公開日2025.02.12
木材の組み方で強度や仕上がりが変わる!箱物家具の組み立て方

オープンラックや壁掛けのボックスシェルフといった箱物家具は、DIY初心者にも挑戦しやすく、汎用性が高いため人気があります。「なんとなく作り方はわかるけど 」という方や、「これから挑戦してみようかな」と考えている方は必見!
壊れにくく、丈夫な家具を作るには、木材の構造や特徴を理解することが重要です。また、使う場所や用途によって重視すべきポイントも変わります。
今回は、知っているようで意外と知らない「箱物家具を組むキホンの考え方」をご紹介します。
箱物家具とは
足物家具と箱物家具

家具は大きく分けて「足物家具」と「箱物家具」の2種類に分類されます。
•足物家具:テーブルや椅子のように脚がついた家具
•箱物家具:天板、側板、底板で構成された箱状の形をした収納家具

例えば、天板・側板・底板で構成されたボックスシェルフや、上の図のように、棚板や背板がついた本棚やタンスなどが、箱物家具に該当します。
用途に応じてさまざまな形状がありますが、シンプルな箱の形状であれば比較的簡単に作ることができます。ただし、木材の構造や特徴を知っているかどうかで、家具の強度や耐久性が大きく変わることも。そこで今回は、箱物家具を組む際の基本的なポイントを詳しく解説します。
基本の組み方は3種類
解説のために、今回は「天板」「側板」「底板」のシンプルな構造を持つ箱を3種類のパターンを準備して説明していきます。
まず、箱物家具の組み方は「縦勝ち」「横勝ち」「縦横ミックス」の大きく3つに分類されます。

「縦勝ち」「横勝ち」の違いは、下の写真のように角の組み合わさっているところが、縦が長いか(緑の矢印)、横が長いか(青の矢印)にあります。

また、天板と底板で長さが異なる組み方を、分かりやすいよう本記事では「縦横ミックス」と表記して解説します。

▲ 縦横ミックス
そして、これらの組み方に正解はなく、用途や設置場所に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
組み方を決める4つのポイント
組み方は何を優先するかによって決めることができます。優先するポイントを以下の4つに分けて解説します。
- 1.「強度」で考える
- 2.「設置場所」で考える
- 3.「見た目」で考える
- 4.「作りやすさ」で考える
「強度」で考える
構造上最も強度が高いのは、「縦横ミックス」の組み方です。

「縦横ミックス」では、木材をさまざまな方向で固定するため、負荷が分散され、耐久性が向上します。ただし、間に仕切りや棚板を入れる場合は、棚板を入れる分強度は上がりますので、そこまで気にする必要はありません。
「設置場所と用途」で考える
設置場所と用途に応じて、家具にかかる負荷を考慮しましょう。ここではいくつか事例を挙げてご紹介します。

壁に掛けて使用し、重い物を収納する場合は、「縦勝ち」か「縦横ミックス」が適しています。理由は、「横勝ち」だと垂直方向に固定するため、重い物を入れると上から下に向かってかかる負荷に耐えきれず、底板が抜け落ちてしまう可能性があるからです。この場合は、床に対して並行に固定する組み方を選びましょう。

▲ 「横勝ち」はビスなどで固定する際、矢印の方向に固定するため壁に掛けた状態では重い物を載せるのには適さない。
天板に重い物を乗せる場合は、側板の上に天板が載っているため箱全体に力が加わる「横勝ち」か「縦横ミックス」が適しています。


▲ 「縦勝ち」は矢印の天板と側板の接着部分への強度は高いが、下への強度が低くなるため接着部分が弱いと重みに耐えきれず、天板が落下する可能性がある。
長期間床に直置きする場合は、「縦勝ち」か「縦横ミックス」がおすすめです。

理由は、木は時間の経過と共に伸縮したり反ってしまうため、「横勝ち」の組み方で底板が地面に長期間接していると、底板が沿ってグラグラと不安定になる可能性があるからです。
こういった場合は、「縦勝ち」か「縦横ミックス」に組み、さらに底板を少し床から離して、側板を足のようにすると安定します。

▲ 底板の下に空間を作り、側板を脚のようにするとぐらつきにくい
掃除機のヘッドが入る高さで取り付けておくと、掃除もしやすくなります。底板の下に巾木を取り付ける方法もあります。

底板の下に巾木を取り付ける方法もあります。
「仕上がり」で考える
家具を見る目線の高さによって、「木口」(木の断面)の見え方を考えると、美しい仕上がりになります。

箱物家具を上から見るのか、目線より高い場所に置くのか。家具をよく見る方向を考えて、そちら側になるべく木口を見せない組み方を選びましょう。

例えば写真のようなサイドテーブルの場合、天板が一枚板のように見えると美しく見えます。
この場合は「横勝ち」の組み方が適しています。
木材の端(切った面)を45度にカットしてつなぎ合わせる「留め」という方法があります。この方法を使うと、切った面が見えなくなり、木材が一枚板のように見えるので、見た目がとてもきれいに仕上がるのが特徴です。

ただし、この接合は木の端同士をつなぐため、接着部分が小さく、ほかの方法よりも強度が少し弱くなります。また、45度に木材を正確にカットするには技術も必要になります。組み方の応用編としておきましょう。
「作りやすさ」で考える
強度や見た目にこだわるほど、構造が複雑になり、作る工程も複雑になりがちです。
作りやすさを重視するなら、「縦勝ち」か「横勝ち」がおすすめです。

理由は、「縦勝ち」と「横勝ち」が天板底板と側板の2種類のサイズの木材でできるのに対して、「縦横ミックス」は天板と底板の長さが違うため 3 種類のサイズが必要になるためです。
サイズが違うと手間がかかる上、計算間違いもしやすくなります。
用途によって、強度をそこまで求めないのであれば、「縦勝ち」か「横勝ち」で挟み込むように組む方が手間が省けます。
最後に
設置場所や用途、デザインの好みによって組み方で優先すべきポイントは変わりますが、木材の構造や特徴による組み方の基本を理解することで、安全で長く使える家具が作れるようになります。また理解すれば、より見た目にこだわったモノづくりが楽しめます。これからDIYする際の参考にしてみてください。
協力アドバイザー
建築、内装設計デザイン
TO DO 藤田 剛
2008年より設計デザイン事務所主宰
住宅や店舗のデザイン・設計業務を主に、素材や質感、ストーリーを大切にしたデザイン業務を行う。空き家問題にも取り組み、淡路島に移住し築100年の古民家を自ら改装しながら地域交流拠点としての活用を目指す。
