らしさのある家

2023.02.08

川西市に古民家を移築。古き良き設えを残しながら、遊び心を忘れない暮らし

川西市に古民家を移築。古き良き設えを残しながら、遊び心を忘れない暮らし

古びた大黒柱、天井に張り巡らされた梁や中庭に面した縁側など、趣きのある木造古民家。「木だわり」をテーマに木造建築を専門とする一級建築士の坂井 信夫さん・のり子さんのご自宅に伺いました。和歌山県の古民家を、兵庫県川西市に移築したという住宅には、お二人の遊び心が見え隠れする空間が広がっていました。

古き良き古民家をリノベーションする楽しみ

最寄り駅の能勢電鉄・鼓滝駅を降りて、急な坂を5分ほど登ると左手に坂井さん夫婦のご自宅が見えてきます。建物の1階は株式会社 坂井建築事務所のセミナー室、2階は移築した古民家となっています。「簡単に言うと、コンクリート造の建物に平屋の木造古民家を乗せた構造です」と信夫さん。玄関があるのは、道路に面している2階部分。急傾斜地を最大限に生かした設計となっています。

▲ 門から玄関までは桟橋を渡っていく。

▲ 橋の下には中庭が広がる。1階はセミナー室

玄関扉を開けるとまず目に入るのは、1階につながる赤い螺旋階段。螺旋階段の手すりは滑り台になっています。
「私のリクエストです。幼稚園の時、滑り放題にあこがれていて」と、少女のようにほほえむのり子さん。2階のキッチンから1階の事務所まで、コーヒーを入れて滑り台で降りるのが、のり子さんの日課なのだそう。こういう遊び心が叶えられるのも、リノベーションの楽しみのひとつかもしれません。

▲ 和紙の照明が印象的な玄関。

▲ 螺旋階段の手すりは滑り台にも。赤い鉄の手触りは、まさに遊具を思い起こす。

リビングの片側は一面窓。広い空と目下に広がる川西市の風景を望めます。建物の輪郭がはっきりと見えて美しいのは、太陽の光を壁が受けているから。「窓は北向きなんです。これは窓からの借景を楽しむための仕掛けなんですよね」と信夫さん。木で囲まれたリビング。隅で焚かれている暖炉の火が、優しく部屋を温めてくれます。初めて訪れた人でもほっと落ち着けるのは、古民家のなせる技なのでしょうか。

▲ 仕切りのない開放的なリビング。

▲ 暗くなりがちな古民家でも、天窓のおかげで明るい。日中は自然光だけでも大丈夫なのだとか。

▲ (右)坂井 信夫さん、(左)のり子さん


この場所に惹かれて約20年。300坪の土地購入と古民家移築

「20年ほど前からこの場所で、借家暮らしをしていました。当時は、周りに家もなく、森の中の一軒家という感じだったんですよ」。
借家暮らしが長くなるなか、この場所で一生暮らしたいと思い始めた坂井さん。しかし、土地が広くて高額だったことがネックでした。地主さんとの関係は円滑で、採れたて野菜の交換をし合ったりなどの交流を続けていました。そんななか、地主さんに思い切ってここに住み続けたいという意思を伝えたところ、承諾。約300坪の土地を超格安で譲ってくれることになりました。

▲ 手前が前室、そして奥が障子で区切られた座敷。

▲ 外から和室を見た様子。窓を開けて茶道が楽しめるように、すだれの高さにも配慮がある。

そして、古民家を移築するきっかけとなったのは、信夫さんの兄からの「実家のある和歌山の古民家一棟、いらないか?」という連絡でした。「古い家が好きだったので、思わず手を挙げましたね(笑)。しばらく解体したまま置いてあったのですが、土地の購入と建築事務所の移転を機に自宅を建てることをと考えた時に、新築住宅ではなく、この古民家を移築する方法を選びました」

▲ 1階と2階の境目。RC造と木造が組み合わさった構造は、混構造となり、建築申請が通るまでに半年かかったそう。

▲ 1階のセミナー室。2階とは打って変わって、和洋折衷の空間となっている。

大変だったのは、解体した材木運び。長いもので約15mの長さもあったため、トラックに乗せて道路を通行するのは骨の折れる作業…。朝の3時頃、車の交通量が少なく、電車の通らない時間を選んで、和歌山から兵庫県川西市までなんとかすべての材料を運び切ったそうです。

もともと農家の家だったというこの古民家は、土間、奥が台所、4間の和室という典型的な田の字住宅。坂井さんがこだわったのは、古民家が本来もっている良さをなるべく残すことでした。

「全ての古民家において言えるのですが、古民家は、間取りや風通しへの配慮など、原型のままで十分にバランスが取れています。自宅兼事務所に関しても、それをなるべく崩さないように心がけながら、現代的な暮らしにもなじむように微調整を施しました」

▲ 2階の水廻りへと続く廊下。

▲ 省エネを意識し、太陽光発電や風力発電、地下水利用を取り入れた。

もともと借家の頃は、くみ取り式トイレで、水道も井戸水という環境。立て直す前に、ちょうど公共の下水道が通ったことで、現在も、上下水道と井戸水を使い分けています。
昔と比べて大きく変わったのは、インフラ設備環境。「古民家をリノベーションする際は、ネット環境がつながっているかどうかは、最初に確認しておくのがおすすめです」と坂井さん。自宅が仕事場と併設されているために必須となる、スムーズなネット環境。高速のWi-Fi通信設備を設置することで、問題なくインターネットが使用できています。


癒しとしつらえを残しながら、遊び心のアレンジを加えて

使われている木材はすべて無垢材。古民家は使えば使うほど、住めば住むほど味が出てくる、新築では得られない風情を感じます。そんな中に、遊び心を楽しむのが坂井家ならではでしょう。
子どもたちが集まるときの“たまり場”になるのが、屋根裏部屋。廊下にある本棚の壁にかかっているはしごを登るとたどり着けます。ちょうどリビングの上にあるので、上から下を覗いて、会話に参加することもできます。家族が集まると、上でお昼寝する人も続出するそう。

▲ 廊下の本棚から繋がる階段は…。

▲ 屋根裏の隠れ家につながっている!

▲ 屋根裏には東西に2つのスペースを用意。なんと、木を渡り歩いて行くというアクティビティ付き。

季節の生花に、部屋のあちこちに宝探しのように置かれた動物の置物。骨董品や古道具に混ざって、インテリアにはのり子さんのセンスが光っています。「2人とも骨董市が好きで、出かける度に仕入れます。古民家に付随する蔵の中から発掘したものも多いです。この空間に合いそうなものをセレクトしている感じかな?」とのり子さん。

▲ 玄関の土間も、こだわりの仕上げ。近所のホームセンターで購入した石を裏返して使うことで凸凹面が楽しめるオリジナリティのある踏み石に早変わり。

▲ 部屋に四季の移ろいを届ける、のり子さんの生花。

▲ リビングで図面のチェックをする信夫さん。

▲ 壁に並べられた落雁の木型とお焼きの鉄型。

自宅はモデルハウスとしても公開されているので、これまで多くの人が見学に来られています。ここに滞在した人の多くが、実際に、「癒しを感じる」と口にするのだそう。
木造建築の家を設計したお客さんに、“自分の家が一番癒やされる、旅するよりも家にいるほうがいい”と言われたときは、一番嬉しいと信夫さんは話します。

「古民家は、田舎で暮らしていた頃を思い出すんです。歴史や文化の重さを感じられるところが大きな魅力。もちろん不便なこともありますが、その引き換えに受け取るものの方が多いです。昔の木造住宅は、良質な素材から作られています。いい古さにはいい美しさが伴います。これはハリボテの家ではなかなかたどり着けない本物の魅力。新築には生み出せない美しさですよ」


あとがき

古民家に癒やしを求めるのは、人間の原点だと、信夫さんがおっしゃった言葉にぐっときました。木に囲まれた空間にいると、確かに心が自然と落ち着きます。それは日本人だからこその感覚なのでしょうか。古民家をなるべく元の状態のまま移築するというところにも、こだわりを感じました。古民家や古い家を建てたい方や興味のある方は、ぜひ一度、“木だわり”の「つづみの杜」に足を運んでみてください。


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取材協力

株式会社 坂井建築事務所

兵庫県川西市鼓が滝1-20-27 木に、人に、暮らしにこだわる、木だわりの家づくりを行う建築事務所。川西・宝塚・箕面エリアを中心に、新築、リフォーム・リノベーションなど、無垢材や自然素材で建てる木造住宅・古民家の再生を行っています。

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