公開日2026.02.25
実家が空き家に…放置するリスクと「実家じまい」の進め方
実家が空き家になり、「いつか片付けよう」と思いながら先延ばしになっていませんか。空き家は老朽化や防犯の不安だけでなく、管理状態によっては行政対応の対象となり、住宅用地特例が外れて固定資産税などの負担が増える可能性もあります。一方で、相続やお金の話は家族に切り出しにくく、思い出があるほど決断は難しいもの。
本記事では、空き家の実家を放置しておくリスクと確認すべきポイントを整理し、「実家じまい」の進め方、費用の目安までわかりやすく解説します。
実家が空き家に…このまま放置しても大丈夫?

かつて住んでいた築40~50年になる実家。年々老朽化が進み、地震での耐震性や大雨などの災害に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
- ・親が建てた思い出のある家は残しておきたい
- ・家族間で相続や遺産の話はしづらい
- ・今の暮らしがあるから金銭的・時間的に余裕がない
これらの理由から今では空き家となった実家を所有したまま手を付けられずにいる方も少なくありません。ですが、空き家を所有したまま放置しておくことは、これから大きなリスクを抱えることになるのをご存じですか?
空き家を所有することで抱えるリスク
空き家を所有することでまず、
・庭や草木のメンテナンス、掃除
・害虫の駆除
・屋根や建物の補修
・窃盗、侵入などの防犯
などを引き継いだ家族がすべて対応しなくていけません。また、これらを放置しておくと、近隣からのクレームにもつながり、精神的なストレスをも抱えることになります。
日本では今、空き家は増え続け大きな社会問題にもなっています。2023年には総住宅数のうち、空き家は900万戸と、2018年(849万戸)と比べ、51万戸の増加で過去最多になっています。空き家数の推移をみると、これまで一貫して増加が続いており、1993年から2023年までの30年間で約2倍になっています(※)。
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家とは、賃貸用の空き家、売却用の空き家及び二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(注:空き家の種類の判断が困難な住宅を含む)。
※出典:令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果「図2 空き家数及び空き家率の推移-全国(1978年~2023年)」(総務省)、PDL1.0
空き家を放置することに対する行政対応
2015年に国により「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、倒壊のおそれや衛生上の問題などがある空き家は、自治体により「特定空家(等)」などに認定され、助言・指導等の段階を経て、必要に応じて勧告・命令等の対象となる場合があります。さらに、自治体から勧告を受けると、住宅用地に適用される固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)が外れ、税負担が増える可能性があります(増加幅は土地の区分や状況により異なります)。
また、2023年12月の法改正により、特定空家の手前段階として「管理不全空家(等)」が位置づけられました。管理が不十分な状態が続き「管理不全空家(等)」に認定され、自治体から勧告を受けた場合には、住宅用地特例の適用が外れる可能性があるため、これからは空き家になってからではなく、空き家になる前から方針を検討しておくことが重要です。
国土交通省:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針 (ガイドライン)
国土交通省:管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施 を図るために必要な指針(ガイドライン)
空き家になる前に、「実家じまい」という選択
最近では実家を片付けることは、子どもや孫たちのためにも、前に進むための方法であると考え、早期に「実家じまい」をする人が増えてきています。
実家じまいとは、両親が他界、または施設に入ったなどの理由で誰も住まなくなった実家を子世代が整理して処分や解体など、家を“仕舞う” 作業を行うことです。
実家じまいと一言でいっても、「現状のまま売却する」「解体をして更地にして売却する」「リフォームして保有する」など、さまざまなケースがあります。
実家じまいの進め方、まずやるべきこと
売却するにせよ保有するにせよ、家じまいを進めるためにはまず、やるべきことがあります。
実家をどうするのかは、不動産の問題だけではありません。親と子の「家族の気持ち」「お金」「これからの暮らし」が複雑に絡み合うテーマです。家族できちんと向き合って区切りをつけるからこそ、これからの人生をどうしていきたいのかが整理できます。
この家をどうしたいのか、これからどう暮らしていきたいのか、話合いを重ねることで「売却」か「保有」か、家族で気持ちをすり合わせることが最も大切です。自分の意見だけや勢いで進めず、まずはきっかけの場をつくり、はじめの一歩を踏み出しましょう。
片づけのプロも悩んだ『実家の片づけ問題』。始めるために必要だったもの
2024年4月から相続(等)により不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記の申請が義務となりました。怠った場合は10万円以下の過料の対象になる場合があります。
名義は誰か?相続や財産はどうなっているか?家族に確認しましょう。権利や税金関係について、司法書士や税理士など相談先を探すことも必要になります。実家は権利の集合体です。これが曖昧なまま動くと、解体・処分・売却のすべてが止まる可能性があります。
あわせて今の建物の老朽状況を確認しておくこと。売却の際やリフォーム後にトラブルにならないためにも現状の建物、または崩壊の危険性についても専門家にチェックしてもらいましょう。どこに相談すればいいかわからない場合は、区役所・市役所の空き家相談窓口に相談するとよいでしょう。
実家じまいの中で、最も時間と気力を使う工程が「思い出の整理」です。まずは「不要なもの」と「残したいもの」の仕分けをしていきましょう。
その際、家族の中で誰が主導になって動くのかも進めていく上で重要なポイントです。家族の協力がなく、一人で進めるとなると、大量の不用品や思い出の整理に決断ができずに心が折れてしまいます。長く時間をかけても進まないことが多いので、家族での役割分担と、業者に依頼する内容を決めておくとよいでしょう。
片づけのプロも悩んだ『実家の片づけ問題』。家族が残してほしいもの
実家じまいにはいくらかかる?費用の目安
これから行う実家じまいではどんなことをしないといけないのか、かかる費用の目安を知っておくとさらに整理ができ、進めやすくなります。実家じまいで必要な作業とそれにかかる費用をまとめてみました。
|
必要な作業 |
費用の相場 |
補足 |
|---|---|---|
|
家の状態の確認 |
相談料3~5万程 |
依頼先・調査範囲で変動 |
|
相続関係の手続き |
ケースによる |
司法書士報酬や登録免許税などが発生 |
|
相続税の申告・納税 |
ケースによる |
遺産総額・基礎控除・特例適用の有無で変動。 税理士報酬など発生する場合あり |
|
不用品処分 |
17~50万円程 |
間取り・物量・搬出条件で変動 |
|
建物の解体 |
100~300万円程 |
立地・規模・付帯工事・アスベスト等で大きく変動 |
|
売却時の費用 |
ケースによる |
仲介手数料、測量費、境界確定費用などが発生する場合あり |
※上記はあくまで目安です。地域、建物条件、依頼先、契約範囲によって金額は変動します。
相続関係の手続きや納税を除いて、実家じまいにおいて主な費用は、「不用品処分」と「建物の解体」にかかる費用です。
「不用品処分」と「建物解体」は業者が異なる
不用品処分と建物解体は、どちらも同じ業者に依頼するのでは?と思われるかもしれませんが、依頼できる業者は基本的に異なります。建物の解体業者の作業範囲には家財や残置物などの不用品の処分は基本的に含まれません。オプションとして不用品の回収・処分まで対応してくれる解体業者もあります。
|
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不用品処分 |
建物解体 |
|---|---|---|
|
主な依頼先 |
不用品回収業者、遺品整理事業者など |
解体工事業者 |
|
作業範囲 |
家財・家電等の搬出、分別、処分 |
建物本体の解体、廃材処分、養生、近隣対応、届出(契約範囲による) |
|
依頼時の注意点 |
追加料金条件・処分方法・許可等の確認 |
付帯工事(庭木・塀・倉庫等)や残置物の扱いを契約で明確化 |
不用品回収業者の費用目安
不用品回収業者に搬出と処分を依頼した場合は、 トラック1台あたりの定額料金 が一般的な算出方法になります。
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不用品の量 |
費用目安 |
|---|---|
|
軽トラック 1台分 |
約2万円~5万円 |
|
2トントラック、または4トントラック 1台分 |
約6万円~13万円 |
|
一軒家全体の片付け(遺品整理など)相場 |
17万円~50万円程 ※間取りや不用品の量による |
※上記はあくまで目安です。処分する物によっても費用は変わります。
不用品回収業者に依頼すると、すぐに対応してもらえ、部屋からの搬出も対応してくれます。家電リサイクル品もまとめて回収してくれ、体力的にも負担が少ないという大きなメリットがあります。
また、解体業者によっては不用品処分もまとめて依頼することも可能です。利用することで不用品回収業者を探す手間が省け、見積もりを何社も取らずに済みます。日程調整や解体工事との段取りもスムーズで、解体業者に全てを任せられるので、総合的に負担が少なくなります。しかし、その分、管理費、中間マージン、工程調整コストが含まれるため、不用品処分の費用は割高になる可能性があります。
建物解体の費用目安
建物の解体は、 木造住宅は1坪あたり3〜5万円前後の算出方法となり、一般的な戸建ては100〜300万円くらい かかると言われています。付帯工事(庭木・倉庫・塀など)は別途費用がかかります。
費用に幅がありますが、近年は人件費や燃料費、処分費などの高騰もあり高くなっている傾向にあります。それを前提と踏まえて、以下によっても費用が変わります。
- ・建物の築年数や構造(木造・鉄筋・コンクリート)
- ・アスベストの有無
- ・立地(道幅・近隣)
- ・廃材の量
特にアスベストが含まれる場合は、処分対応などが厳しく規制されているため費用が上がります。立地についても、狭くて細い道、斜面などで解体するにあたり機械・重機が使うことが難しい場合は、手解体・手作業・手運搬になるため、工期も長くなり費用が膨れ上がります。このような立地の場合に、見積が500万くらいになったというケースもあります。
実家じまいの費用を安くするためには?
できるだけ費用を安くするためには、不用品処分にかかる費用を抑えることがポイントです。不用品が整理され、片付けがされている家の解体費は下がる傾向にあります。
家財などの不用品は自分たちで処分することもできます。自治体が指定する回収日に不用品を回収場所まで運ぶ必要があり、体力と時間もかかりますが、品目ごとに費用が決まっており、1つ数百円~数千円程度なので費用は安く済みます。ただ、家電リサイクル法対象品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)は粗大ごみ回収の対象外としている自治体が多いです。
また、すべて不用品として処分せずに、買取りができるものは売ることでプラスになります。不用品回収業者の中には、価値があるものを買取して処分費から相殺してくれるサービスもあります。それらを利用するのも良いでしょう。
不用品回収・解体費用の注意点として、安いだけで業者を選ばないことです。実家じまいは、不用品回収業者・解体業者選びがとても重要になります。契約内容が詳しく記載されている、わかりやすく丁寧に説明してくれる業者を選びましょう。また、不用品回収は無許可業者とのトラブルもあるため、自治体の許可・委託の有無や契約内容、料金体系(追加料金の条件)を事前に確認しましょう。
実家じまいで、思い出を残そう
長年住んだ家や家財で思い出のあるものは、物理的に残せないものも多く、手放す時がいつかは来ます。早めに実家じまいをするからこそ、思い出を残す方法があります。
1|実家の記録を写真や動画で残す
実家の写真を撮影しておく。また、家族で話し合っている時や思い出を振り返っている様子を動画で残すことで物語が記憶より掘り起こされ、未来へ引き継げる価値あるものになります。
2|建具や梁、柱の一部を残す
解体工事をする前に、建具や梁、柱など、古材の一部を保管・再利用したり、アップサイクルして別物に変えて残すこともできます。建物はそのまま残せませんが、コンパクトにし新たに引き継げる形にすることで、触れると記憶が蘇る、特別な価値のあるものになります。
すべてを残す必要もありません。家族で語る時間をつくることからはじまり、残したい記憶を選ぶことが“実家仕舞い”の本質ではないかと思います。
まとめ
実家をどうするかを考えることは、これから人生をどう生きていくかを考えるステージです。実家じまいで過去の記憶を家族で語ること、残したい思い出を記録することで、実家じまいは終わりではなく、新たなはじまりにもなります。
空き家が社会問題にもなっている今、家族が未来にどのように暮らしたいのかを現実的な費用から選択することが大切です。実家をどうするかでお悩みなら、まずはその第一歩となる「家族と話す時間」をつくることからはじめてみましょう。
筆者
sumica編集部
『自然体で、心地よく過ごせるお家にしたい』そんな方々に、毎日が少し楽しく、豊かになる住まいづくりのヒントをお届けしています。日常に役立つハウツーや、便利な暮らしのアイテムなどもご提案。





