公開日2026.01.14
家族と住まいを助ける、介護保険を活用したリフォームの基礎知識
「将来、親と暮らしたい」。年齢を重ねていく親御さんと、介護を前提にした同居を考える人も多いでしょう。二世帯住宅へのリフォームや、近くに離れを作ることを検討している人もいるかもしれません。
今回は実際にご家族の介護が必要になった場合に備えて、介護保険の考え方や介護保険を使ったリフォームなど、将来の介護を想定した家づくりの考え方と事例をご紹介します。
介護の専門家に聞く、「介護リフォーム」の基礎知識
株式会社神戸レンタル
神戸支店長 寺田健太郎さん
お話をお聞きしたのは、株式会社神戸レンタル 神戸支店長の寺田健太郎さん。
阪神間を中心に、神戸から大阪まで兵庫県西宮市に本社を置く、株式会社神戸レンタル。福祉器具のレンタル・販売や、ご高齢の方が住みよい住宅に整えるための住宅改修、さらに介護保険の相談にも応じています。
介護保険を活用した「介護リフォーム」とは?
要介護、要支援認定を受けた方々が安全で自立した生活を送るために自宅をリフォームするとき、介護保険を申請すればリフォーム費用の一部が支給されます。それが介護保険を活用した介護リフォームです。
対象者|要支援1から要介護5の認定を受けた方
- なおかつ、在宅で暮らす被保険者が対象です。
※入院中・施設入所中の住宅は原則対象外
支給限度基準額|20万円
- 要介護状態区分に関係なく、住宅改修費として利用できる上限額が20万円です。
ただし通常は1割の自己負担があるため、実際の支給額は18万円までです(一定以上所得者は2割、または3割負担)。
また上記以外に、市町村ごとの助成事業でプラスアルファの支給がされる場合があります。自治体によって異なるため、確認しておきましょう。
なお、支給限度基準額の20万円は分割利用ができます。例えば工事費用が5万円で済んだ場合、残りはまた必要になったときに使うことができます。
介護保険の申請方法|地域包括支援センター
- どの自治体にも「地域包括支援センター」があるので、そこで介護保険の申請を行います。その後、調査員が申請者の心身の状況を詳しく調べる「認定調査」を行います。認定結果が出るのは、約1カ月後です。申請は介護者本人でも、ご家族でもかまいません。
支給方法|「償還払い」と「受領委任払い」
- 支給されると言っても、そのまま全額受け取れるわけではありません。支給方法には「償還払い」と「受領委任払い」の2つの方法があります。
〇償還払い
- 申請者が工事費全額を支払った後、保険給付額が申請者に支給される方法。退院・退所に向けて住宅改修が必要な場合、自治体の運用によっては、償還払いとなるケースがあります。
〇受領委任払い
- 申請者は自己負担額のみ支払い、保険給付額は施工業者に振り込まれる方法。
その他|使った額が、一度リセットされる制度
- 介護保険を使った住宅改修などでは、原則として上限20万円まで利用できます。ただし、一定の条件を満たすと、この上限額がリセットされ、再び20万円まで使える場合があります。例えば、最初の介護認定が「要介護2」から「要介護5」へ進行するなど、介護の必要度が大きく重くなった場合などです。
さらに、転居によって住民票の住所が変わった場合も、再度20万円まで利用できるケースがあります。なお、これらの判断基準や運用は市町村ごとに異なるため、実際に利用できるかどうかについては、事前に市区町村の窓口や担当のケアマネジャーへ確認することが大切です。
介護用品はレンタルできる
実はレンタル可能な介護用品は、レンタルで補う方が大半です。短い期間で要介護状態が変わる方も多く、その時々の状態に応じた物を用意できるからです。また介護申請前に即設置できるのもメリットです。
特に、突っ張り棒タイプの手すりをレンタルする場合、設置場所や高さなどの調整が簡単にできて便利です。ただし床から天井まで突っ張り棒を設置するため、ここもあそこもとつけ過ぎると圧迫感が生まれます。空間も考慮して、必要な個所に設置しましょう。
購入して工事を行う場合、必ず事前に申請が必要です。また許可が下りるまで時間もかかります。そのため、すぐに必要な場合はとりあえずレンタルしておき、許可が下りた後に工事にかかることが多いです。
レンタル費用
レンタルは月契約です。例えば1本3千円の突っ張り棒タイプの手すりの場合、1割負担の1カ月300円でレンタル可能です。
和風改造用便器や、ベッドの脇にあると便利なポータブルトイレなど、直接肌に触れる物は購入となります。お風呂で使う椅子も同じ理由で購入です。
骨折などで全快までの期間が見通せる場合、介護用品はレンタルで済ませることが多いでしょう。しかし介護の場合は、期間が見通せません。購入する物とレンタルする物、また工事の必要があるのかなど、専門家と相談しながら上手に備えることが大切です。
工事費用
長さ60cmの木製手すりを工事で付ける場合、1本約1万円です。その1割負担ですから、1千円で付けることができます。また和式から洋式へ入れ替えるトイレ工事の場合は、介護保険対象。クッションフロアにして手すりまで付け、工事費用は50万円弱ほどです。
トイレ工事の場合、和式から洋式への変更は介護リフォームとして認められますが、洋式から洋式は通常のリフォームとみなされ、介護保険は適用されないので気をつけましょう。
介護保険ではどんなリフォームができる?工事の事例
介護リフォームを行うときは、事前にケアマネージャーさんや、作業療法士などのプロ目線での調査を行い、家族とともに退院後の快適な家づくりのアドバイスを行います。
手すり
介護保険が適用されるうち、もっとも多い介護リフォームは手すり工事です。手すりがあれば転倒予防になり、移動や立ち座りなどの動作もスムーズになります。廊下やトイレ、浴室、玄関、さらに玄関から道路までの通路など、介護される方の体の状態に応じて必要な個所に設置します。
購入もできますが、介護保険を使わず、自費でのレンタルとして利用できます。また突っ張り棒を利用した手すりなら、高さや位置などその人に応じたカスタマイズが簡単です。
段差の解消
手すり同様に多いのが、段差の解消です。居間や廊下、トイレや浴室、玄関といった部屋の間の床段差を無くしておくと、スムーズな移動や転倒防止になります。
もし玄関が高ければ台を置いて、ステップを増やす対策もいいでしょう。意外に怖いのが1cm未満の小さな段差。特に足が上がらなくなると、小さな段差ほどつまづくものです。
ドアノブ
リウマチなど握力が弱った方のために、取っ手を握り玉からレバーハンドルに変えます。また、特に歩行器や車椅子を使う場合は、引き戸に変えると開閉がスムーズです。
床
畳から板製素材やビニール系床材に、また浴室も滑りにくい床材に張り替えます。歩行器などの車輪に耐えられ、滑りにくくなります。
トイレ
介護が必要な方は、和式便器は使えません。そのため和式便器から洋式便器へつけ替える工事が必要です。
※いずれの工事も、「本人の身体状況に必要である」と認められた場合に限り、介護保険の対象となります。
今からできる、介護の準備「プチリフォーム術」
今すぐ大がかりなリフォームはいらないけれど、介護が必要になる前の準備として、安全な家づくりのためのリフォームのポイントを5つをご紹介します。
必要と思われるところに手すりを付ければ、転倒防止にも役立ちます。
また、手すりのレンタルは介護申請をしなくても利用できます。工事不要な突っ張り棒を利用した手すりなら、取り付ける場所や体に合った位置や、高さ調整も簡単です。
段差の高さに合わせて置くだけのスロープや踏み台もあり、レンタルも可能です。
階段の面に両面テープで貼るタイプのカーペットや、角に貼る滑り止めテープがあります。ホームセンターなどで購入可能です。靴下を履いていても滑りにくく、転倒防止になります。
滑って転倒しやすい浴室内。特に浴槽に入るときはふらつきやすく、またお湯に浸かった後も背中が滑って溺れる危険があります。そのための滑り止めシートがあると安心です。また浴槽が深くてまたぎにくい場合は、浴槽内に踏み台代わりの簡易な椅子を入れておくと転ぶリスクが軽減されます。
足腰が弱ってくると、床に伸びたコードにつまずいて転倒してしまう危険が高まります。延長コードや電源ケーブルは、普段は気にならなくても、思わぬ大事故につながる原因になりがちです。
コード類は床を横切らせず、壁面に沿わせたり、モールやコードカバーで固定したりするのがおすすめ。日常の動線を妨げない、小さな見直しが安心につながります。
まとめ
介護はある日突然やってきます。一つでも不安を取り除いておくためにも、今からできる対策を講じておくことが、家族にとっても大きな安心につながります。また、体が元気なうちに滑り止めや動線の工夫をしておくことで、住まいの中で起こりがちな思わぬ事故を防ぐこともできます。
次回では、「どんな手すりが有効?」「同居と住み替え、どう考える?」など、実際によく寄せられる悩みをQ&A形式でご紹介していきます。自宅のプチリフォームから始められるヒントを、一緒に探してみませんか。
取材協力
株式会社神戸レンタル
兵庫県西宮市に本社を構え、阪神間(神戸〜大阪)を中心に福祉用具のレンタル・販売、介護保険を活用した住宅改修を手がける企業。介護保険の申請や相談にも対応し、利用者と家族が安心して在宅生活を続けられる環境づくりを、専門知識と現場経験で支えている。
ライター
ライター
國松 珠実
愛媛県生まれ。兵庫県在住。航空会社のグループ会社社員として主にコールセンター業務に従事したのち、大学院研究室事務を経てライター活動を開始。インタビュー取材を軸に、ビジネスや旅行、町ネタ、音楽に関することなど幅広いテーマでWEBメディアを中心に執筆している。



