公開日2025.10.03
子どもひとりに1部屋は本当に必要?家を建てたパパ・ママのリアルな声

家を建てたパパ・ママに「どんな間取りを希望しましたか?」と聞くと、「子どもにひとりずつ個室がある間取り」というのは常に上位にランクインします。しかし最近では、「広めの部屋をきょうだいで共有しているので、個別の部屋はつくらない」といった考え方も増え、子ども部屋のあり方にも変化が見られます。
子どもひとりに1部屋は、今でも本当に必要なのでしょうか…?
そこで年間約100件の住宅を取材する筆者が、実際に家を建てたパパ・ママの
「子どもにひとりずつ個室をつくった声」
「あえてひとりずつの個室はつくらなかった声」
をそれぞれご紹介します。
人数分の個室を用意するべきか悩んでいるというパパ・ママにおすすめの間取りもご紹介しますので、これから家を建てる方はぜひ、参考にしてください。
時代とともに変わる「子ども部屋のあり方」

昭和や平成前期の間取りでは「子どもの人数=子ども部屋の数」というのが一般的でした。むしろ、「個室を与えないのはかわいそう」というような風潮さえありました。子どもが個室にこもって勉強をする、あるいは勉強しているふりをしてマンガを読む。子ども部屋にはクローゼットやタンスがあり、洋服は自分で整理整頓するのが当たり前。そんな光景が一般的でした。
しかし令和の今、そのスタイルは変わりつつあります。今では、リビングやダイニングテーブルで宿題をする子が多く、家族のコミュニケーションを大切にするため、また親の目が届かない場所でスマホやゲームを使わせないためにも、家族みんなでLDKで過ごす時間が長くなっています。
さらに、家事効率を重視する家庭が増えたことで、衣類はファミリークローゼットにまとめて収納できる間取りが一般的に。こうした変化により、子ども部屋は「寝るためだけの空間」になりつつあります。
このような変化をふまえて、子どもにひとりずつ個室をつくった、つくらなかったパパ・ママのリアルな声を紹介します。
「子どもにひとりずつ個室をつくった」パパ・ママの声

- ・兄妹で性別が違うため、それぞれに個室が必要だった。
- ・思春期以降は個室にこもりたくなると思ったから。
- ・受験になったら勉強に集中できる個室が必要。
- ・絵を描く、楽器を弾くなど、好きなことに没頭できる場所を持たせたかった。
- ・「自分の部屋は自分で片づける」という習慣を身につけてもらいたい。
- ・スマホやゲームの時間も、自分でコントロールできるように、自立心を育てたいと思った。
【個室は必要派】は、子どものために“自分だけの空間”を
子ども一人ひとりに個室をつくってあげたというパパ・ママは、子どものプライバシーや居心地の良さなどを重視する傾向があります。親自身がきょうだいで同じ部屋だったなど、自分自身の経験を踏まえて、子どもに居心地のいい環境をつくってあげたいという声もよく耳にします。特に性別が違うきょうだいの場合、それぞれに個室を与えたいと考える方が圧倒的に多いです。同性であっても思春期ごろからプライバシーが気になりますし、個室は欲しいだろうという配慮もあります。また、子ども部屋をつくることで自分自身で片づける習慣を身に付けさせたいと考えるパパ・ママも。リビングなど家族共通の場所はどうしても親が片付けてしまうので、親に頼らず整理整頓ができる人になって欲しいという願いですね。
一方で子どもにひとりずつの個室をつくっていない家庭では、次のような声がありました。
「子どもにひとりずつ個室はつくらなかった」パパ・ママの声

- ・子どもには早く独立してほしいので、あえて居心地のいい個室はつくらない。
- ・個室があるとこもってしまうので、コミュニケーションを深めるためにも必要ないと思った。
- ・勉強はリビングでするので個室は必要ない。
- ・子ども部屋は個室ではなく、広めの部屋を子どもみんなで使わせたい。
- ・独立後は子ども部屋は使わなくなるので、将来的に活用できる空間をつくりたい。
- ・きょうだいの仲がよく、同じ部屋の方が子どもたちが喜ぶから。
【個室は不要派】は、家族のつながりと将来の自立を重視
子どもに個室は必要ないというパパ・ママは、家族間のコミュニケーションを重視する傾向があります。同じ空間にいて常に家族の気配を感じられるような工夫をする方が多いですね。同じ空間にいることで、家族の会話も自然に増えるでしょう。しかし、ほとんどの方は子どもがみんなで使える広めの子ども部屋はつくっています。
また、子どもにとって居心地のいい個室をつくると、将来、自立せずにずっと家で暮らすのではないかという懸念からあえて個室をつくらないという方の話もよく聞きます。いつまでも親に甘えるのではなく、しっかり自立して人生を歩んでほしいという願いですね。
子供にひとりずつ個室が必要かお悩みのパパ・ママに
ここからは子どもの人数分個室を用意すべきか悩んでいるパパ・ママに、おすすめの間取りを2つご紹介します。
1.成長にあわせて変化できる「2WAY子ども部屋」
広めの洋室を子どもが小さい頃はプレイルームにして、成長して個室が欲しいという要望があったら間仕切りで2部屋にする──そんな「2WAY子ども部屋」が今、注目されています。
広めの洋室の間に新たに壁をつくり、しっかりとした個室にするという選択もありますが、収納棚や本棚を間仕切りにしたり、カーテンやブラインドなど簡易的なものにしておけば、子どもが巣立った後は再び広い洋室に戻すことができます。

▲ 掲載記事:共働き時代の新しい家づくり。子育てしやすい『ともかじ』の設計ポイント(ビーバーハウス「ともかじの家」モデルハウス)
注意点としては、2部屋に仕切った時にそれぞれの部屋に扉やクローゼット、窓があるようシンメトリーにつくること。そうでないと、窓がある部屋がいい、クローゼットがある部屋がいいと取り合いになってしまう恐れがあります。これから家を建築する方は、建築会社に「将来は2部屋にするかもしれません」としっかり伝えておくとよいでしょう。
2.家族共通の「ライブラリー兼ワークスペース」
子どもたちに個室をつくってあげたいけど、家族のコミュニケーションも大切にしたいなら、家族共通のライブラリー兼ワークスペースをつくることもおすすめです。
例えば、廊下やホールにカウンターデスクと本棚を造り付けたり、ソファを置いたり、セカンドリビングのような感覚で使える空間にすると用途が広がります。

▲ 掲載記事:共働き時代の新しい家づくり。子育てしやすい『ともかじ』の設計ポイント(ビーバーハウス「ともかじの家」モデルハウス)
子どもが小さいうちは、絵本を読んだり、お絵描きをしたりする遊びのスペースに。就学後は勉強スペースとして、さらにパパ・ママのリモートワークの場としても活用できます。また、勉強だけでなく、マンガを読んだりゲームをしたりと、家族が思い思いに過ごせる空間にもなります。リビング以外にも、家族が自然と集まれる場所があることで、家族間のコミュニケーションが増えるきっかけになるでしょう。
子どもひとりに1部屋は必要?まとめ
子どもの人数だけ個室をつくると、いずれ子どもが巣立った後、その部屋が持て余される可能性があります。おそらく、子どもが個室を必要とする年数より、夫婦だけで暮らす期間の方が長くなる家庭が多いのではないでしょうか。
また、子どもが「個室がほしい!」と言うので人数分の個室を用意したものの、結局ずっとリビングで過ごしていて個室をあまり使わなかったという話もよく耳にします。子どもにとって個室は「憧れ」であっても、実際にはそれほど活用されないこともあるのです。「無いものねだり」で、なければほしがるけれど、あれば使わない——そんな一面もあるかもしれません。広さに余裕のある家ならば使わない部屋があっても気にならないかもしれませんが、せっかく家を建てるなら、子どもが巣立った後まで見据えて、将来も活用できる間取りを考えておくことが大切です。
本当に子どもの人数分の個室が必要なのか?
あるいは、共有の子ども部屋でも良いのか?
それぞれの家族のスタイルに合った間取りを検討してみてください。
筆者

住宅ライター / プロインタビュアー
大内 夏実
株式会社リクルートで情報誌のイロハを学び、独立。不動産・住宅系ライターとして経験を積む。大手ハウスメーカーから小さな街の工務店までさまざまな建築会社の注文住宅施工例やモデルハウスなどを取材し、また実際に購入した方、家を建てた方のインタビューも多数実施。年間100軒ほどの取材に基づいた知識と経験から多くの建築会社の広告戦略なども手掛けている。