軽減し、脳内にリラックス状態を示す「アルファ波」を発生させて集中力を高める効果があると科学的に明らかになっています。近年では企業のオフィスや商談ルームに設置するケースも多いそう。
▲ デスクの前に水槽を設置すると、癒されながら集中して仕事ができそう。写真提供:8rium
経営者が注目? アクアリウムで運気アップ
アクアリウムは風水の観点でも「運気を呼び込む装置」として、経営者などから注目されています。 風水では、清浄に管理され、絶えず循環している「動く水(動水)」が金運を上げるとされており、逆に淀んだ水は避けるべきとされています。
美しい水槽を維持することは、すなわち部屋の清潔さと秩序を保つことであり、その「手入れの行き届いた空気感」こそが、住む人の心と運気を整える最高のインテリアとなります。
▲ 綺麗な水が流れることで、運気も停滞せず流れてくれそうです。
アクアリウムをインテリアに取り入れるポイント
水槽内のデザインや植物の生体管理など、必要な知識の多さに「アクアリウムを自宅に取り入れるのは難しそう…」と二の足を踏んでしまいそうですが、浦田さんに専門家の知見を活かした、無理なく癒やしの空間を維持し、アクアリウムのメリットを効果的に引き出すポイントを教えていただきました。
1:「水槽は小さければ楽」は落とし穴? 維持管理のしやすい大きさを
アクアリウムの最大の懸念点は「メンテナンス」です。「全滅させてしまいそうで怖いから…」と初心者は小さな水槽を選びがちですが、実はある程度水量が多い水槽の方が、水質が安定し、管理は楽になります。
水質が安定する水槽のサイズ:幅60㎝以上が目安
あらかじめ手間と難易度が低くなるよう設計しておくことが、長く楽しむための秘訣です。
▲ 小さい瓶なら、魚を入れず水草や石で自然景観を表現する「ネイチャーアクアリウム」がおすすめ。
2:癒しを求めるなら、リビングや寝室、窓のない部屋に
玄関に水槽を置くのは一般的ですが、滞在時間が短いのが残念。より長く目に触れる、リビングや寝室の方が癒やしを実感しやすくなります。
▲ 家族が集まるキッチンカウンターに設置。自然に会話も弾みそうです。写真提供:8rium
また、窓がなく、殺風景になりがちな廊下やオフィスの一角に水槽を置くと、「窓」のような役割を果たすことも可能。照明によって明るさが生まれ、空間に奥行きと「生命の動き」が加わり、一気に過ごしやすい場所へと変化します。
▲ 暗くなりがちな部屋の隅も、光と水で明るく、動きのある空間へ。
「窓の無い廊下など閉鎖的な空間も、水槽を置けば風景になります。ゆらゆら動いているものがあると、雰囲気がガラッと変わります」と、浦田さん。
3:アクアリウムを間仕切りにして、柔らかく区切る
透明なアクアリウムは空間を緩やかに仕切る「パーテーション」としても使うことができます。例えば、リビングとダイニングの間などに水槽を配置すれば、どちらの部屋からも美しい水槽を、別のアングルで楽しむことができます。壁やパーテーションのように完全に区切らないので視線が抜け、開放感を損なわずに空間を分けることができます。
▲ 洗面スペースと寝室を水槽で柔らかく区切った設置例。写真提供:8rium
さらに、円柱や壺のような形状など曲線が印象的なものを部屋の中央にオブジェのように配置することで、360度どこからでも生命の躍動を感じられる空間になります。
▲ まだ熱く柔らかいガラスを木の根に押し付けて制作された水槽。アート作品のよう。
4:窓際に置く場合は、注意が必要
窓際は日光が強すぎてコケが発生しやすくなり、水温が急激に変化しやすいので、注意が必要です。カーテンやブラインドを設置して、気候や時間帯で調整できるようにしましょう。
▲ 窓際に置く場合はブラインドやカーテンで環境の急激な変化を調整。写真提供:8rium
5:建築時の設計段階から水槽の設備を組み込むことで、維持管理がラクに
アクアリウムを本格的に楽しむなら、後付けではなく家を建てる段階からのプランニングが理想的です。というのも水槽は、水が入ると想像以上の重さになるからです。例えば、90cm規格の水槽では水を入れると約150kg以上にもなり、床の補強が必要になる場合もあります。
▲ 水槽下部に電源やフィルターを収納。水槽の設置を前提とすると綺麗に収まります。写真提供:8rium
また、水槽の足元に水道配管と排水口を設けることで、日々のメンテナンスの手間を軽減。フィルターや照明、ヒーターなど、水槽周りは多くの電源を必要とするので、専用のコンセント位置も設計段階で組み込むと、スッキリ設置することができます。
「設計の段階で相談ができれば維持管理のストレスが少なくなるので、失敗してリセット(買い直し)のリスクやコストも減らすことができます。」と浦田さん。
設計やリフォームの段階で施工会社と相談し、基礎や配管、配線などを考慮して設置場所を決めると、安心かつ綺麗な収まりが実現します。
メンテナンスが不安なら、プロの手を借りよう
「アクアリウムに興味はあるけど、自分で全て管理するのは不安…」という方は、8riumのような専門業者による月1回の定期メンテナンスやレンタルサービスを利用するのも一つの手です。プロの手を借りることで、常に状態の良い「水景」を維持でき、生体を死なせてしまうのでは、という不安も解消できます。
「デザインだけで水槽内を構築すると、管理が難しい場合も。この水草は照明の近くは苦手、この魚は上から眺める方が綺麗に見えるなど、生態によって使い方も変わります。メンテナンスの楽さを軸にした配置もありますよ。」浦田さん。
▲ 新人スタッフがレイアウト模索中の水槽。照明からの位置など、植物によって最適な場所があるそうです。
まとめ アクアリウムで水辺の風景を日常に
魚を飼うためだけの水槽ではなく、小さい地球のような「アクアリウム」は、私たちの感性を潤してくれる装置。窓から見える風景を選ぶことは難しく、大きく変化させるには引っ越しが必要ですが、アクアリウムを上手にデザインすれば「理想の風景」を作り出すことが可能です。
観葉植物を買っては枯らし、夜店の金魚も全滅させてきた筆者ですが、今まで失敗した理由のヒントももらえた気がしました。小さな水槽の中に広がる「自分だけの世界」。きっと住まいと暮らしをより豊かに彩ってくれるはずです。
▲ 心地よい空間で、ついつい長居してしまいました。浦田さん、ありがとうございました!
家のネットを、もっと快適に。
「eo光」が選ばれる理由
取材協力
8rium
株式会社a.a.c.が運営する、自然の摂理と最新技術を融合させてアクアリウムの可能性を追求するブランド。生態系のバランスを再現することで、環境負荷を抑えた施工・管理を提案。持続可能かつ、未来を見据えたプロジェクトを展開し、癒やしの空間を提供する。2026年春・夏にショールームがカフェとしてオープン予定。
■8rium(ショールーム兼オフィス)
大阪府大阪市西区北堀江2丁目17-13
8riumビル
営業時間:10時から18時(土日定休日)
ライター
ライター
米田 ゆきほ
WEBメディアや地元新聞社に年間250本以上出稿するフリーランスのライター。溜まった原稿と最低限の荷物を持ち旅に出るのが何よりの楽しみ。私生活ではマンションの住み替えやフルリノベの経験もあり、快適な暮らしを追求中。





