失敗しないマイホーム

公開日2024.08.01

【狭小住宅】土地が狭くても願いが実現!狭小地で建てるコツと実例

今、狭小住宅がおもしろいことになっています!
陽当たりや住空間の広さ、収納場所の確保など「狭小住宅」にネガティブなイメージを持っている方も少なくないかもしれません。しかし、狭小住宅だからこその工夫や自由な発想を取り入れると、土地の狭さを感じさせない理想的な家が建築できるんです。それでは、「狭小住宅」を建てる際のコツや、暮らしの快適性も個性も豊かなデザインも兼ね備えた狭小住宅をご紹介しましょう。

狭小地とは?

そもそも「狭小地」とは、狭小地とは読んで字のごとく、狭い土地のことです。実は、狭小地に定義はありません。地方の広い土地が得やすいエリアだと30坪でも狭小地と言われる場合もあります。ですが、おおむね20坪以下の敷地だと狭小地と認識する方が多いようです。

狭小地で建てるメリット・デメリット

「狭小住宅」のメリット

コストが下げられる

都心立地や駅前など便利な土地は、坪単価が高くなります。当然ながら土地が狭ければ土地価格は安く抑えられます。

住みたい場所に土地を見つけやすい

ビルとビルの間の土地や商店が並ぶエリアなどに売り土地という看板を見かけた記憶がありませんか? 都市部や駅前など広い土地が売りに出されることが少ない場所でも、狭小地なら売られている場合があります。

動線がコンパクト・掃除がしやすい

狭小住宅は面積を有効に活用するために、動線がギュッとコンパクトにまとまる設計が多く見られます。家事動線がスムーズで、掃除をする場所も少なくて済むので家事がラクになります。

「狭小住宅」のデメリット

隣家との距離が近い・壁や窓のメンテナンスが難しい

狭小住宅は隣家との距離が近く、数十センチしかないこともよくあります。その隣り合わせの壁面や窓のメンテナンスは非常に困難です。

設計の工夫が必要

光が入らないとか住空間が狭いなどの問題は設計次第でカバーできます(後ほど写真入りで説明します)。 しかし、設計の工夫が必要。その点、設計力の乏しい工務店などに建築を任せると、不満が残る結果になるかもしれません。

狭小地で家を建てる際の注意点

狭小地で家を建てる際は、設計の工夫が必要不可欠です。では、どんなことに注意しなければいけないのか、またどんな工夫をすれば快適な住まいになるのかを専門家に聞きました。

建築設計事務所 株式会社KADeL
本社所長/一級建築士 西尾真一さま

建築士歴20年を超える西尾さんは、狭小地建築でも賞を受賞するなど実績・経験ともに豊富な一級建築士。「暮らす人の条件にさえあえば、狭小住宅にデメリットは無いかもしれませんね。ただ、工夫しないといい家は建ちません。」という西尾さんにお話を聞きました。

──どんな土地でも家を建築することができるのですか?

西尾さん「15坪程度でも家を建築することはできますが、木造住宅の場合、間口が3mは必要ですね。」

──逆に3mあれば家が建つんだ!というような驚きがありますね!
土地を購入する際に特に注意しなければいけない点は他にありますか?


西尾さん「建築には建築基準法をはじめ、様々な法令があるので、たとえ間口が3m以上あっても理想としている家が建築できない可能性もあります。まず、設計士に相談してから土地を購入することをお勧めします。」

▲ 西尾さんが設計した間口3m、土地面積15.63坪の家(建築設計事務所 株式会社KADeL施工例/都市に棲む家2)

──狭小住宅といえば、隣家と近く、1階など光が入らないところがあるのではないかと思うのですが、光を取り入れるコツはあるのですか?

西尾さん「土地だけを見て、日中でも日が当たらず、コケが生えそうな狭い土地では陽当たりは望めないだろうと思う方がたくさんいらっしゃいます。しかし、実際に家を建てるとこんなに光が入るんだ!と驚かれる方がほとんどですね。ポイントは窓の大きさや位置。大きな窓ではなくても、場所さえ考えられていたらとても有効です。

また、2階や1階に光を届けるために、あえて床面積をけずって吹き抜けにするなどの工夫も必要です。」

▲ 左)光を取り入れるのにトップライトはとても有効。右)暗くなりがちな奥の方(ダイニングテーブルの上)に吹き抜けを設けて光をもたらす設計(建築設計事務所 株式会社KADeL施工例/都市に棲む家2)

──隣家が高い建物の場合などでも光を得ることができるのですか?

西尾さん「様々な条件がありますが、窓の位置によっては可能です。例えば私が設計した家で、両隣がマンションになるのですが、マンションの壁が白だったので反射光を考慮にいれて窓を設計したので光が入る明るいLDKが実現しました。」

▲ 左)マンションに挟まれた場所に建つ狭小住宅 右)壁に反射する光(反射光)を家の中に取り込んだLDK(建築設計事務所 株式会社KADeL施工例/ニッチハウス)

──リビングなど家族がくつろぐための広い空間を得ることはできますか?

西尾さん「家族によって10畳でも広い、20畳でも狭いなど広いと感じる尺度が異なりますから一概には言えませんが、設計の工夫次第で満足する広さを確保することは可能です。」

▲ あえてテレビを置かず、プロジェクターで白い壁に画面を移すことで面積を有効に使っているリビング(建築設計事務所 株式会社KADeL施工例/都市に棲む家2)

──ズバリ、狭小住宅で失敗しないコツはありますか?

西尾さん「土地が狭いから…とあきらめない事ですね。設計次第で、できることはたくさんありますし、可能性は無限大です。ご自身でリミッターをかけず、設計士に希望をぶつけ、相談しながら建築することが満足につながります。その際に、狭小地で建築した経験がある設計士や工務店に相談すること。狭小住宅は設計も施工も経験値がないと難しいので、その点は重視してほしいです。」

──ありがとうございました。

狭小地で建てた実例を紹介

敷地約15坪(大阪府) 

▲ (建築設計事務所 株式会社KADeL施工例/都市に棲む家)

間口3mでもたっぷり光が入る「都市に棲む家」
約15坪で間口3mでありながら、自然光を採り込み機能的でスタイリッシュな都市型3階建て。1階には書斎スペースも設けています。また、2階はセンターにキッチンがあり(写真の階段の裏側がキッチン)、ダイニングとリビングを分けたスタイルに。3階には壁面いっぱいに設けられたクローゼットもあります。

▲ (建築設計事務所 株式会社KADeL施工例/都市に棲む家)

ダイニングは、間接照明が印象的。ストリップ階段による空間の抜け効果もあり、閉塞感は感じられません

▲ (建築設計事務所 株式会社KADeL施工例/都市に棲む家)

左官仕上げのモルタルの壁がおしゃれ。モノはできるだけ置かず、ミニマルに。テラスに続いているので自然光が入り開放的。

敷地約19坪(大阪府) 

▲ (建築設計事務所 株式会社KADeL施工例/愉しむ家)

コンサートホールがあるガレージハウス「愉しむ家」
敷地約19坪。木造住宅でありながら、曲線を描く外観がアーティスティックなガレージハウス。「他にはない、独創的な家にしたい」というお施主様の願いを叶えました。1階のガレージの奥はグランドピアノがあるコンサートホール、2階には中庭もあり、遊び心があふれる家です。

▲ 1階はグランドピアノがあるコンサートホール。観客席に見立てた螺旋階段は吹き抜け効果もあります

▲ 中庭に面した2階のLDK。白い壁に光が反射し、自然光だけでとても明るく、開放的です

3階の子ども室の床は、一部がハンモックに! 2階に自然光を届ける役割も担っています。
2階と3階でフロアが離れていてもハンモックを通じて声も届きやすく、子どもの気配を感じられるアットホームな設計です。

まとめ

狭小住宅は面積が限られていて、1センチも無駄にできないので設計力がポイントになります。取材を通して、逆に狭小住宅の方が工夫が活かされて、個性的な住空間になることを実感しました。
駐車スペースが3台分ほしいとか、駆けまわれるほどの広いお庭が欲しいなど物理的に難しい要望以外、狭小住宅でも理想の住まいは叶うのだと夢が膨らみました。


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協力

建築設計事務所 株式会社KADeL

「建築は、未来を変えられる」

受賞歴も多数ある経験豊富な建築デザイナーが、洗練されたハイグレードな住まいを提案。暮らす人の快適性と建築物としての美しさを共存させた高い設計力が魅力。また、土地探しから資金計画、施工、アフターサービスまですべて自社で担当する一貫体制も特徴のひとつ。自然の恵みと寄り添いながら暮らす環境共生型のパッシブデザイン住宅は、モデルハウス「土壁の家」で体感できます。

心斎橋駅から徒歩1分にある心斎橋店

モデルハウス「土壁の家」。見学希望はお問合せを

筆者

著者

住宅ライター/プロインタビュアー 大内 夏実

株式会社リクルートで情報誌のイロハを学び、独立。不動産・住宅系ライターとして経験を積む。大手ハウスメーカーから小さな街の工務店までさまざまな建築会社の注文住宅施工例やモデルハウスなどを取材し、また実際に購入した方、家を建てた方のインタビューも多数実施。年間100軒ほどの取材に基づいた知識と経験から多くの建築会社の広告戦略なども手掛けている。

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