公開日2025.03.13
丸ノコは危険?安全で正しい使い方と選ぶ際のポイントを解説

木材をカットする工程は、DIYにおいて最も頻度が高く、初心者であっても重要な工程。そのカットを直線に正確に、かつスピーディーにできる工具、それが「丸ノコ」です。
プロの世界からDIYまで幅広く使用されている丸ノコの正しい使い方と注意点、選び方について解説していきます。
木材カットに便利な工具「丸ノコ」の特長
教えていただいたのは
大阪市東淀川区にあるDIY体験型レンタルスペースTCCO CRAFT FACTORY(トコクラフトファクトリー)。プロの工具で使い方を学べる講習(初級〜上級)も受講できます。「使い方をしっかり学べばとても便利な道具がたくさん。ぜひ使ってみて欲しいです。」と麻田さん。

▲ TCCO CRAFT FACTORY
店長 麻田 綾子さん
丸ノコとは?

丸ノコとは、電動で刃を回転させることで木材や金属、プラスチックなどをカットする工具です。材料をカットしたいとき、スピーディーに、かつまっすくカットができるため、大工仕事や建築現場などで広く使われています。刃を付け替えることで、金属用やプラスチックなどもカットができます。

▲ 卓上丸ノコ
丸ノコには作業台などに設置する「卓上丸ノコ」もあります。卓上タイプは、カットできる長さが30cmほどまでとなり、角材などの短い木材のカットに適しています。
以下の記事では、卓上丸ノコと丸ノコを使って木箱を作るDIYを紹介しています。
プロの電動工具で使い方が学べる!工務店直営のDIYレンタルスペース
丸ノコがあれば、いつでも木材を好きなサイズにカットできる

丸ノコがあると、長さのある木材でもまっすぐにスピーディーにカットすることができます。力を入れる必要もないのでノコギリでカットすると手が疲れる…という方の手助けになります。
例えば、ノコギリを使った場合に10分以上かかった木材も、丸ノコを使えば10秒ほどでカットができます。ノコギリでカットすると断面がガタガタになりがちですが、丸ノコを使えば綺麗に仕上ります。
丸ノコは危険?知っておきたい注意点
丸ノコは非常に便利な電動工具ですが、以下のような危険性と注意点があります。
キックバックについて
丸ノコは刃が進行方向と逆回転してしまう「キックバック」を起こす危険があります。キックバックは固い木材や、木材に直接刃を当てて丸ノコを作動させた際に起こりやすくなります。キックバックが起こり、慌てて手を離してしまうと丸ノコがまわりにあるものを巻き込んでしまう恐れもあり、初心者にはハードルが高いと思われる電動工具です。

キックバックを防ぐためにも、丸ノコを作動する際は、木材から離した状態で作動させることが原則です。また、一旦丸ノコを作動してカットし始めたら最後までカットすること。途中で止めて再開する場合、丸ノコの刃を離した状態で作動することが難しくなります。
後述する丸ノコの正しい使い方を学び、練習をすることでキックバックの危険は防ぐことはできます。練習をして安全に使えるようになれば、とても便利な工具になります。
ゴム製の手袋・敷物は必須
丸ノコを使用する際、手袋は必須です。布や糸状のものは、巻き込む可能性があるため、滑りにくいゴム製の手袋を用意しましょう。サイズが大きいと抜けたり、巻き込みが起こることもあるのでジャストサイズのものがおすすめです。
また、作業台やテーブルを傷つけないよう、必ず敷物を用意しましょう。よく使われているのは、「スタイロ」という発泡プラスチックの断熱材です。柔らかいうえ、衝撃吸収性に優れているので敷くことでキックバックの防止にもつながります。また、屑も出にくく、カットがしやすくなります。

作業音と木屑について
丸ノコは作業音が大きいため、近隣に対して騒音になる可能性があります。また、木屑もまわりにたくさん飛び散ります。そのため、騒音や木屑が気にならない作業部屋や屋外の場所を確保する必要があります。
丸ノコを選ぶ際のポイント
125mmと165mmでは、どちらがおすすめ?

丸ノコは、刃の大きさによって本体のサイズが異なります。上の写真(左)は刃の直径が125mm、写真(右)が165mmの丸ノコです。他にもサイズがありますが、大きくなるほど厚みのある材料をカットすることができます。厚みが40mm以上の木材をカットする場合は、刃の直径は165mmの方がおすすめです。
例えば、125mmか165mmのどちらを購入するかでお悩みの場合は、普段よく扱う木材を基準に考えるとよいでしょう。
ホームセンターで販売しているパネル状の木材に厚みが35mm以上のものはほとんどないため(角材などの厚みのある木材は除く)、ホームセンターのパネル状の木材をよく使う場合は、刃の直径は125mmで十分と言えるでしょう。DIYでよく使われる2×4材の厚みも38mmです。
ただ、今後DIYを極めていきたい方、様々な厚みの木材や材料をカットしていきたいという方なら、1つ大きい165mmを購入するのもよいでしょう。サイズが大きくなると丸ノコ本体も大きくなって重くなり、その分操作が難しくなることは考慮しておきましょう。
コード式とバッテリー式では、どちらがおすすめ?
丸ノコにはコード式はバッテリー式があります。コード式は、電力が一定に供給されるのでカットするパワーが安定しています。ですが、電源のない場所、固定の場所で使用する時に延長コードを引き回さないといけないことがあり、コードが邪魔になる場合もあります。また、刃にコードが引っかかり、巻き込んでしまうこともあるので注意が必要です。
バッテリー式はコードがないため、持ち運びが自由で機動性に優れます。ただ、使用するごとに電力が減っていくのでカットするパワーが弱まることがあり、安定性は低くなります。また、バッテリー式はコード式と比べると高価になります。
どちらがよいかも用途によって変わりますが、DIYで木材のカットで使う場合、丸ノコを長時間使用することは少ないので、バッテリー式の方が「便利」と言えるでしょう。
丸ノコの正しい使い方

今回は、マキタの充電式マルノコ(HS475D-474D)を使って正しい使い方について説明していきます。

まず、カットする木材の厚みを確認しましょう。丸ノコの刃は、目安として木材の厚みから5mmほど長く出す必要があります。
例えば、21mm程度の厚みがある木材をカットする場合、21mm以上に丸ノコの刃を出す必要があります。21mm未満になると木材を完全に切り落とすことができず、木材に溝を掘った状態になってしまいます。

木材の厚みにあわせて深さ調整用レバーで刃の長さを26mmほど出します。
木材の厚みから5mmほど長く刃の長さが出ていればOK。

丸ノコにガイドを装着します。まっすぐカットするにはこのガイドは必需品です。丸ノコのガイドは別売りになりますが、ガイドなしのフリーハンドでカットすることは至難の業のため用意することをおすすめします。ガイドには様々種類がありますが、装着できるタイプが一番使いやすかったため、こちらを使用します。


ガイドはベースに装着できるようになっています。差し込んで固定します。

木材にガイドを押し当てカットしていくことで、丸ノコがブレることなく、まっすぐに切り進めます。これで丸ノコの調整は完了です。

切り始める箇所に目印を付けます。

この時、丸ノコの刃が当たる場所に注意しましょう。刃の厚みを考えて目印の外側に刃を当てて切り始めましょう。丸ノコの刃は数ミリの厚みがあるため、目印の中心に刃を当ててカットすると、刃の厚みによる誤差が発生してしまいます。

丸ノコを作動します。安全性のため、ロックオフボタンを押したまま、スイッチボタンを引くと動き始めます。ロックオフボタンを押さないとスイッチボタンを引いても動きません。またロックオフボタンは左右どちらも作動するので押しやすい方、使いやすい方で問題ありません。

切り始めは木材から刃を離し、丸ノコを作動します。木材に刃を当てて丸ノコを作動し始めるとキックバックを起こす危険性があります。また、切り口がズレてしまい、木材がボロボロになることもあります。必ず刃は離した状態で作動させ、カットするようにしましょう。

立ち位置は、丸ノコの後ろでまっすぐ上へと切り進めていくと思われがちですが、正しい立ち位置は、丸ノコの横です。横に立つことでキックバックが起こっても回避することができます。また、後ろに立ち、上へとカットするのは難しいという理由もあります。丸ノコを持っていない手は丸ノコの前に出し、指3本ほどで木材を支えます。

力の入れ方のポイントは、しっかりガイドを木材に押し当てながら、一定の力で滑らせるように押し進めることです。また、切り始めてからの目線は、刃やカットしている木材にいきがちですが、ガイドだけを見て押し進めるようにしましょう。刃や木材を見ると力があらゆる方向に拡散し、斜めにズレてしまうことがありますので、意識するようにしましょう。

切り進めて終わりに近づいたら、丸ノコを持っていない手の指3本は丸ノコの後ろに移動し、木材を支えます。

丸ノコを進ませて最後まで木材を切ります。丸ノコを一旦作動し始めたら、最後までカットすることは重要です。途中で止めてまた同じ位置からカットしようとすると、歯が木材に当たったまま作動してしまい、キックバックを起こす可能性が高くなります。

正しく使えば安全に、直線にカットすることができます。素早くカットができるので、量産することもできます。
その他、丸ノコでできること
断面を斜めにカットすることができる

丸ノコは「角度調整用レバー」を調整することで、断面を45度までの範囲で斜めに木材をカットできます。


斜めにカットすることで、テーブルの天板の縁を斜めにしたりすることができます。また、木材の端(切った面)を45度にカットしてつなぎ合わせる「留め」という方法で、カットした面を見えなくして木材を一枚板のように見せることもできます。
少し難易度が高いため慎重に行う必要がありますが、ワンランクアップの仕上がりになります。
木材の溝堀にも使える

丸ノコの刃を木材の厚みより浅くすることで、溝を作ることができます。その際は掘りたい溝の幅の分、丸ノコを何度か作動する必要があります。


仕上げに鑿(のみ)で削り、整えていくことで綺麗な溝になります。トリマーがないとき、丸ノコでも溝が出来上がります。
トリマーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【DIY工具】木材の角を丸くしたい時は、『トリマー』が便利!
まとめ

丸ノコは自宅にあれば、余った木材のカットも簡単にできる便利な工具です。ですが、丸ノコなどの回転式の電動工具は、キックバックや巻き込みなど危険も伴います。
今回、トコクラフトファクトリーさんで体験してみてわかったことは、言葉で聞いて使い方を覚えるよりも、体験して身体で覚えることが大切だということ。実際に使ってみることで、丸ノコを使う危険度とその便利さがリアルに学べます。
丸ノコを使ってみたい方、丸ノコの購入を検討している方は、トコクラフトファクトリーさんが開催している「初めての電動工具講習」で体験して学ぶのもおすすめです!
協力
TCCO CRAFT FACTORY
大阪府大阪市東淀川区大道南2-14-6
工務店が運営するDIY体験型レンタルスペース。ものを作りの楽しさをもっと広げていきたい、不要になった木材やタイルの端材・廃材を再利用したいという想いから生まれた「作るを楽しむファクトリー」。
公式サイトから予約ができます。作り方や材料などLINEで相談することもできます。
