公開日2025.05.08
漆喰はDIYで『憧れのリビング』を実現。予算を抑えたリノベーション事例

築32年の木造一戸建てを購入し、リノベーションをしたSさんご家族。このナチュラルで開放感たっぷりな住空間の主役はSさんがずっと憧れていた、素材感を大切にした長く愛せる家具で人気の家具店「TRUCK」のソファです。
さらにリビングのラフさが魅力の漆喰の壁や素朴な木材を使ったローボード、窓際にピッタリ収まった本棚など、これらはすべてDIY。ソファとの相性もバッチリで、空間のアクセントになっています。しかし、ココにたどり着くまでには様々な葛藤や悩みもあったというSさんご夫婦。家づくりの経由とともに、紹介していきましょう。
子どもの成長とともに、窮屈に感じた賃貸マンション暮らし

▲ リノベーション+DIYで理想的な住まいを手に入れたSさん家族
それまでは八尾市の賃貸マンションで暮らしていたSさんご家族。子どもたちが成長し、走り回る音が気になる、落書きは絶対ダメ、など様々なことに気を使いながら生活していました。一戸建てに暮らしたいというのは夫婦共通の希望でした。
当時、長女が3歳で次女が1歳。実は、保育園を転園させるのもためらい、長女が小学校に入学するタイミングで引っ越そうと考えていたそう。
保育士である奥様の姉に相談したところ、「転園するなら小学校に入学する前よりも、できるだけ早い方が子どもにとっていいタイミング」と教えてもらい、それなら今がいいかもしれない、と考えるように。建築関係のお仕事をされているご主人は仕事がら建売住宅、注文住宅など見ていますが、一番、自由にできるのがリノベーションだという思いがあったそう。
そのリノベーションの夢を叶えるべく、まずは中古物件探しを開始しました。
子どもたちのために、八尾市から川西市へ移住を決意
そんな時、あるコンセプトハウス(一戸建てをリノベーションしたモデルハウス)の存在を知り、見学に。そこには築54年の木造一戸建てが美しく生まれ変わった姿があり、ご夫婦ともに大絶賛。そのリノベーション会社にお願いするとは決めていなかったものの、相談だけはしてみようという軽い気持ちで参加してみました。
「予算をかけずに自分たちがやりたいことをするリノベーション」を希望していることなどを素直に相談し、その気持ちを応援してもらえました。中古物件探しも一緒にしてくれるということで、それからはリノベーション会社との二人三脚で中古物件探しを開始。
しかしご主人が八尾市からも遠く離れたくなかったので寝屋川市や交野市、枚方市などを探すも物件探しは難航。数か月たった時、リノベーション会社から「ものすごくいい物件がありました!川西市なんですけど…」という連絡が入ります。川西市は縁もゆかりもなく、ご夫婦とも「川西市!?」という状態。とりあえず物件を見学に行くと、これまでにはない、希望通りの物件でした。

▲ どっしりと安定感がある築32年の2階建て。角地で2台駐車可能で、求めていたベストな立地

▲ Before 広めのダイニング

▲ Before ダイニングとキッチンは独立型。
絶対条件だった広いリビングなど希望が叶えられるうえに、状態もいい。
当時、生まれも育ちも八尾市の奥様は通勤も生活も便利な八尾市を離れ、全く知らない土地で子育てをする勇気がなかったそう。その時の気持ちを振り返ると奥様は、
「めっちゃさみしかった。でも、家は一番良かった。この家がいい!と正直に思ったんです」。
川西市から通勤もそんなに大変ではなさそう、近くにスーパーもあるし、小学校も近い。何よりいい家だから、これを逃したら…と考え抜いて夫婦で「川西市に移住する」という決断にたどり着きました。
できるだけ予算をかけず、DIYで。やりたいことを叶えたい!
DIYで壁を塗ろう、というのはご主人の発案。
ご主人の理想としていた家は「TRUCKのソファが似合う家」。漆喰の壁やムクの床など自然で素朴な素材を使った空間が良く似合う、ということでコストカットやメンテナンス性を考えて、自分たちで漆喰を塗ろうと計画。

▲ 1階の壁・天井はすべてDIY。特に天井の塗装がずっと上を向いているので大変だったとか
いざやってみると、思っていた以上に大変だったそう。ご主人はDIYの経験がありましたが、奥様は初めて。しかも8月の夏真っ盛りで、もちろんクーラーなどありません。慣れない作業の上に暑さもあって、「なんで自分たちで壁を塗るって言ったんやろ?」とイライラさえしたとか。
ご両親の手も借り、なんとか壁や天井などの塗装ができました。奥様いわく、「あの時は本当に大変でしたけど、壁の塗り方を覚えましたし、子どもたちが壁に落書きしようがメンテできるからいいやーと思うようになりました。」とストレスがひとつ減ったようです。

▲ 塗装中の玄関
実は、リノベーションで壁を取り払う工事が始まったときにダイニングと和室の間に柱と筋交いが登場したそう。耐震強度のためには筋交いは残す方がいいとされていますが、LDKとしては邪魔になります。
奥様は、ご実家が築60年ほどと古く、地震のたびに大きく揺れて恐怖を感じていたそうで地震に対してもともと不安がありました。中古物件を選ぶ際も1階より2階が大きくせり出しているような家は「地震が来たら崩れる!」と拒否。
そんな地震に対して人一倍不安を感じている奥様の気持ちを和らげたのは、柱と筋交いを移設し、耐震性を担保させたまま開放感も得られるというリノベーション会社の提案でした。
憧れだった「TRUCK」のソファ。それに似合うリビング

▲ いつも子どもたちと愛犬が走り回っている大空間リビングが完成!
リノベーションでは、ダイニングキッチン+和室だった1階をすべてつなげ、天井も上げることで大空間リビングに。一番の希望だった、子どもたちが走り回れる広いリビングを実現することができました。
特にご主人は、広くて開放的なリビングが一番のお気に入り。リビングにはずっと憧れていたTRUCKのソファを置き、窓下のローボードやその横の本棚も雰囲気や素材感を合わせてDIY。
「雪の日に、子どもたちと犬が窓から外を見ている姿が本当に可愛くて、いいなーとしみじみ思いました」とご主人。日常の何気ない風景に心を動かされる日々を満喫しているご様子です。

▲ 思わず写真に収めた「ある雪の日」(撮影:ご主人)

▲ 柱には早くも賃貸ではできなかった落書きが。これからは家族の歴史として刻まれます。
LDK全体が見渡せるキッチン。家族みんなでケーキづくりも

▲ 天板も通路も広いステンレスのキッチン。サイドのタイルもお洒落!
新居に暮らして1年半ほど。一番気に入っているところを奥様に聞くと、「キッチンです!」と即答。オールステンレスのキッチンはデザインはもちろん、作業台が広く機能的でお料理もしやすいのだとか。そして、以前の家が壁付けだったこともあり、LDK全体が見渡せる目線もお気に入りだそう。
「子どもが手伝いたいと言っても、以前の家では狭くて危ないので断っていました。でも今はキッチンも通路も広くて余裕があります。なのでめっちゃ手伝ってもらっています(笑)」と奥様。
「先日は子どもから記念日でもなんでもない日に“日曜日はケーキをつくる“と言われて。私はケーキづくりが苦手なんですけど(笑)、家族みんなでスポンジからケーキをつくりました」と、ほのぼのとしたエピソードも教えてもらいました。

▲ 写真(左)みんなでつくったイチゴのケーキは最高!写真(右)玄関も見事に生まれ変わりました。
住まいが変われば、日々の暮らし方も変わる

▲ お花にお水をあげるのも子どもの日常。お花を置く飾り棚もDIY
「八尾市に住んでいた時は、子どもを連れて行くのはショッピングモールだったのですが、今は公園とか自然の中。子どもと話題も増えて、コミュニケーションが取りやすくなったかな」と奥様。
ご主人は「家族みんなで犬の散歩に行くんです。犬友達も増えました(笑)」とのこと。愛犬を迎えたのも、新居が完成してから。ずっと犬を飼いたかったという奥様の夢がまたひとつ叶いました。

▲ いつも窓から笑顔で迎えてくれるのも、帰りたくなる我が家の要因のひとつ
ご近所は年齢が上の世代が多く、子どもをよく可愛がってくれるとか。「会うたびにお菓子をくれる方や、手作りのジャムをくれる方など、みんな温かく迎えてくれました。子どもたちも散歩帰りにピンポンしてお話しにいったりするんです」と奥様。家族で行きつけのお花屋さんに行って、みんなで花を選び、そのお花を飾って楽しむなど、大好きな家での暮らしを大切にされているSさま家族。
悩みぬいた移住、そして大苦戦したDIYリノベーションでしたが、どこか懐かしいコミュニティと自分たちらしい自然な暮らしを手に入れました。
- 家族構成:夫婦+子ども2人+愛犬
- 築年数:32年
- 間取り:4DK+WIC→3LDK+2WIC+パントリー
- 設計・施工:美想空間
取材協力
株式会社 美想空間
中古物件購入からサポートしてくれるワンストップ型のリノベーション会社。一戸建てのリノベーションが得意で、住む人の安心・安全・快適をベースとした上で、あそび=日常生活の余白を楽しめる家づくりを提案。大阪港駅から徒歩2分にあるKLASI COLLEGEでは、リノベーションセミナーやワークショップなどのイベントを随時開催。おしゃれなキッチンなどのショールーム、カフェ、キッズルームもあり、リノベーションのワクワク感を体感することができます。

▲ 築70年の建物をリノベーションした
KLASI COLLEGE

▲ 受付では日替わりでスタッフが
お出迎えしてくれる
筆者

住宅ライター / プロインタビュアー
大内 夏実
株式会社リクルートで情報誌のイロハを学び、独立。不動産・住宅系ライターとして経験を積む。大手ハウスメーカーから小さな街の工務店までさまざまな建築会社の注文住宅施工例やモデルハウスなどを取材し、また実際に購入した方、家を建てた方のインタビューも多数実施。年間100軒ほどの取材に基づいた知識と経験から多くの建築会社の広告戦略なども手掛けている。