公開日2022.06.15
【建築家と作る家】「オープンな空間にしたい」を追求した、玄関がない家
新築にするか?リノベーション物件にするか? 新居を考える時に、迷う選択肢ですよね。今回ご紹介する「ヤナハウス」こと、柳 裕司さん・優子さん・長男・長女4人家族のご自宅は、新築物件。空き家リノベーションを考えていたお二人ですが、信頼できる建築家との出会いがきっかけで、新築に振り切ったのだとか。その特徴的な間取りと家づくりの背景について伺います。
想像を超える家を作って欲しかった
大阪府豊中市にある一軒家。閑静な住宅街を抜けると見えてくる青い壁の家は、玄関がなくそのまま窓から家の中に入れるという、個性的な間取りです。外観だけでなく内装にも、アンティーク家具やDIYが好きだという柳 裕司さん(46歳)と優子さん(46歳)のセンスが溢れています。
「最初は、リノベーションしか考えていませんでした。古いものが好きなので、古民家を購入して自分たちの手でいじりながら作っていこうかなと。元々この付近に住んでいたので土地勘もありました。家探しがてら町を歩いていたら、空き地になっていたこの土地を見つけました。良い場所だなと。この場所を見つけたことで、『家を新しく建てるのもありかもしれない』と、新築という選択肢が浮かびましたね」と柳 裕司さん。
新築といえども、建売住宅は最初から完璧すぎてつまらない。リビングの間仕切りなどもなくていい、必要なものを後から付け足しながら作っていけるような家にしたいと考えていたそう。「日本家屋には、門や玄関までの空間、玄関の小上がりや下駄箱が必ずありますよね。それって本当にいる?と。逆にその空間を別の形で生かせたらいいのになと思っていました」
そんな時、元々インテリア系の仕事をされていた裕司さんは、知人から建築家・矢部達也さんを紹介されたといいます。
「矢部さんの自宅にもお邪魔させていただきました。話をするなかで、面白い視点を持っていると感じて、この人に作ってもらいたいと直感的に思いました。僕たち夫婦はものづくりが好きなので、自分でイメージできるものは、ある程度自分たちの手で作ってしまいます。だからこそ、自分たちの想像できないものを作って欲しかった。細かい希望はほぼ無しで、彼にまるっとお願いしましたね。いただいたプランをみて、『おお、すごいのきたな』とは思いましたが(笑)、ほぼそのまま施工を進めました」
仕切りがなく全てオープン!開放感がたまらない
1階と外は人が集まるオープンスペース、2階は家族の生活スペースと、空間は大きく2つに分かれています。家に壁という仕切りが全くないため、「家族がどこにいても分かります」と裕司さん。
インテリアは、初期は“昭和風”、今は“海外風”。好きな家具を購入したり、机や棚をDIYしたり、インテリアグッズを変えたりしながら、子どもの成長や暮らしの変化と共に、居住空間は常に変化し続けていると話します。
1階部分でこだわったのは床材で、裕司さんの好きなオーク材をセレクト。また、天井が高く開放感があるので、ものが多く見えすぎないメリットもあります。「床暖房は必須ですね。天井が高い分、冷えやすいです。床暖房があるので、空間全体を暖めてくれて助かっています」
建築家さんと作る家づくりは、面白い
家という“箱”を作ってもらい、その空間を自分たちでアレンジしたり、置きたいものを揃えたりしている感覚だとお二人は話します。当時を振り返っても、新築を建築家に頼むことへのハードルは、そこまで高くなかったそう。
「風の流れや光の入り方なども計算されているのはさすが。昼間は太陽光だけで充分明るく、小窓を開けるだけで風が通って涼しいです。鉄骨むき出しの階段も、柵がないロフトも、他ではなかなかできないチャレンジングな仕様です。素材を選定したり、家にアンティークのアイテムを付けたり、となるとハウスメーカーでは対応しにくいのが現状。
その分、建築家さんの場合だと相談しやすい。自分たちでは出てこないアイデアとの融合も面白いと思える方には、ぜひおすすめしたいですね」
後記
人が集まるオープンな家。芸術大学出身で、ものづくりが大好きだというご夫婦。人と場作りが好きなお二人は、過去には週1度はホームパーティをしていたこともあるそうです。その流れで、2021年には自宅から徒歩約5分の場所にカフェをオープンすることになり、今は、お店作りに燃えていらっしゃいます。
想像を超える家づくりにするために、“建築家のアイデアを取り入れてみよう”、そんな視点で考えられると、家づくりの幅がより広がりそうですね。