閉じる

インテリア

公開日2026.02.05

あの映画みたいな部屋に住みたい!グランド・ブダペスト・ホテル編

映画を観たあと、ふと部屋の模様替えをしたくなった経験はありませんか。スクリーンの中に登場する部屋には、色づかいや家具の配置、照明の選び方など、日常の空間づくりのヒントが数多く詰まっています。
本記事では、デザイナーの視点で「インテリアが印象的な映画」をピックアップ。豊かな色彩や空間構成、アンティーク家具や絵画のような壁紙、レトロな照明などを手がかりに、映画のワンシーンのような部屋づくりのアイデアをお届けします。

映画の中の部屋に、住んでみたい?

映画の中で心を奪われる空間は、決して「特別な世界」だから魅力的なのではありません。
色づかいや家具の配置、照明の当て方、余白の取り方が、物語や登場人物の感情と自然に重なっているからかもしれません。映画のインテリアは、単なる背景ではなく、世界観や暮らし方を伝える重要な要素のひとつです。
本記事では、映画の世界観をそのまま再現するのではなく、色づかい、構図、素材感といった要素を分解し、日常の住まいにどう落とし込めるかという視点で読み解いていきます。

「グランド・ブダペスト・ホテル」とは

▲ サーチライト・ピクチャーズ「グランド・ブダペスト・ホテル」予告編

映画基本情報

監督 / 脚本:ウェス・アンダーソン
美術監督 : アダム・ストックハウゼン
公開年:2014年

舞台は、架空の東ヨーロッパの国「ズブロフカ共和国」。かつて栄華を誇った名門ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」を舞台に、ユーモアとサスペンス、そして人間ドラマが織り込まれた作品です。

あらすじ

物語の舞台は、架空のヨーロッパの国ズブロフカ。その山あいにそびえる名門ホテル、グランド・ブダペスト・ホテルを中心に物語は展開します。

主人公は、このホテルの“伝説のコンシェルジュ”であるグスタヴ・H。完璧なおもてなしと、裕福な宿泊客、特に高齢の未亡人たちへの気配りで知られていました。
しかし、長年の顧客であったマダムDが謎の死を遂げ、彼に遺された高価なルネサンス絵画をきっかけに、グスタヴは殺人容疑者として追われる身となります。

▲ サーチライト・ピクチャーズ「グランド・ブダペスト・ホテル」予告編

「グランド・ブダペスト・ホテル」映像の中の空間に、惹かれる理由

1|リアルと「おとぎ話」の間で

美術監督アダム・ストックハウゼンは、美術監督として「ただリアルな再現」を目指すのではなく、「映画ならではの世界」をつくることを追求しています。つまり、現実の歴史ホテルを模すのではなく、「おとぎ話」「記憶」「夢」のような、少し誇張された・装飾的で非現実的な空間をつくることを重視しているのです。

その結果、観客は「歴史的なヨーロッパのホテルを再現した」と同時に、「この世に実在しない“架空のホテル”」に迷い込んだような感覚を得ます。

2|建築・セット構造の選び方と改造。廃百貨店をホテルに

ロケ地のひとつには、旧東ドイツの廃百貨店が使われました。アダム・ストックハウゼンと製作チームは、この「ホテルではない建物」が「架空ホテル」に生まれ変わる可能性に注目しました。内部の吹き抜けや階段、天井のアートガラスなどがもともとあった構造を活かして、「ホテルのアトリウム」「メインホール空間」として再構築しました。

さらに年代ごとに色や素材感を変えることで、時間の経過と世界観の変化を映像に反映しています。

3|色彩・様式・ディテールへの徹底したこだわり

建築様式としては、フランス・ルネサンスやアールヌーボー、20世紀初頭ヨーロッパ建築などを参照した上で、「エキセントリックで物語的な空間」を意識しました。色使いは「パステルカラー」や「ビビッドなピンク」「暖かみある色調」を多用し、“おとぎ話感”“夢のような雰囲気”が完成しています。

小道具やプロップス(家具、看板、紙もの、ホテルの備品、装飾など)も極めて入念にデザイン。例えば、架空の共和国(ズブロフカ)の通貨、ホテルの案内表示、パッケージデザイン、ホテル制服、スーツケースなどこれらすべてに独自のデザインを与えて、細部が語る世界観を伝えています。

さらに、映画の重要モチーフにもなっているお菓子屋(作中の “Mendl’s” の洋菓子)までもが “実在するような” デザインで作られ、この色彩やデザインが作品のトーン(軽やかさ、少しメルヘン)を決定づけています。


この映画のインテリア構成を紐解く

【1】淡く鮮やかな色使い

▲ © HIROKI ONO

赤、紫、青、オレンジ、茶、黄色など、淡くも鮮やかな色彩で統一された空間は、おとぎ話や絵本のようなファンタジックな世界観を生み出しています。また、色を使い分けることで、シーンごとの時代背景や時間の流れを巧みに表現しています。

【2】シンメトリーな構成

▲ © HIROKI ONO

部屋やロビー、階段、廊下など、建物内部は徹底したシンメトリー(左右対称)で構成されています。その結果、画面はまるで絵画やポップアップ絵本のような整然とした印象を持ち、強い視覚的リズムを生み出しています。

【3】重厚感と優雅さを感じるスタイル

▲ © HIROKI ONO

ホテルの内装は、20世紀初頭ヨーロッパのホテルやリゾート、アール・ヌーヴォーやユーゲントシュティールの装飾様式を参照しています。そこには、古き良き時代の重厚感と優雅さが感じられます。

あなたのお部屋への応用例

この映画のインテリアを構成する要素を、あなたのお部屋に落とし込むとどうなるでしょうか。一般的なマンションのリビングルームと寝室の間取りをもとに、Before/Afterのイメージをスケッチに起こして、ご紹介します。
Afterのポイントを踏まえて、少しだけあなたのお部屋に取り入れてみるのはいかがでしょう。

1.リビングルームの提案

▲ 想定するリビングルーム間取り図 © HIROKI ONO

Before

▲ リビングルーム(Before)© HIROKI ONO

After

▲ リビングルーム(After)© HIROKI ONO

Afterのポイント

1|全体は、ホテル文化の全盛期を思わせる思い切ったピンク色に

空間全体は、かつてのホテルの華やかさを想起させるピンク色でまとめます。壁は壁紙ではなく、既製品のモールディングを組み合わせた上から塗装することで、奥行きのある表情を演出します。装飾はアール・ヌーヴォーの意匠を意識し、曲線の美しさをさりげなく取り入れるのがポイントです。

2|シンメトリーを意識した構成に

▲ © HIROKI ONO

空間の中心にはアンティークソファを配置し、その背後に絵画を据えることで、視線の軸を明確にします。左右の壁にはブラケットライトを対称に配置し、クラシカルで安定感のある構図をつくります。シンメトリーを意識することで、ホテルライクな品格が生まれます。

3|マンション改装を想定した内窓と建具の工夫

▲ © HIROKI ONO

マンションの一室を改装することを想定。内窓(二重窓)を設け、アール・ヌーヴォー調の装飾を取り入れた建具とします。機能性を確保しながらも、装飾性のあるデザインを取り入れることで、非日常感のある空間に仕上げます。

4|同時代のアンティーク調で世界観を統一

家具やシャンデリア、絨毯は、空間のテーマと同時代のアンティーク調のものを選ぶと、より完成度が高まります。さらに、小物類にアンティークアイテムを取り入れることで、無理なく統一感のある世界観を演出できそうです。

2.ベッドルームの提案

▲ 想定するベッドルーム間取り図 © HIROKI ONO

Before

▲ ベッドルーム(Before)© HIROKI ONO

After

▲ ベッドルーム(After)© HIROKI ONO

Afterのポイント

1|全体は、映画に登場する落ち着いたイエローで統一

空間全体は、映画のワンシーンに登場する現代のグランドブダペストホテルの一室をイメージし、落ち着きのあるイエローをベースカラーに設定し統一します。主張しすぎない色味を選ぶことで、心地よく洗練された雰囲気が生まれます。

2|左右対称を意識したベッドまわりの構成に

▲ © HIROKI ONO

木製のヘッドボードを持つベッドを空間のセンターに配置し、その正面に絵画を飾ります。さらに、ベッドの傍らにはヴィンテージ風のスタンドライトを左右に配し、シンメトリーを意識した落ち着きのある構成とします。

3|柄の美しさが際立つ輸入壁紙を選ぶ

▲ © HIROKI ONO

輸入壁紙には、デザイナーによるインテリア性の高い柄が豊富に揃っています。ミッドセンチュリー調な幾何学柄など、パターンが美しく映えるものを選ぶことで、壁そのものが空間の主役となります。

4|1960年代ミッドセンチュリーのヴィンテージで揃える

▲ © HIROKI ONO

ベッドや家具、小物は、同時代である1960年代頃のミッドセンチュリー調ヴィンテージで統一します。時代背景を揃えることで、細部にまで物語性と楽しさが加わります。

5|カーテンは2倍ヒダでドレープを美しく

カーテンは部屋全体の雰囲気に合わせ、ドレープが美しく見える2倍ヒダ(横幅を生地2枚分使う仕様)を選びます。布の量感が増すことで、ホテルライクな空気感をよりリアルに再現できます。

まとめ

画面のすみずみまでこだわりが詰まった、世界観が魅力のウェス・アンダーソンの作品。本作で視線を奪われているのは、どこか懐かしくて上品な雰囲気をまとったホテルの空間であり、画面のすみずみまで行き届いた空間設計にもあります。

色の組み合わせやフォルムの美しさ、左右対称の構図。そのどれもが、観る人の視線を自然と引き込みます。映画に登場するインテリアのエッセンスを少しだけ日常に取り入れることで、暮らしの中に小さな非日常や旅気分を添えることができるかもしれません。

編集:小倉ちあき

協力

デザイナー 小野 啓樹(ambient)

大学卒業後、建築設計事務所に勤務。海外放浪を経て、株式会社DRAEWRSへ入社。インテリアデザインを中心に様々なデザインを経験する。その後、株式会社SANDWICHにて空間デザイン、彫刻の設計を行う。2022年に独立し、デザインスタジオambientを設立。会社名であるambientの名前の由来通り「環境の」「その他の」ことを中心に幅広く創作活動を行なっている。

この記事をシェアする

おうちのネット回線を
eo光でもっと快適に

アドバイザーに相談

自分にあったプランを選ぶ

eoの取り組み

Category

メールマガジン登録
PAGETOP