公開日2023.11.22
大阪と和歌山。波の音を聞きながら、オンとオフを楽しむ自由な2拠点生活
窓を開けると通りを挟んだ先に見える青い海。打ちっぱなしの天井と壁を生かした、仕切りのない開放感のある部屋が特徴的な一軒家です。矢部達也さん(建築家)と矢部仁見さん(大学教授)ご夫妻の和歌山にあるセカンドハウスにお邪魔しました。
窓の多い開放的な空間、好きなアイランドで過ごす
和歌山県の西端に位置する日高町。クエ漁が盛んなこの町は海が近く、サーフィン好きの人たちも波に乗りに訪れます。そんな町にセカンドハウスを持たれている矢部さんご夫婦。数年前から、平日は大阪・野田のご自宅、週末は和歌山のセカンドハウスという2拠点生活をされていらっしゃいます。
▲ ご自宅側の海辺。
▲ 外観は改修なしでそのまま。70年代の定番スタイルの様式だそう。
「ある小説の主人公が、都内のマンションと伊豆の家と2拠点生活をしていたんです。それに憧れたのが、セカンドハウスを探し出すきっかけです(笑)」と達也さんは話す。そろそろ引っ越ししたい機運が高まっていたことと、50歳をきっかけに今しかない!という勢いに乗り、物件を探し出し始めました。
▲ 扉がない空間。北南に窓が多く設けられており、採光と風の抜け道となっている。
▲ 木の素材とコンクリートの素材が心地よく混ざり合う。
「海の側の家を探していました。何軒か巡ったところ、和歌山の空き家バンクでこの家に出会ったんです。一度内覧して、ほぼ即決でした」と達也さん。引き渡しが終わったのは、2018年。1年ほど購入したままの状態で暮らし、実際に住みながらどんなふうにリノベーションを施すか考えていたそうです。
▲ 左から、矢部達也さんと矢部仁見さん。
「リノベーションする前の間取りも、案外良かったんですよね。田の字型の間仕切りが心地よかったので、ワンルームにしつつ、元の間仕切りをある程度、踏襲しています」と達也さん。壁はコンクリート剥き出し。当初はこの上に珪藻土を塗る計画でしたが、考えを改めたそうです。
▲ コンクリート打ちっぱなしの壁。「夏は暑いし、冬は冷蔵庫の中にいるみたいですけど、この素材感の魅力には抗えませんでした」と達也さん。
裏山も含めて200坪(裏山100坪、敷地100坪、そのうち建物21坪)という築50年の物件は、500万円で購入。下水道も通っていたため費用も抑えられて、改修費は350万円で完結。ないと困るインターネット回線もしっかり開通し、不便を感じることはないそうです。
キッチン、トイレ、寝室はすべて開放
一番こだわったのが、空間の中でも存在感のある「ぐるぐるキッチン」。シンク、IHヒーター、カウンターが4面にそれぞれ分かれて置かれています。夫婦2人で料理をすることが多いため、シンクは2つ用意。そのおかげで洗い物をしたり、野菜を切ったりする時に、シンク周りが混雑することがありません。2つのシンクや食器洗浄機の位置など、それこそぐるぐるしながら何度も考えて設計したと達也さん。「結果的に一番最初の案を採用しました」
▲ ぐるぐるキッチン。畳2畳分のサイズの正方形。
▲ 2人の導線が交差しないので、各自が自由に動きやすい。
▲ 下部に収納も兼ねている。食器棚ごと動かして奥に物置を作ることができる。
▲ 食器は、引き出しになっていて取り出しやすい。
隅に置かれた薪ストーブは部屋を暖める暖房器具の役割だけでなく、料理に使うこともあるのだそうです。「昨年から薪ストーブの料理本を買って、色々試しています。オーブンがあると香草焼きやローストなど料理の幅が広がって楽しいですよ」と仁見さん。
▲ スタイリッシュな薪ストーブは青森のメーカーにオーダーしたもの。
空間を見渡すと気づくのが、高低さも種類もさまざまなテーブルと椅子の多さです。これを達也さんは「島」と呼んでいます。読書をする時、PC作業をする時、食事をとる時……さまざまな日常生活のワンシーンを、気分次第で自由に選べます。
▲ 今日はどの島で読書をする?
▲ お二人お気に入りのソファ。背を持ち上げればベッドにもなる。
“開放的な空間”とはよく言いますが、トイレと風呂場と寝室の境目までない間取りは珍しいでしょう。浴槽の前に壁がないのは、湯に浸かりながら、反対側の窓の向こうの海を眺めるため。
▲ 木棚の向こう側にトイレがあり、その横に浴室がある。南の窓から木漏れ日が入るので、あえて障子を残しているのもそのためです。
▲ 木の棚一枚で、抜け感を保ちながら、キッチン、リビング、寝室、水回りが仕切られている。
「週末に訪れるので、いまのところ仕事をすることは少ないですが、これから仕事をする態勢を整えていきたいと思っているんです」と達也さん。一方、仁見さんは、既にノートPCを持ち込んで仕事をすることもあるそう。お二人同じ空間に居ながらも、好き好きに時間を過ごしていることが多いのだとか。
▲ 海沿いをサイクリングするために購入したという自転車。室内に置けるスペースも。
点と点を繋ぐ移動時間も、2拠点生活の醍醐味
朝起きて、ご飯を食べて、語り合って、好きなことをして、夕食を取って寝る。セカンドハウスでの暮らしも、大阪・野田にある自宅での暮らしも大きくは変わりません。異なる環境に身を置けることこそが、2拠点生活の魅力なのです。
▲ 大阪・野田にある自宅。ビル1棟が自宅
▲ 自宅の2階は、2人の仕事場
▲ 自宅の3階は、キッチンとダイニングルーム
▲ 自宅の4階は、水回りと寝室
▲ 屋上からの風景
大阪の自宅は都市部。
一方和歌山のセカンドハウスは環境がまた異なります。
窓の外に広がる海。日々表情を変える海を楽しんでいると仁見さんは言います。「この家に暮らしていると、常に晴れていなくてもいいなと思うんです。雨が降っていたり、曇っていたり…色んな海の表情が見たくなるんです」。
▲ 玄関の横に設けられたテラス。窓を開けて、食事を運べるよう高さが調整されている。
▲ 海と樹々を見ながら、テラスで食事をする機会も多い。
二拠点生活を“半チャンセット”みたいなものと達也さんは例えます。ふたつ揃って、ひとつの生活。ひとつだけれど、異なるふたつの味。「点がふたつになると線が引ける。線が引けると距離が測れる。一方からもう一方を眺めることで、気づかなかったそれぞれの特徴や魅力を発見できました」
▲ いつでも遊びに来てくださいね、と気さくな達也さん。風向きを考えながら、建築設計を行うため、風レーダーを見るのが日課なのだとか。
移動時間をどう楽しめるか、が2拠点生活をする上のコツだと達也さんは言います。 「2つの家の距離は、車で約2時間。点と点を移動する移動時間は決して無駄ではなくて、頭の思考をゆっくりと整理する時間をもたらしてくれます。瞬間移動だと生まれない豊かな時間。それが、2拠点生活の魅力ですかね。これは実際にやってみてわかったことですね」
▲ 春夏秋冬を、窓から届く光と風と音で感じられる。
あとがき
静かな時間が楽しめる家。あちこちに素敵な椅子が置かれていました。達也さんの椅子コレクションが存分に披露されていました。2拠点生活は、家具や雑貨が好きな人やインテリア好きな人に向いているかも、というアドバイスもいただきました。その理由は、「家づくりが2回楽しめるから」とのこと。確かに!と納得してしまいました。憧れやワクワクから始める2拠点生活、スタートしませんか?
引越し先でも、安定したネット環境で快適な暮らしを
2拠点生活や田舎暮らしをお考えなら、引越し先で快適に暮らすためにもネット環境は早めに準備して整えておきましょう。関西圏内への移住なら、関西広域で10ギガ/5ギガの超高速コースを提供し、ネット回線とプロバイダーが一体型のeo光がおすすめです。同じネット回線を使用していても、プロバイダーによっては回線速度が遅くなってしまったり、サポートが期待できなかったりしますが、eo光なら、通信品質にばらつきがなく安定、サポートや障害発生時の対応も万全です。