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らしさのある家

公開日2026.01.22

「好きなもの」と暮らす。“旅”と“異国”を日常に感じる部屋

異国を感じる部屋

駅から徒歩数分。ごく普通のマンションの一室に、扉を開けた瞬間、異国の空気が流れ込んでくる…。今回ご紹介するのは、旅が好きな30代女性の住まい。「休日は日帰り観光や美術館めぐりを楽しみ、年に一度は海外へ」という彼女が目指したのは、家にいながら異国を旅をしているような感覚でした。

キーワードは「エクレクティック」。好きなものを軸に、異なる文化や要素を自分の感覚で編み込み、ひとつの空間として調和させるスタイルです。

ライター

小倉ちあき

旅の記憶を、日常の風景に落とし込むには?

教えていただいたのは

マンションリフォームマネージャ/インテリアコーディネーター
大西美智子

マンションリフォームマネージャー/インテリアコーディネーター 大西 美智子さん

「制約さえもデザインになる!」をモットーに、マンションリフォームを中心に空間づくりを行う。リフォーム実績は2500件以上、家具コーディネートは500件以上。近年は、暮らし手の“好き”を起点にしたエクレクティックな提案に力を入れている。

「エクレクティック」とは何か?

エクレクティック(eclectic)とは、「折衷主義」を意味する言葉です。モダン×ヴィンテージ、北欧×和風、ホテルライク×インダストリアルなど、一見相反する要素を、自分の感覚で選び取り、調和させるスタイルのことを指します。

エクレクティック・スタイル

エクレクティック・スタイルをつくるポイントは、前回の記事も参考になります。

「好きなもの」と暮らす。“アウトドア”の心地よさを感じる部屋

(事例紹介)「家に帰れば、旅が始まる」部屋作りのストーリー

部屋作りのご相談

一人旅

施主は30代女性・一人暮らし。仕事はきっちり、平日は忙しくされている方。休日は日帰り観光や美術館めぐりを楽しみ、旅先で感じた空気や風景を大切にしておられます。 新しくマンションを購入するタイミングで、

「生活感をなくしたい」「普段は片付ける時間がないからこそ、整った空間で過ごしたい」

というご要望がありました。ものは多くない暮らしだからこそ、小物や素材の質に気を配りたいという思いも。 最初のご希望「壁を緑色にしたい」という一言から、施主様と話を重ね、深い緑色に決定しました。



「エクレクティック」を取り入れた解決アイデア

大西さんがテーマに据えたのは、海外のホテルの記憶。施主がスリランカで感じた自然と一体化した空間、フランスの海沿いホテルの静かな時間。何度も訪れている、台湾の緑が濃い自然とどこか懐かしい雰囲気を、インテリアとして再構成していきます。

購入したマンションのリフォームは、リビングと寝室、トイレの壁紙の張り替えのみ。旅先で集めてきた小物や食器、寝室に敷かれたトルコカーペットやアートパネルを起点に、家具やインテリアアイテムをセレクトし、提案しました。 深みの異なるグリーンに、木の家具を添え、カーテンや照明まで含めてトーンを整えることで、大地が広がるような風景をイメージ。空間全体を“旅の背景”として整えていきました。

そのインテリアのポイントを部屋別に見ていきましょう。

真似したい! “異国”を感じるインテリアポイント9選

家にいながら、旅先で感じた空気や余韻を思い出せるように。「日常に溶け込む旅の気配」をつくるためのヒントを、部屋別に紹介します。

リビング

リビング
リビング

1、旅先で出会った色を重ねる

  • リビングの中心となる深緑の壁は、台湾やスリランカで出会った深い森の色、台湾の街歩きの中で出会った色の記憶からセレクト。ただ再現するのではなく、旅先で感じた湿度や街の空気を、レイヤーとして日常に持ち帰る、そんな考え方が、この空間の土台になっています。
    壁の色を起点に、カーテンやシェードも全体のトーンを揃えたグレートーン。異なる要素を重ねながらも、ひとつの風景としてまとまるように整えました。
オリエンタルなテレビボード

2.オリエンタルなテレビボードを主役に

  • 海外デザイナーによる天然木を使用したテレビボードを主役に。シート貼りではない本物の木が持つ存在感が、空間の軸になります。旅先のホテルで印象に残った家具のように、「毎日目にする場所に異国の記憶をひとつ置く」。オリエンタル要素は広げすぎず、一点に絞ることで、日常の風景としてなじませています。
ラウンジのようにくつろげる、ソファの居心地

3.ラウンジのようにくつろげる、ソファの居心地

  • 沈み込まない少し硬めの座り心地に、背もたれと肘がL字型のデザイン。全面に肘がある重たい印象を避けて、視線が抜ける設計にしています。旅先のラウンジで過ごす時間のように、腰を下ろした瞬間に気持ちが切り替わる、そんな居場所を日常のソファに重ねました。

4.整いすぎない輪郭が生む、ラグの余白

  • 不規則な形や丸みのある輪郭をもつラグは、意外にも空間に自然となじみます。真四角ではないことで、視覚的な緊張がほどけ、どこか旅先らしいゆるやかさが生まれます。計算されすぎないフォルムが、日常の中にささやかな違和感と余韻を残します。

    また、ソファや家具に重厚感がある分、床にはそれを受け止める厚みが必要。今回はウール100%のラグを選び、空間全体の重心を整えています。夏でも蒸れにくく、季節をまたいで使えるウール。天然の油分を含み、汚れを弾きやすいのでおすすめ!

5.シェードで、外の気配を取り込む

  • 視線は遮りながら、光や外の気配は感じられるシェードを採用。都市部のマンションであっても、完全に閉じないことで、外とのゆるやかなつながりを保ちます。ホテルの窓越しに街の気配を感じるような感覚を、日常の窓辺に置き換えています。

6.旅の記憶を飾る、アートと小物を各所に

  • 山や大地を思わせるポスター、旅先で手に入れた器やオブジェ。どこで買ったか、どんな会話があったのか…そうしたエピソードごと飾ることで、空間に物語が生まれます。目に入るたび、時間や場所の記憶がふっと立ち上がる。そんな“記憶のスイッチ”を、部屋のあちこちに仕込みましょう。

ダイニング

7.チェアとファブリックで、“ひとつの景色”に

  • チェアの張り地と同じ生地をクッションにも展開することで、空間全体にさりげない一体感が生まれます。椅子張りやオーダーカーテンをつくるタイミングで、クッションも一緒に仕立てるのがおすすめ。最低メーターなどの条件はありますが、生地代と縫製代だけで、部屋に心地よい連続性を持たせることができます。

    ものが多くない住まいだからこそ、こうした素材のつながりが、空間の完成度を静かに引き上げてくれます。

寝室

寝室

8.寝室は、もうひとつの“自然”にする

  • 寝室には、雲や風、川の流れを思わせる壁紙をセレクト。ラタン風の照明と、リネン100%のレースカーテンが光をやわらかく受け止め、リゾートのような穏やかさを生み出します。

    旅先で購入したというトルコのラグはベッドサイドへ。観光ではなく“滞在する旅”の記憶が、眠りのそばに静かに寄り添います。

トイレや玄関

旅の通過点に“余韻”を置く

9.旅の通過点に“余韻”を置く

  • トイレにはオリエンタルテイストの壁紙を用い、さりげなく異国情緒を添えました。空いた壁や棚の余白には、旅先で得た感覚から見つけたアートを一つ。 ほんの短い時間を過ごす場所だからこそ、ふと視線が止まる風景が、気持ちを遠くへ連れていってくれます。玄関にもアートを置けば、帰宅の瞬間から非日常が始まるでしょう。

「エクレクティック」のプロに聞く!スタイリングの極意

エクレクティックで大切なのは、ミックスするバランス。今回の住まいでは「異国情緒」を全体テーマに、施主さんが持つ「女性らしさ」と「力強さ」という相反する要素を、素材や色の配分で整えていきました。
細部(ディティール)が重要です。タッセルの素材感や家具の仕上げなど、一見すると小さな要素でも、積み重なることで部屋の空気は大きく変わります。家はシンプルな箱だからこそ、どんなディテールを足すかによって、表情がはっきりと現れるのです。

見逃せないのが、金属の色と質感。思い描く「異国」のイメージによって、金色が強い方がいいのか、赤みのあるブロンズなのか、モダンにしたければツヤあり、温かみを出したければツヤなしなど、一つの選択でさまざまに変わってきます。照明、取手、脚物、フレームなど、金属は意外なほど暮らしの中に散らばっているからこそ、意識して揃えることで、空間の世界観がぶれにくくなります。

部屋作りに「共通点」をひとつ決めて、統一感をつくる。そして、異なる要素をただ並べるのではなく、重さや温度、質感を丁寧に選び取ること。その積み重ねが、エクレクティックな空間に奥行きをもたらします。

「好き」の集積が、暮らしを旅に変える

手近・手ごろなものでとりあえず揃えるのではなく、「どんな空間で暮らしたいか」「どんな素材が好きか」を考えながら、丁寧に少しずつ選んでいく。

旅行先で手に入れたものには、その場所の空気や、交わした会話、そのときの感情がそっと宿っています。家に帰るたび、異国の記憶が静かに迎えてくれる。そんな暮らしもまた、エクレクティックのひとつのかたちです。

協力アドバイザー

マンションリフォームマネージャー/インテリアコーディネーター
大西美智子

「制約さえもデザインになる!」をモットーに、お客様と空間の魅力を最大限に引き出す空間作りを行なっています。実績は、リフォーム現場 2500 件以上、家具コーディネート 500件以上に達しています。最近は、エクレクティックなインテリアを積極的に提案中。
活動内容:個人様宅、商空間のインテリアコーディネート、テレビ番組出演、講師、webコラム執筆

マンションリフォームマネージャー/インテリアコーディネーター 大西美智子

ライター

ライター

小倉ちあき

企業内での広報部経験を経て、現在フリーランスのライター・インタビュアー。地域・文化・ものづくりの領域で主に活動し、今を捉えている。

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