整理収納

公開日2024.09.11

片づけのプロも悩んだ『実家の片づけ問題』。始めるために必要だったもの

「実家の片付け、どうしてる?」
友人やお客様とよく話題にあがる、「実家の片付け問題」。いつかはやらないと思いながらなかなか前に進まないのは整理収納アドバイザーをしている私も同じでした。ですが、あることをきっかけに前に進むことに。そのエピソードをお伝えします。

整理収納アドバイザー

長谷 由美子

なかなか始められない、実家の片づけ

いつかは向き合わないといけないと思っていても、色んな事情や感情があり、実家の片づけがなかなか始められない、前に進まないという方は多いのではないでしょうか。

・実家が遠方で気軽に行けない
・ご両親がモノを捨てることを嫌がっている
・ご両親や兄弟との関係があまりうまくいっていない

理由は本当にそれぞれだと思います。
徒歩圏内にある私の実家は一軒家。夫婦二人で住むには広いくらいの家にはたくさんのモノがあります。特に1階のLDKはいつも散らかっていて、母親はいつも探し物をしているように見えます。父親は自分の半径1メートル以内に使っているモノを並べているのでテーブルの上は溢れかえっています。

「そろそろ整理したら楽になるのに…」と心配しても、本人(両親)がその気にならないと始められません。整理は「目的がないと出来ない」と講座でも伝えています。強行突破で片付けたとしても喜んでもらえなかったり、リバウンドしたりと決して良いことがないのです。

私は両親がその気になるタイミングをずっと待っていました。

実家の片づけに必要だった2つのきっかけ

私が実家の整理を進められたのには、2つのきっかけがありました。

1:母親のライフスタイルの変化

一つは、腰を悪くしたことで階段の昇り降りが難しくなった母から、初めて「一緒に片付けて」と母から声がかかったことでした。
「1階で日常生活をしたいので、1階和室の押し入れを整理して2階にある衣類を収納したい」と言うので行ってみると、1階の和室の押し入れには布団がたくさん入っていました。2階の納戸で圧縮されていた布団も全て出して整理をしたら、驚くことに掛け敷き合わせて20枚ほどの布団が出てきて、これには母もビックリ!笑

孫たちも大きくなり昔に比べると今では泊まる人数も減ったので、母と必要な枚数を考え、汚れているモノや古いモノはすべて手放すことにしました。布団は圧縮すると枚数が分からなくなり、出し入れも面倒になるので圧縮せずに納戸で保管することに。

空っぽになった押し入れに衣装ケースを入れ、両親の衣類を収納してラベリングをすると、使いやすくなったようで喜んでいました。この時から、整理のやり方が分かった両親が自分達でも楽しみながら整理をするようになりました。

2:30年振りの両親との同居生活

もう一つのきっかけが、昨年の夏、我が家をリノベーションするにあたり、30年振りに私が実家に居候したことです。
1カ月間、使っていなかった書斎を整理して使わせてもらったのですが、時が止まったかのように懐かしいモノがたくさん出てきました。思いがけず、両親と長い時間を一緒に過ごすことで「モノに対する思い出話」をたくさん聴けて、そのことも整理を加速させることにつながったと今では思います。

片づけを楽しむためには、「会話をする」「思い出話を聞く」こと

「物が多過ぎるからどうにかしなよ!」
「古いし、捨てたら?」
と親には思ったことをそのまま伝えてそうになりますよね。

ですが、そこは言い回しを変えて、「これはたくさんあるけど集めているの?」や、「だいぶ古くなってるけど、大切にしているものなの?」など、モノに対する思い出話を聴くことにしました。

▲ 40年前に弟が紙粘土で作った「愛犬タロ」は、私にとっても宝物。

どんなモノにも「思い出話」があります。
・母の日にプレゼントしてもらって嬉しかったから
・お父さんが最初に買ってくれたから大事にしまっている
・お友達とお揃いで買った好きなイラストだから
・亡くなった姉が大切にしていたから見ると思い出す
・孫から貰った旅行のお土産だから捨てられない

たくさんの両親の思い出話を聴きながら、私も子供の頃など色々と思い出すことができ、それとともに実家は「思い出と優しさ」でモノが溢れているのだと気づくこともできました。

▲ 若い頃の父親にそっくりの貯金箱。家族で大笑いした思い出も。

両親も聴いてもらうことで思いを消化できたようで、「でももう使ってないからいいかな」と手放せるモノもたくさん出てきて、

・なぜ持っているか分からない
・思い出もないし、使ってもいない

というようなモノはこの時すぐに手放す対象になりました。

整理をする時は「会話する」「話を聴く」って本当に大事です。
私も聴けてよかったと思うことがたくさんありました。

モノが多い実家でも、それを両親の優しさだと思って見てみると、見える景色がまた違って見えるかもしれません。

両親が整理しやすかったモノ。モノの整理は、これからはじめよう

今回の片づけで、両親が意外にも整理しやすかった、手放しやすかったモノがあります。

1:衣類

昔から家事の中心は母だったため、父は下着やパジャマ以外の自分の服がどこにしまってあるかは把握できていない状態。「お父さんももっとオシャレしなよ」などとワイワイ話しながら、全てを出して一緒に整理をしたら、何年も着ていない衣類がたくさん出てきました。衣類は両親の「もう着ないからいらない」のジャッジは早かったように思います。その理由としては以下のようなことがあります。

・ライフスタイルやコミュニティが変わった
(やめた習い事のものはいらない、ラジオ体操の服はおしゃれしたい)
・行く場所が変わった
(旅行は好きだが寒いところには行かないから厚手のダウンコートは不要)
・体型や似合う服が変わった
(2人とも痩せたので太っていた時の服はもういらない、暗い色の服は老けて見えるからいらない)

2:靴

次に靴などの履物。どんな方でも靴の整理はしやすいと思います。

・履きやすい
・汚れていない
・デザインが好き

など基準を決め、使っていて好きなモノだけにしていくと下駄箱がスッキリして、分かりやすくなります。私の父は足のサイズが大きく、整理すると履きたい靴がほとんどなくなり、買い足したいモノの見える化もできました。

衣類や靴は、両親も手放しやすいモノです。整理をするならこれらからはじめて、「買い足したほうがいいもの」を一緒に見つけてあげると楽しみながら整理ができると思います。

実家の片づけ問題は、まずはきっかけづくりから

▲ 実家のダイニングと父親

ずっと気になっていた「実家の片づけ」。前に進めるためにはきっかけが必要です。私の場合は、きっかけに母の病気もありましたが、自分たちからきっかけをつくることも必要です。

まずは会話をする時間を少し作ってみませんか?その会話がきっかけにつながるかもしれません。

また、実家のモノの整理は長期的に考えることも必要です。
実家の片づけを始めてから2年が経ちますが、両親はゆっくりマイペースなのでまだ先は長いようです。今でも時々整理に付き合っています。母親もすっかり元気なり、モノを通して思い出話が出来ることも楽しみになってお互いに心の整理にもなっています。

また今後も、実家の片づけでの気づきや体験談をお伝えしていきますね。

アドバイザー

整理収納アドバイザー

長谷 由美子

延べ7,000件以上の相談に応えてきた知識や経験から、苦手なお片付けをも好きにさせてしまう人間力と提案力が定評。

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