公開日2023.05.12
新築でこだわるなら断熱性!冷暖房効率が高い家の5つのメリットとポイント
年間約100軒取材する住宅ライターが教える「家づくりのコツ」シリーズ
将来までずっと快適に暮らせる家が建てたいなら、「断熱性」に注目!
新しい家を建てる時、間取りやデザインの事はこだわる方が多いですが、最近は断熱性を気にする方も増えてきた傾向にあります。社会全体が脱炭素社会に向けて取り組んでいるこの頃、新築の家を建てる際の断熱基準も高まり、2025年にはかなり高いレベルの基準が義務化されます。それほど重要な「断熱性」。10年先、20年先も健康的で、経済的で、快適に暮らしたいなら断熱性に注目してみましょう。
断熱性とは?
住まいにおける断熱性とは、断熱材によって外気温を室内に伝えないように、そして室内の熱を逃がさないようにする性能です。例えば外の気温が0度の時、暖房をしていない状態で室内の気温が3度の家と15度の家があるとします。3度の家は断熱性が低く、外気温に左右されてしまっているので暖房効率が悪くなかなか部屋が温まりません。さらに光熱費も高くつきます。
15度の家は断熱性が高く、外気温の影響を受けづらいので暖房効果が高く、すぐに温まり室温をキープします。もちろん、光熱費も3度の家に比べて安くつきます。つまり、断熱性は毎日の暮らしに大きく関わる、重要な性能なのです。
2025年に断熱等級4以上が義務化
日本の住宅の断熱性は他の先進国に比べてとても低いと言われています。ひと昔前の日本の家、築年数が30年を超える実家に帰ると寒くて家の中でも息が白い、なんて経験をした事がある方も少なくないでしょう。けれど、風を通すことで湿気を逃し、夏は涼しく暮らせていました。
1980年から住宅の省エネルギー基準(断熱階級1・2)が制定され、1992年には等級3、1999年には次世代省エネルギー基準の断熱等級4まで強化されましたが、建築コストが高くなる上に義務ではないため、それほど高いレベルの断熱性の家は普及していません。しかし、地球温暖化の影響もあり猛暑が続き、室内でも熱中症になる現状。エネルギーの高騰や脱炭素社会へ向けて省エネに対する意識も高まり、国も断熱性の高い家の普及に力を入れています。2022年に断熱等級5・6・7まで基準が制定され、2025年には断熱等級4以上が義務化予定。これを下回る家は建築できなくなります。
ちなみに、断熱等級4の家は外気温が0度の夜に、室内温度20度の部屋でエアコンを消して就寝し、翌朝の室内温度は8度になるぐらいの性能です。
断熱性が高い家はどんなメリットがあるの?
エネルギー高騰で光熱費が驚くほど高くなった…と嘆いている方も多いハズ。断熱性の高い家は外気温に左右されにくく、室内の温度を保ちます。つまり、エアコンを稼働させると、すぐに室温が適温になり、その温度を長くキープします。結果として消費電力が少なくなり、光熱費がダウンするというメリットがあります。
定められた基準をクリアする省エネ住宅の場合、国や地域からの補助金がもらえる場合があります。例えばZEHレベルの住宅(断熱等級5レベル)を新築する場合、子どもエコ住まい支援事業の補助金100万円が受けられる場合があります(※諸条件・期限があります)。
また、長期優良住宅や低炭素住宅に認定された住宅は住宅ローン控除の控除額が引き上げられる場合があります(※諸条件・期限があります)。
そのほか、お住まいの地域からの補助金なども受けられる場合がありますので、経済的なメリットが大きいです。(※各種補助金等を受けるためには募集期間内に申請が必要です。事前に建築会社と相談して検討してください。)
少ない電力で快適に暮らせる断熱性の高い家は、省エネ効果が高く地球環境にやさしい家。断熱性を高めるだけでなく、太陽光発電などエネルギーを創出する設備も備えれば、電力を自給自足する事も可能になるので、より地球環境に負荷をかけない家になります。
断熱不足の家は暖房や冷房をしている部屋のみ快適温度で、それ以外の場所は外気温の影響を受けやすくなります。また、家中を適温にするには光熱費が心配になります。家の中で温度差があると冬はヒートショックや血圧上昇の危険性がありますし、夏の暑さをガマンすると熱中症の危険性も生じます。断熱性の高い家は家の中の温度差が少なくなり、脱衣室や洗面室もそれほど寒くならないのでリスクを軽減し、健康的に暮らせる家になります。
窓まわりに水滴がたまる結露。結露は目に見える場所だけでなく、躯体や構造内部にもカビを発生させ、躯体を腐敗させる原因にもつながります。断熱性の高い家は結露を防ぐ効果もありますので、家そのものの劣化を防ぎ、家の長寿命化が期待できます。
断熱性を高めるポイント
家の熱の出入りが一番大きいのは開口部です。現在のお住まいの窓やサッシを触ってみてください。暑い日は熱く感じ、寒い日は冷たく感じるなら、それはもう断熱不足。そこから熱が吸収・放出されています。「単板ガラス+アルミサッシ」は断熱性がかなり低いと考えてください。単板ガラスを複層ガラスにし、アルミサッシを樹脂サッシにすると断熱性は大幅に高くなります。
これから家を建てる場合、断熱材を入れない、という選択肢はありませんが、断熱材の種類は希望により変えられます。断熱材の種類はたくさんありますが、筆者おすすめの3つの断熱材とメリット・デメリットについて紹介しましょう。
「グラスウール」
一般的に広く使用されているのが「グラスウール」。ガラスが原料で、綿状のものです。安価で防虫効果もあるというメリットがありますが、施工方法によっては隙間が生じる可能性も低くはありません。また、水に弱く湿気などで濡れてしまうと断熱性能が失われてしまいます。実際に年数を経た構造内部のグラスウールを取材したことがありますが、黒くカビが生えていたり、はがれている箇所があったり、劣化という点では不安要素があります。
「セルロースファイバー」
古紙などリサイクル原料で造られた環境にやさしい断熱材です。防虫効果、保温効果、防音効果など機能性に優れていますが、施工方法が特殊でコストが高くなるのがデメリットです。筆者はセルロースファイバーを使用した家を取材した経験が何度もありますが、厳しい冬でも家の中で温度差をほとんど感じないことに驚きました。
「発泡吹付けウレタンフォーム」
軽くて柔らかく、耐久性もある断熱材・ウレタンフォームを現場で泡のように発泡させ、隙間なく吹き付ける施工方法で、高い気密性・断熱性を得ることができます。コストは高いですが、耐久性に優れているので将来まで高い性能を維持できます。施工中を取材したことがありますが、吹き付けた断熱材がぼわっと膨らみ、隅々までビッシリ、1センチの隙間もなく充填されていました。
他にも断熱材は様々な種類がありますが、断熱材は簡単に変える事ができない部分です。コストを重視して安価なものを選ぶより、性能を重視した方が、その後の暮らしの快適性は高まります。また、建築する会社によって使ってほしい断熱材の施工が得意・不得意がありますので、事前に確認しておくことが大切です。
新築入居後「しまった…!」にならないために
はじめての家づくりはわからないことだらけ。その中でもわからないままつい後回しにして入居後「しまった…!」になりがちなのが、すぐにネットが使えない、テレビが見られないなどの通信環境の計画漏れです。このような事態を避けるためには「建築前からの計画」が大切です。
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最後に
断熱性は家づくりの新たなキーワードになりつつあります。断熱性の高い家は冷暖房効率が良く、光熱費を抑えられることも大きな魅力ですが、夏は涼しく、冬は暖かく、1年を通して快適に暮らせることが一番の魅力です。せっかく新しい家を建てるなら、将来まで心地よさが続くように断熱性にもこだわってみましょう。
筆者
住宅ライター/プロインタビュアー 大内 夏実
株式会社リクルートで情報誌のイロハを学び、独立。不動産・住宅系ライターとして経験を積む。大手ハウスメーカーから小さな街の工務店までさまざまな建築会社の注文住宅施工例やモデルハウスなどを取材し、また実際に購入した方、家を建てた方のインタビューも多数実施。年間100軒ほどの取材に基づいた知識と経験から多くの建築会社の広告戦略なども手掛けている。