公開日2026.02.19
不動産のプロに聞く、間取りを見るポイントとは?一人暮らしの賃貸編
「駅から徒歩○分以内」「バストイレ別」「○平米以上」……。自分の転居、子どもの1人暮らし。スマホで条件を絞り込みながら、理想の部屋がわからず、ため息をついていませんか?
初めての一人暮らしや、今の住まいにどこか物足りなさを感じている時、私たちはつい「目に見えるスペック」ばかりを追いかけてしまいがちです。しかし、住まいの満足度を左右するのは、実は広さや築年数ではなく、その間取りが「住む人の生活スタイルに合っているか」という一点に尽きます。
今回は、14回もの引っ越しを経験し、現在は人と不動産株式会社の代表取締役として、数々のユニークな物件を手掛ける小上馬大作(こじょうまだいさく)さんにお話を伺いました。プロの視点から紐解く、後悔しない間取りの選び方をアドバイスします。
「人」を中心に不動産を考える。プロが教える、一人暮らしの質を高める思考法
大阪を拠点に「人と不動産株式会社」を営む小上馬さん。「“人”を中心に不動産を考える」を掲げる同社は、単なる物件紹介にとどまらず、住み手の声を反映した「自分好み賃貸」のプロデュースや、空き家活用、地域活性化まで幅広く手掛ける住まいの目利き集団です。
そんな小上馬さん自身、実は圧倒的な「引っ越し経験者」。大学時代に最初の一人暮らしをスタートさせてから、これまでに合計で14回もの住み替えを経験してきました。
「20代の頃から一人暮らし、二人暮らし、そして結婚、出産とライフステージが変わるたびに軽やかに住まいを変えてきました。だからこそ断言できるのは、一人暮らしの部屋こそ、広さという箱のスペックよりも、自分の『ライフスタイル』をどう反映させるか が重要だということです」
小上馬さんが提唱する、一人暮らしの質を高める思考法は3つです。
【1】自分が最も大切にしたいスペースを確保する
- 「バストイレ別」などの条件に縛られすぎず、自分が家で何に一番時間を使うのか(料理、仕事、睡眠など)を明確に。一点豪華主義で、自分が最も大切にしたいスペースを確保することが満足度につながります。
【2】「とりあえず」で選ばない。一人の時間が充実できる環境を選ぶ
- 「寝に帰るだけだから」と妥協せず、一人の時間が充実する環境を選ぶこと。自分の価値観で選んだ納得感のある部屋に住むことは、仕事や学業の質にも直結します。
【3】引っ越しを“自分をアップデートする機会”と捉える
- 一人暮らしは、持ち物が自分のキャパシティを超えやすい時期。定期的に住み替えることは、不要なものを削ぎ落とし、その時々の自分に最適な暮らしにアップデートする絶好のチャンスになります。
「『狭いから何もできない』と諦めるのではなく、今の自分に何が必要かを考える。一人暮らしのワンルームは、自分だけの生活をクリエイトする最高の実験場なんです」
【物件事例】外した条件の先にある、「暮らしやすさ」の正体
お部屋探しで多くの人が条件から外してしまう「3点ユニットバス」や「和室」。
しかし、小上馬さんは「視点を変えれば、一人暮らしにとってこれほど合理的な選択肢はない」と言います。
一言で水回りと言っても、トイレ・洗面・浴槽が同室の「3点ユニット」もあれば、トイレと洗面は一緒だが浴室は独立している「アメリカンセパレート」というスタイルもあります。
実際に小上馬さんが手掛けた2つの物件を例に、プロがどこに注目して「暮らしの質」を上げているのかを紐解いていきましょう。
物件事例【1】「3点ユニット」と「和室」のポテンシャルを活かした
1980年2月築の約30平米の物件。奥の部屋はもともと和室で、床のみクッションフロアに改修済み。最大の特徴は「水回りをコンパクトにまとめ、その分居室が最大限に広くなっていること」です。
1:和室の「長押(なげし)」は、最強の乾燥スペースに
和室の壁にある「長押(なげし)」は、壁面をぐるりと囲む化粧部材のこと。壁との間に数センチの奥行きが生まれるので、壁面収納としての機能が見直されています。ここは、ハンガーを掛けるのに最適。さらにエアコンの風が直接当たる位置であれば、冬場でも数時間で洗濯物が乾きます。「どこで室内干しができるか」は、外干し派の方でも必ずチェックすべき項目です。
2:「3点ユニット」ならではの合理性
物件条件から外されがちな3点ユニットは、実はシャワーで一気に丸洗い掃除ができるのが最大のメリット。水回りをコンパクトにまとめることで、8帖+6帖という贅沢な広さの居室を確保できています。
物件事例【2】「アメリカンセパレート」が叶えた、ビッグワンフロア
築45年ほどのリノベーション済み物件、最大の特徴は、アメリカンセパレートを採用し、仕切りをなくすことで、約30平米の開放感を生み出している点です。
「アメリカンセパレート」という選択
トイレと洗面をあえてドアで仕切らない設計です。浴室(お風呂)は独立させつつ、洗面スペースを広く取ることで、窮屈さを感じさせないゆとりが生まれます。
入居者からは「ホテルのようで気分が上がる」「その分メインの居室が広くて使いやすい」という声もあります。
プロが教える、間取りを決める時のチェックリスト
物件を内見する際、間取り図を見る際に意識したい「自分の生活動線に合っているか」という視点とそのポイントをまとめました。
1|暮らしを「ゾーン」にわけて考える
食事・くつろぎ・睡眠 3つのゾーン
- □ 食事(ダイニング)・くつろぎ(リビング)・睡眠(ベッド)のゾーンが緩やかに区切られているか
- □ テレビの位置、テレビからソファの距離、アンテナ端子の配線をチェック(暮らしの配線をシミュレーションしておく)
- □ リモートワークをする場合、仕事スペースとリラックススペースが混ざりすぎていないか
キッチンの作業効率と調理スペース
- □ コンロ・シンク・冷蔵庫の配置がスムーズに動ける距離か
- □ コンロとシンクの配置にまな板を置くスペースはあるか(この数センチの差が自炊の楽しさを分けます)
- □ 電子レンジ、炊飯器、ケトルなどの家電を置くカップボードや棚などの家電の置き場があるか
- □ 料理の匂いが寝具に付きにくい配置か(特にワンルーム)、キッチンとベッドの距離感や換気扇の能力の確認も重要
2|設備と環境
□ コンセントの位置
- 「ここでスマホを充電したい」「ここでデスクワークをしたい」という電気が欲しい場所にコンセントがあるか。特にベッド周りやデスク周りは現地確認が必須。
□ どこの方角に窓があるか
- 朝スッキリと目が覚めるようにしたいなら、朝日が入る東向きの窓がおすすめ。南向きは日当たりが良い反面、夏場はかなり暑くなることもあります。睡眠リズムに合わせた方角選びが、健康的な暮らしを支えます。
避けたい条件・注意点
● 北向きの寝室
- 日当たりが悪く湿気が溜まりやすいため、カビへの注意が必要です。
● 壁が薄い物件
- 生活音のストレスは「暮らしの質」を直撃します。内見時に確認を。
● ロフト付き物件
- はしごの上り下りが面倒で物置になりがち。さらに、夏場は熱気がこもり、冷暖房効率が悪くなるというデメリットも理解した上で選びましょう。
最後に:納得のいくお部屋探しのために
● 北向きの寝室
- 日当たりが悪く湿気が溜まりやすいため、カビへの注意が必要です。
● 壁が薄い物件
- 生活音のストレスは「暮らしの質」を直撃します。内見時に確認を。
● ロフト付き物件
- はしごの上り下りが面倒で物置になりがち。さらに、夏場は熱気がこもり、冷暖房効率が悪くなるというデメリットも理解した上で選びましょう。
小上馬さんのお話の中で印象的だったのは、実験的に暮らしをアレンジしていく柔軟な姿勢。
「風呂・トイレ別がいい」「広い方がいい」といった、一般的な条件を鵜呑みにするのではなく、「自分は1日のうち、どこで一番長く過ごすのか?」を問い直すこと。それが、たとえ20平米のワンルームであっても、自分にとっての「最高の住まい」に変える魔法なのだと感じました。
次回は、さらに一歩踏み込んで、賃貸物件も購入物件も視野に入れた「二人暮らし編」をお届けします。
取材協力
人と不動産株式会社
大阪市天王寺区を拠点に、賃貸・売買仲介からリノベーションのコンサルティング、レンタルスペース(Uemachi Sanc)運営まで幅広く展開。「自分好み賃貸」プロジェクトなど、住み手の個性を活かす物件提案を得意としています。空室対策や不動産活用にお困りのオーナー様からの相談も受け付けています。





