公開日2026.02.12
家族のための介護リフォーム「よくある質問」と新しい手すりのカタチ
いまご両親やご家族の介護をされている方の中には、“より快適な暮らしを”とご自宅のリフォームを検討している方もおられるでしょう。
前回の「介護保険」を活用したリフォームの基礎知識に引き続き今回は、介護リフォームについての疑問や悩みにQ&A形式でお答えしていきます。
我が家はまだまだと考えている方でも、ご家族やご自身がいつ、ケガや病気などで動けなくなるかわかりません。将来の介護を想定した住環境づくりのヒントについてもお届けします。
何からはじめる?介護リフォームのよくある質問Q&A
前回は「介護保険」を活用したリフォームの基礎知識「家族と住まいを助ける、介護保険を活用したリフォームの基礎知識」をお伝えしましたが、今回は介護する側・される側のどちらにとっても「これで合っているのか分からない」と迷うことの多い、具体的な住まいのリフォームについて。
実際によく寄せられる質問とお悩みを取り上げ、専門家に回答していただきます。
回答いただいた専門家
前回に引き続き、株式会社神戸レンタルの義肢装具士の村上祐介さんと、TSUGI DESIGN合同会社代表の高橋吉昭さんと高木舞人さんにお話を伺い、さまざまな事例を見てきた経験による具体的な回答とアドバイスをいただきました。

株式会社神戸レンタル
神戸支店 主任 村上 祐介さん
阪神間を中心に、神戸から大阪まで兵庫県西宮市に本社を置く、株式会社神戸レンタル。福祉器具のレンタル・販売や、ご高齢の方が住みよい住宅に整えるための住宅改修、さらに介護保険の相談にも応じています。


TSUGI DESIGN合同会社
建築設計 高橋吉昭さんと高木舞人さん
TSUGI DESIGNは、高橋吉昭さんと高木舞人さん(大手前大学 建築&芸術学部 准教授)によって設立されたデザインユニット。メンバー自身が病気や怪我による障壁を経験した当事者であり、建築と介護当事者両方の視点を生かした、住居になじむデザイン性の高い手すり「ALTRAIL(アルトレール)」を開発しています。
介護の準備についてのよくある質問
Q:介護リフォームを考え始めたばかり。誰に、どこに相談すればいいのでしょうか?
A:通常、高齢者介護についてのご相談窓口は、お近くの地域包括支援センターになります。「足元が不安だから家に手すりを付けたい」といった相談も受け付けてくれますし、要支援や要介護認定を受けたい場合も、まずこちらに。地域包括支援センターは、介護サービスを受けるファーストステップです。(村上さん)
Q:親が転びそうで心配。でも、まだ大がかりなリフォームは早い気がして……手すり以外にできることはありますか?
A:帰省したら父や母の足元がおぼつかなくなっていた、でも手すりを付けるほどでもないし……。そんなときは、自宅にある家具を利用できます。例えば、玄関では下駄箱が手すり代わりになりますし、腰の高さほどで重さのある戸棚は便利です。ご両親のスムーズな移動のために、家具を移動させて導線を整えてあげるのもいいですね。
また、照明を明るいものに取り替えるだけでも、十分転倒防止効果があります。室内なら、部屋や廊下、屋外なら人感センサで点灯する照明を、玄関ポーチやガレージの入り口、庭などに設置すれば、夜、暗い足元を照らしてくれます。転倒防止と防犯も兼ねられて、一石二鳥です。(髙木さん)
Q:最近つまずくことが増えてきました。手すりは、どこから付けるのが正解ですか?
A:手すりは、歩行や立ち座りを助ける大切な設備です。転倒によるケガや骨折は防ぎたいもの。そのためにも、まずは手すりの設置を勧めています。段差があったり、立ち座りで体がふらつきやすかったりするところに付けます。階段や、靴を履いたり脱いだりする玄関、立ち座りするトイレ。また寝起きするベッドや、足元が滑りやすい浴室にもあると安心です。
親御さんを観察していて「いつもタオル掛けに手を添えているな」と気づいたら、そこに手すりを付けるのもいいでしょう。(高橋さん)


Q:配偶者の介護が始まりそうです。これからの暮らしを見据えて、住環境はどう整えればいい?
A:歩ける範囲が限られてきたら、暮らしの動線は可能な限りコンパクトにしましょう。ポイントは「寝る・食べる・トイレ」の3つを、できるだけ近くにまとめること。
本格的なリフォームが難しければ、トイレの近くの部屋を居間に、あるいは寝室にアレンジするのも一つの方法です。ベッド近くにポータブルトイレを置く方法もあります。今は水を使わず匂いも漏れにくい商品も開発されています。
その上で、ご本人にとって快適な環境を整えることが大切です。(髙木さん)

今、介護が必要な方のリフォームについてのよくある質問
Q:認知症のある親と同居することに。住まいを整えるうえで、気をつけたほうがいい点は?
A:病状の程度にもよりますが、認知症と診断された方と同居するときは注意が必要です。例えば親御さんの家に同居後によかれと思って段差をスロープにリフォームした場合、かえってつまづき、ケガをすることがあります。これは室内での細かな動作を、体が覚えてしまっているからです。簡単なリフォームひとつでも、混乱を生じさせる場合があります。
環境が変わるという意味では、引っ越しもご本人の混乱を招く恐れがあります。見守りが必要な場合は、ベッドから起き上がったり下のマットに足を置いたりすると、センサーが反応してご家族に通知される器具も開発されています。便利な道具を導入するのも一つの解決方法です。
いずれにしてもケアマネージャーなどの専門家と、よく相談してみてくださいね。(村上さん)
Q:家の中でも車椅子を使いたいと考えています。リフォームはどこから手を付けるべき?
A:まず取り組みたいのは、住まいの中の「段差」をなくすことです。特に昔の日本家屋は、部屋ごとに細かな段差が多いため、スロープを設けるなどして、できるだけフラットな床に整えます。


次に、移動のしやすさを考えましょう。玄関からの出入りが難しい場合は、庭に面した吐き出し口(床まである大きな窓)を、出入り口として活用する方法もあります。室内の建具は、開き戸よりも折れ戸や引き戸のほうが、車椅子での移動がスムーズです。
よく使う部屋が畳の場合は、フローリングに張り替えることで走行性が向上します。トイレが和式であれば、洋式へのリフォームも検討しましょう。段差・動線・床・設備の順に整えていくことで、無理のない車椅子対応の住まいになります。(村上さん)


Q:介護される側のストレスを減らすには、住まいの中でどんな配慮ができますか?
A:介護が始まると、プライベートな時間や空間が減ります。例えばそれまで一人で着替えができていた人が、介助の目を気にしながら身支度をするようになると、思った以上にストレスを感じることがあります。
そのようなときは、間仕切りなどでちょっとした目隠しを作るだけでもずいぶん気持ちが楽になります。照明をやわらかい光に変えるなど、工夫してもいいでしょう。プライバシーを守ってあげるだけで、ライフスタイルの異なる家族との暮らしも快適になるものです。(高橋さん)
介護の準備として 新しい視点の『デザイン手すり』
介護の現場で、最初に検討される設備のひとつ「手すり」。転倒を防ぎ、歩行や立ち座りを支えるために、介護が始まるタイミングで設置することが一般的ですが、「まだ必要ではない気がする」「家の雰囲気が施設のようになりそう」と、導入をためらう声も少なくありません。
そんな迷いの時におすすめしたいのが、TSUGI DESIGNが手がけるデザイン手すり「ALTRAIL(アルトレール)」です。“歩くときに、自然に体を支えられる、美しい手すり”をコンセプトに作られています。近年では、介護が始まる前の“準備”の視点から手すりを取り入れるという考え方も広がってきています。
インテリアになじむ、ALTRAILの手すり
ALTRAILは、単なる手すりではなく、壁面を自由にレイアウトできる「支持レール」という新しいコンセプトのプロダクトです。手すりですが、“介護のため”と構えなくても使える存在です。最大の特徴は、壁に取り付ける「レール」、見た目を整える「カバー」、そして全体を固定する「クリップ」という3つのパーツに分かれたシンプルな仕組みにあります。
▲ パーツ単品ではレールが2,530円(税込)から、カバーが1,210円(税込)から
まずアルミ製のレールを壁にしっかり固定し、その上からお好みの色のカバーをパチンとはめ込むだけで完成します。このカバーは、お部屋の雰囲気に合わせて好きなカラーが選べるようになっているので、これまでの「いかにも介護用品」といった手すりのイメージをガラリと変えてくれます。後からフックを付けてカバンを掛けたり、小さな棚を足したりと、暮らしの変化に合わせて自由にカスタマイズできるのもアルトレイルならではの魅力。一見すると、手すりとは気づかないほど、インテリアに自然になじみます。
▲ ブラケット(支持金具)を追加すれば壁掛けテレビの設置レールとしても活用でき、2本並べると棚としても活用できる。
▲ 配線コードはレール内部に収まり、空間はすっきり。
「よこ手すり」と「たて手すり」のセットも
「どこに何を付ければいいか迷ってしまう」という方のために、便利なセット販売も用意されています。廊下や階段などで長くつなげて使う「よこ手すりセット(21,560円〜)」や、玄関などでの立ち上がりを支える「たて手すりセット(14,080円〜)」があり、使う場所に合わせてスムーズに選べるのも嬉しいポイントです。
▲ (写真左)「よこ手すりセット」手すりは壁の下地に直接取り付ける構造で、耐荷重は最大120kg。補強板による圧迫感もなく、しっかりと身体を預けられる。※設置条件による。(写真右)「たて手すりセット」ブラケット(支持金具)を取り付ければ、普段は棚受けとして本や小物を置いたり、照明も設えられます。
人の身体も、暮らし方も、年月とともに変化していくもの。だからこそ、「今は使わなくても、いずれ支えになる」。そんな“未来の安心”を、さりげなく住まいに仕込んでおけるのがALTRAILの魅力です。
介護が必要になってから慌てて住まいを変えるのではなく、元気なうちから、“転ばない”“無理をしない”環境を整えておくことも、ひとつの準備です。
▲ 施工事例
何かあってからではなく、高齢者のリフォームは今、できることを
「住み慣れた我が家で、できるだけ長く暮らしたい」。それは誰にとっても、ごく自然な願いです。大規模な介護リフォームが難しい場合でも、目隠しを設けたり、家具の配置を見直したりするだけでも、プライバシーが守られ、世代やライフスタイルの異なる家族との暮らしは、ぐっと過ごしやすくなります。
高齢者の暮らしにおいて大切なのは、「何かあってから対応する」のではなく、日々の様子をさりげなく観察すること。歩き方や動線、無意識に手を添えている場所に気づくことでも、その人に合った住まいの工夫が見えてきます。
介護は、ある日突然やってきます。だからこそ、体が元気なうちから「今できること」に目を向けておくことが、これからの安心につながります。将来のための備えを、暮らしを楽しみながら始めてみてはいかがでしょうか。
取材協力
株式会社神戸レンタル
兵庫県西宮市に本社を構え、阪神間(神戸〜大阪)を中心に福祉用具のレンタル・販売、介護保険を活用した住宅改修を手がける企業。介護保険の申請や相談にも対応し、利用者と家族が安心して在宅生活を続けられる環境づくりを、専門知識と現場経験で支えている。
取材協力
TSUGI DESIGN合同会社
病気や怪我をきっかけに、障がいや障壁を経験した建築設計事務所出身の2人により設立されたデザインユニット。当事者として感じた「壁」や「境界」をどう乗り越えるか?を考え、建築設計や都市計画の知識と経験を活かしながら、プロダクトや空間など幅広い分野を横断するデザインソリューションを提供。
ライター
ライター
國松 珠実
愛媛県生まれ。兵庫県在住。航空会社のグループ会社社員として主にコールセンター業務に従事したのち、大学院研究室事務を経てライター活動を開始。インタビュー取材を軸に、ビジネスや旅行、町ネタ、音楽に関することなど幅広いテーマでWEBメディアを中心に執筆している。



