公開日2025.11.18
セルフリノベーションは本当に安い?費用と工数の落とし穴|セルフリノベ入門Vol.1

家づくりの方法として近年注目を集めている「セルフリノベーション」。「DIYとか、そういうのが得意な人の分野でしょ?」と思われがちですが、実はいま、どんな人でも自ら理想の住まいを実現できるようサポートしてくれる、DIY支援型サービスも誕生しています。
そこでsumicaでは、これからセルフリノベを始めたいと考える人に向けた入門記事を第3回にわたってお届け。費用のこと、伴走してくれるプロのこと、自分の手で完成まで進められる方法などをご紹介していきます。
セルフリノベには、思わぬ落とし穴がある?
セルフリノベ入門Vol.1で取り上げるのは、リノベーションする際の「費用」と「スケジュール」について。自分の手で思い通りの家づくりができて、そのうえ安く済ませられるイメージですが、実はある「壁」があるようで…。
教えていただいたのは

株式会社 TSUDA CONSTRUCTION COMPANY
代表取締役 津田 直樹さん
店舗住宅のデザイン・設計・施工のほか、家具什器などの製品企画や開発なども手掛ける。工務店ならではの知識と技術を生かし、セルフリノベーションを二人三脚でサポートするサービス「教えて!工務店」を展開している。事務所下にあるDIYスペース「TCCO CRAFT FACTORY」では、レンタル工具の貸出しやワークショップを開催。
安いけれど、時間がかかる——セルフリノベのメリット・デメリット
中古物件を自分好みの空間に生まれ変わらせることができるリノベーション。一般的には工務店などのプロに依頼し、設計・施工・仕上げまでをお願いしますが、そのすべてを家自身で行うのがセルフリノベーション(以下:セルフリノベ)です。
その最大のメリットは、何といっても「安さ」です。設計・施工を手掛ける工務店や現場で作業を行う職人さんに支払う人件費がかからないため、コストを大幅に抑えることができます。実際にセルフリノベを選ぶ人のほとんどが、その安さに魅力を感じているそうです。
対してデメリットは、とにかく「時間がかかる」こと。壁の塗装を例に挙げると、プロなら3日で済むものが、初めての人だと1週間を要します。これまでDIYなどの経験がない人がいきなり施工作業をすると考えると、プロの何倍も時間がかかってしまいます。
多くの場合、作業は仕事や家事などのライフワークの合間に行うことになります。本来なら半年で済む工期も、必然的に1年以上かかるため、完成までにかなりの時間を要することになります。
はじめてのセルフリノベは、なかなか完成しない!?
独学でセルフリノベを行う場合、何よりも難しいのが「完成させる」ことだそうです。はじめてセルフリノベに挑戦する人が、自力で設計図を書き起こすのは至難の業です。ほとんどが図面のないアバウトな状態でスタートを切ることになります。いざ始めてみると、材料の調達ミスがあったり、作業の順番を間違えたり…とさまざまなトラブルが続出。これらは、「最初の段階で完成が見えていない」からこそ起きてしまいます。
ゴールがどこにあるかわからないまま走り続けば、おのずとモチベーションは下がります。一つひとつの工程にかかる時間もわからないので、「いつ終わるのだろう」と途方にくれてしまい、断念してしまうのも無理はありません。頭に描く理想の「住まい像」だけではなく、それをかたちにするための正確で緻密な設計図が、完成には不可欠といえます。
プロは、「ゴール」と「スケジュール」を明確にする
▲ (引用元)YouTube 塗装屋さんの事務所工事!現場で見せてもらいました【津田工務店ちゃんねる# 136】
一方で、工務店にお願いする場合、最初の段階で具体的な「完成図」を作ってもらうことができます。ゴールまでのビジョンがはっきりしているので、そこに向かっていくための道筋、つまり作業の順序が明確になります。
解体・施工・仕上げなどの大きな流れから、それぞれに含まれる細かな作業までが「見える化」されれば、工程ごとにかかる作業時間も把握しやすくなります。
セルフリノベは、お得なわけではない
セルフリノベのメリットは「安さ」とお伝えしましたが、実は必ずしもお得とは言えないのが現実だそうです。
「すべてプロに依頼する場合」と「セルフリノベ」費用の差
ある中古物件のリノベーションで、工務店にすべてお願いした場合の費用が1,000万円とします。
同じ内容をセルフリノベで行う場合、単純計算すると500万円、つまり半分の費用で済むそうです。ところがいざスタートすると、本来かからないはずの出費がかさみ、結果として600~700万円に膨らむケースが多いようです。
その余計な出費の多くは「材料の調達ミス」や「余分な工具の購入」です。
・ネットの情報を頼りにホームセンターで木材を購入したものの、実際必要な種類や大きさと異なっていた
・とりあえず工具を一式買ってみたものの、始めてみたら出番のないものばかりだった
このような予期せぬ「無駄な出費」は、はじめての現場ではどうしても起きやすいそう。
特に予期せぬ「無駄な出費」が発生しやすい中古物件選び
外観や間取り、立地に申し分のない理想的な中古物件。ところがフタを開けてみると基礎の部分に問題があった…。こうした物件の選択ミスは、追加工事などによる大きな出費を招く原因にもなります。
不動産屋さんは間取りや築年数には明るいですが、基礎や土台など建物の構造についての専門家ではありません。「リノベーションしやすい物件かどうか」を見極めるためには、現場を担当する工務店などのプロと一緒にチェックするのがベターです。
建物の「基礎」と「屋根」はしっかり確認を!
「まずは建物の基礎部分をチェックすることが重要。昭和50年より前に昔に建てられたものは、現在の耐震基準に達しておらず、地震の揺れに耐えられないものが多いです。建物は、地面に建物本体を固定する「基礎」、基礎と建物本体をつなぐ「土台」によって支えられています。
土台は多少ダメになっていても補修がききますが、基礎が弱っているものは避けたほうがいいですね。もう一つおすすめしないのが瓦屋根の物件。地震が起きたとき、屋根の重さによって上から崩れてしまう可能性が高いので危険です。」
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安さの理由は、「自分の人件費」が含まれていないから
このような余計な出費がなければ、工務店に依頼した費用の半分程度で済むのかと思ってしまいますが、これは「家主さんの作業代=人件費がタダ」と考えた場合になります。そもそも、セルフリノベによる費用の安さは、家を建てる人自身が手を使うことによって得られたものです。完成までに多くの時間を必要とするため、本来の仕事をセーブして取り掛かる人も少なくありません。
セルフリノベーションはただシンプルに「安くなった」わけではないという点を、留意しておく必要があります。
最後に
セルフリノベーションは費用面に大きなメリットがあると考えがちですが、いろいろな側面からみると決して安いとは言い切れないのが現実のようです。リノベーションの経験が全くない人は、時間に余裕があり長期的に楽しみたいのか、それとも期間内に効率的に終わらせたいのか、考えてみる必要がありそうですね。
セルフリノベーション入門vol.2では、今回ご紹介したセルフリノベの課題をカバーしてくれる「プロによる支援サービス」についてご紹介します。
取材協力
株式会社 TSUDA CONSTRUCTION COMPANY
店舗住宅のデザイン・設計・施工のほか、家具什器などの製品企画や開発なども手掛ける。工務店ならではの知識と技術を生かし、セルフリノベーションを二人三脚でサポートするサービス「教えて!工務店」を展開している。事務所下にあるDIYスペース「TCCO CRAFT FACTORY」では、レンタル工具の貸出しやワークショップを開催。
筆者
sumica編集部
自然体で心地いい時間が過ごせるおうちにしたい、そんな想いを込めて、「こんなのあったらいいな」「これは便利!」と思う暮らしのアイデアをお届けします。





