公開日2022.09.14
母屋はガレージハウスに改修。代々受け継いだ古民家をセルフリノベーション
どんな場所でも、自分たちらしい住まいは作れます。移住ではなく、生まれ育った町に住み続けている方も多いでしょう。曾祖父母が暮らしていた家を譲り受けて、セルフリノベーションした森さん5人家族。クラシックカーやバイクの修理によって培われた修理溶接加工技術が生かされ、和風の古民家が西洋的な住まいに生まれ変わりました。
良質な素材を使うことが、自分で作る醍醐味
子どもが3人、犬が1匹、山羊が3匹。自然豊かな京都府亀岡市で生まれ育った、森 進太郎さん・二三子さん夫婦は、2008年の結婚を機に先祖代々住み継がれた家のリノベーションをスタートします。
進太郎さんは同じ亀岡市内で、自然の地形を生かしたバイク競技「トライアル」のコースの運営事業を2代目として営んでいる方。もともとバイクの販売からスタートした事業ですが、好きが高じて、クラシックカーやバイクの販売、修理を請け負うだけでなく、海外から輸入したガレージの販売も行われています。
▲ 周囲は山と田んぼに囲まれた環境。
▲ キッチンやダイニングなど生活スペースがある離れ。玄関前の木は、先代の頃から生えている。
▲ (左)森 二三子さん、(右)森 進太郎さん
「父親がガレージを組み立てる仕事をやっているのを幼い頃から見ていましたし、プロではないですが、家づくりの心得は持ち合わせていたかも知れません。車を組み立てることと家をつくることは似ています。クラシックカーはパーツを組み合わせて、エンジンを組んでやっと走り出すのですが、その過程と家づくりは同じだと感じています」と笑顔で話す進太郎さん。家の内装だけでなく、家中の家具もほぼ全てオリジナル! 車の修理で培ったアイアンの溶接加工技術が各所に生かされています。
▲ キッチンとダイニングの様子。天井を抜いて梁を出したことで、開放感がある空間に。
▲ リビングとダイニングを仕切るアーチ型の壁。
▲ 食器棚もオリジナル。右側にある窓は元々全面窓だったが、下部は結露がひどかったため、上部だけ残して下部は閉じた。
▲ リビングルーム。ソファも骨格部分は作り、好きな布をプロに張ってもらって完成した。
▲ リビングの脇にある暖炉も手作り!「ポイントは薪を出し入れする扉部分の刻印。すべてDIYだけで完成させずに一部に質の良いものをあしらうことで高級感が出ます」
敷地内にある母屋・離れ・小屋などのうち、家族の生活スペースとして離れをまず活用しました。「間取りを考える時には、大枠の配置は妻の意見を反映。あとのインテリア部分は、自分の好みで組み立てていきました。地域的に寒いエリアなこともあり、複層ガラスや断熱材(グラスール)も壁に埋め込んだりと、快適性を追求しています。長く過ごす場所なので、冷暖房の効き具合も加味して、窓の位置も意識しています」
▲ リビングから出入りできるサンルーム。
▲ 天井からぶら下がるぶどう。秋にはたくさん実を付ける。「子どもの友達が遊びに来たときに喜ばれます」と二三子さん。
目を引くのは玄関を入ってリビングダイニングの手前にあるサンルーム。屋根からぶどうがなっていて、そのまま手で取って食べることができる仕様になっています。「もともとウッドデッキだったのですが、木が腐っていたため床にタイルを貼りました」。室内でも屋外でもない場所は使い勝手がよく、犬の毛を刈ったり、土いじりをしたり、フリーに活用できる部屋となっています。小さな蛇口もあるので水やりも簡単。太陽の光が差し込むおかげで、冬は暖かく0度以下にはならず、植物にとっても過ごしやすい環境です。
▲ 手間が掛かったというこだわりの腰板。現在も作業継続中なのだとか。
手が掛かったという、壁全体に使われている腰板。「壁紙があまり好きではないので、壁に凹凸があって、ざらつき感のある木材を使いたかったんです」。杉板を焼くと、表面全体が炭化して、浅い部分と深い部分がはっきり出ます。“浮造り”というのですが、これをヤスリで磨くことで木目が浮き上がってきます。その上に白ペンキを塗り、またヤスリで磨く…という作業を繰り返したそう。「大変な作業でしたが、やり始めたらやめられませんので(笑)。夫婦で、真っ黒になりながら作業しました」
▲ 床材には祖父が過去に購入してデッドストックになっていた木材を活用。
▲ キッチン下部の扉もエイジングを掛けた木材を使用。木とアイアンがバランス良く組み合わされている。
▲ 各所に見られる亀甲編みのアイアン扉。インテリアのアクセントに。
リビングダイニングなど、人が集まる場所や手や足が直接触れることの多い部分には、傷がつきにくい広葉樹のオーク材を多く用いています。家具のほとんどが、進太郎さんのお手製。良質な素材や細部へのこだわりによって、どの家具も使えば使うほど味が出る風合いです。
「いい木材を選べるのは、自分で家を作る大きなメリット。DIYだから安くすむのではなく、DIYだからこそ良い素材を使うという考え方です。例えば、30万円の高級家具のクオリティのものを自分で作るから10万円でできる、という感覚です」。長く使えるものを手作りする、大切な考え方ですね。
▲ もともとは夫婦の寝室だった場所は、中学生の長女の部屋に。
▲ 長女が生まれた時に作った子ども用の椅子。3人の子ども全員の役に立ち、今は孫に使われる出番を待っている。
作れば作るほど技術が上がる、年々楽しくなってくる
プロじゃないからこそ自由にできる、それがセルフリノベーションのいいところだと、進太郎さんは話します。「私はプロの家具職人でも大工でもありません。だからこそ、スタンダードじゃないやり方や違うアプローチで、自由な発想で作っていける部分に面白さがあります。型にはめられないからいいんです。工務店などに頼むと、失敗した部分には文句を言いがちですが、自分でやると納得できる。自分で最後までやると作業量が分かるので、職人の気持ちも分かるようになってきますしね。家づくりも趣味のひとつ。自分でやる作業は、お金では換算できない喜びがあります」
▲ 二三子さんの日課であるパン作り。酵母から作るパンは家族だけでなく、知人や近所の方からも大好評。
▲ 何週間も寝かせたレーズンの酵母。蓋を開けた瞬間にビールのようにシュワシュワと発泡する。
▲ 飼っている山羊は3匹。敷地内にある畑の雑草を食べてくれる。
▲ 山羊小屋ももちろんDIYで。中は二階建てになっていて、贅沢な作り。
セルフリノベーションに要した時間は、約5カ月。最も苦労した部分は、解体だそうです。畳をあげたり、土壁を剥がしたり、天井を抜いたりする度にどんどん積み上がっていくゴミの量。大量のゴミを片付けるために軽トラックを3〜4回も往復する作業が、一番辛かったと当時を振り返ります。自らの経験を踏まえて、リノベーションを検討している方に向けて3つのアドバイスをくださいました。
「1つは、物件を選ぶ際の注意点としてボロボロ過ぎるものは選ばないこと。具体的には、床が抜けている、柱が傾いている、雨漏りがひどいなどです。車の修理をするので分かるのですが、ベースが整っていないと改修の時間に倍以上掛かってしまいます。
2つ目は、ゴミを抱えた物件は避けた方がいいです。よくありがちなのが、古民家の納屋に元住人の生活用品が詰まった状態。ボロボロ物件の場合も同様ですが、ゴミの撤去にも予想以上の作業時間が掛かってしまいます。購入時は安くても、結局高くついてしまう可能性もありますよ。
3つ目は、作業道具にはプロ用セットを整えること。道具が調っていると、ちょっとした作業も簡単ですし、作業効率が良いと意欲も沸きます。少々高くても初期投資だと思って準備しましょう」
家族や自分のライフスタイルに合わせて、変わっていく家
進太郎さんがいま力を入れているのが、これまで手つかずだった「母屋」。生活スペースとは別に、のんびりと自分のことができる場所にしようと画策しているのだそう。「ガレージの販売が本業なので、やっぱり自宅にもガレージがあるべきかなと(笑)。ガレージハウス的な別邸にしようかと思っています。夫婦の寝室とその隣に、作業部屋も作りました。YouTubeで動画配信もしているので編集作業なども今はここでやっています。子どもが側に居ると落ち着いて作業しにくかったので、ここは静かで良い環境。夜も作業しやすくなりました」
▲ 現在改修中の母屋。
▲ 「朝出勤前と夜帰宅後にDIY作業をしています。もう生活の一部になっていますね」。
▲ クラシックカーが置かれたガレージ。
▲ 進太郎さんのマイカー、Simca Rallye2(シムカラリー)
▲ DIY作業は、ガレージで行えるよう設備が整っている。
▲ 母屋に作られた夫婦の寝室。天井のエメラルドグリーンがくつろげる空間を演出。
▲ 寝室の横は、PC作業場。書斎のように使うこともあるのだとか。
家族が増える度に部屋を増築したり、家具のデザインを変えたり、住み始めて14年経った今も家は変わり続けています。「10年ほど家づくりを続けていると、技術とセンスも向上してくることを自分たちでも感じます。子どもの成長に合わせて、収納スペースを増やしたり、家具を作り替えたりと家の中の雰囲気も変化していきます。だんだんよくなってきている感じ(笑)。
年齢に応じて好みも変わっていくので、色を塗り替えたり、設えを変えたりとインテリアごとに変えていける楽しみがあります。私にとって家づくりは一生できる趣味。60歳を過ぎても楽しめる趣味があるっていいですね」
▲ 家族の人気者。ミニチュアシュナウザーのルーク。
後記
自然体で笑顔の多い森さんご夫婦を見ていると、家族の日々の暮らしぶりが見えるようでした。セルフリノベーション作業を始めるための、具体的な物件探しのコツも参考になりました。面倒くさがらずに最初の一歩を踏み出してみること、そして継続することが大切だと進太郎さん。まずは興味の赴くまま、一歩踏み出してみるのもよいかもしれません。
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