公開日2026.03.04
「災害に強い家」を建てる|停電・断水時の備えとチェックポイント
大地震や豪雨などの災害はいつ襲ってくるかわかりません。これから家を建てるなら、「家そのもの」を自然災害に備える必要があります。また、建物の耐久性だけなく、「在宅避難」を前提とした停電・断水時に備えることも防災につながります。
そこで、これから建てる家の地盤選びから耐久性、停電・断水の備えまでのチェックポイントを紹介します。
予期せぬ自然災害…、これから建てる家はどう備える?
「災害に強い家」は災害が起こる前の備えに加え、災害が起こった後の在宅避難や停電、断水など災害後のライフラインも視野にいれておくことが大切です。
どのように備えるか、そのチェックポイントを見ていきましょう。
【1】防災は「地盤」からはじまる

土地を購入して家を建てる方は、土地選びの際にはまずは地盤に注目してください。自然災害の被害に遭わない家にするためには、「地盤の固さ」が重要になります。
地盤が緩いと何が起きる?
家の地盤が緩いと地震の揺れを増幅してしまいます。また、池や沼だった場所を埋め立てた土地、河川に近い土地などは水分をたくさん含んでいるために、大きな地震が発生すると液状化してしまう可能性もあります。
液状化とは、地盤が強い衝撃により、今まで互いに接して支えあっていた土の粒子がバラバラになり、地盤全体がドロドロの状態になる現象のことです。この液状化が発生すると、地盤が柔らかくなるため、その上に立っていた建物が傾いたり、地面全体が低い方へ流れるといった現象が発生します。地盤が液状化してしまうと被害は地震後の生活にも大きく影響し、復旧までの期間は長期に及ぶことになります。
地盤の調べ方

地盤によるリスクを防ぐためには、土地の購入前に過去にどんな土地だったのか、「水害の危険性」を知ることが重要です。
不動産会社や地元の方に聞くのもいいですし、もっと詳しく知りたい方は図書館などで古い住宅地図を調べるのもいいでしょう。しかし過去に池や沼であっても、すでに整地された分譲地などでは地盤改良をして強固になっている場合もあります。
また、ハザードマップで災害の危険性がある土地かどうかもわかります。ハザードマップとは自治体が作成しているもので、地震による津波、洪水、土砂被害などの可能性がある場所を区分けしたものです。危険性が高い土地は避けた方が無難でしょう。
土地を購入した後に地盤調査をして緩い土地だと判明した場合は、地盤改良や地盤強化をする必要もあります。費用はかかりますが、安心・安全に暮らすために“未来への投資”と考えましょう。
チェックポイント
- ✓ 過去にどんな土地だったかを確認
- ✓ ハザードマップを確認
- ✓ 緩い土地の場合、地盤調査の実施
【2】建物の倒壊は「耐震等級3」を目指すと安心
災害に強い家を考えるうえで欠かせないのが建物の「耐震性」です。
建物の耐震性の高さは構造によって変わります。一般的に、木造よりも鉄骨造や鉄筋コンクリート造の方が耐震性は高いといわれます。しかし、木造住宅が地震に弱いというわけではありません。
木造住宅は、震度5強の地震でもほとんど損傷なく、震度6強~7でも倒壊しないように建築することが現在の「建築基準法」で定められています。つまり、基準を満たしていない住宅は法律違反になるということです。
ここで知っておきたいのが「耐震等級」です。建築基準法は義務ですが、耐震等級は任意の評価制度です。国土交通大臣から指定された第三者機関「登録住宅性能評価機関」が評価・認定します。耐震等級は1から3まであり、3が最高等級です。
|
耐震等級 |
等級1 |
等級2 |
等級3 |
|---|---|---|---|
|
耐震性能 |
震度6強〜7で倒壊しない |
等級1の1.25倍 |
等級1の1.5倍 |
|
建物の水準 |
一般住宅の水準 |
避難場所の水準 |
災害復興の拠点の水準 |
建築基準法と同等なのが耐震等級1、その1.25倍の耐震力があるのが耐震等級2、耐震等級1の1.5倍の耐震力があるのが耐震等級3です。耐震等級3は震度6強~7の大地震でも倒壊しない設計で、消防署や警察署など災害復興の拠点となる建物に求められる水準です。耐震等級3の家を建築すると、災害復興の拠点として求められる水準になり、大災害となる巨大地震の際にも備えられるというわけです。可能であれば、「耐震等級3の取得」を目指すことをおすすめします。
耐震等級3の家を建築する際にはそれなりのコストがかかりますが、地震保険料が50%割引になるというメリットもあります。地震保険料は耐震等級によって割引が受けられ、その割引率は、耐震等級3=50%割引、耐震等級2=30%割引、耐震等級1=10%割引と、耐震等級が高いほど地震に強く割引率が高くなります。
耐震等級の「取得」と「相当」の表記に注意
耐震等級について注意したいのが、「耐震等級3を取得」と「耐震等級3相当」という表記の違いです。
耐震等級3を取得:個別に正式に認定されたもの。取得には細かい書類提出が必要となり手数料と時間が必要でコストがかかりますが、地震保険の割引があります。
耐震等級3相当:計算上は耐震等級3ですが、個別に認定されていない家。コストは抑えられますが、地震保険の割引は適用されないかもしれません。
ちなみに、家の間取りでコの字型の家や1階ガレージの家は耐震性が低いといわれていますが、構造計算(許容応力度計算)がされた設計で耐震性が保証されていれば問題はありません。さらに耐震等級3を取得すると安心感が高まります。
チェックポイント
- ✓ 木造より、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の方が耐震性が高い
- ✓ 木造でも耐震等級3レベルは、震度6強~7に耐えられる
- ✓ 耐震等級の「取得」と「相当」の表記に注意
【3】災害に強い外壁素材と窓の導入検討を
軽量で建物の負担が少ないため耐震性が高い「ガルバニウム鋼板」、吸水率が低く水害に強い「タイル」など外壁にはそれぞれの特徴があります。また、サイディングの中でも耐火性が高いものや防水性にすぐれているものなどメリットがあるものもたくさんあります。
どの外壁材を選ぶとしても、必ず忘れてはいけないのは「メンテナンス」。家を建てた時はしっかりガードされていてもキズが付いた箇所を放っておいたり、コーキング(シーリング)材が劣化しているのにメンテナンスを怠ると、いざという時に思った以上の強さを発揮してくれません。
外壁材を選ぶ重要なポイントは?耐久性と費用を専門家が解説!
「防火地域」「準防火地域」に指定されている地域の住宅では、建物で延焼のおそれのある開口部の窓は「防火窓」を備える必要があります。災害に備えるためには、地域が指定されていなくても、網入りガラスなどの耐熱・耐久性の高いガラスなどを選んでおくと安心です。
また、あまり災害が発生しない地域や温暖な地域では「シャッター」を付けない家も見られます。ですが、昨今は通説を覆す地域で豪雨や豪雪、地震などが起きています。災害が起きない地域だから大丈夫、強化ガラスなので大丈夫と思っていても、いざ激しい豪雨や台風の際はシャッターがないと恐怖です。防災を考えるなら、掃き出し窓、腰高窓にはできるだけシャッターを付けることをおすすめします。
新築住宅のシャッターは必要?つけてよかった派、いらなかった派の意見
チェックポイント
- ✓ 防火・防水・耐震性が高い外壁材を選ぶ
- ✓ 外壁のメンテナンスは忘れずに
- ✓ 窓のガラスは、防火ガラス
- ✓ 掃き出し窓、腰高窓にはシャッターを付ける
【4】災害後、在宅避難のライフラインを確保(停電・断水・備蓄)
災害後の避難場所として、自宅の安全が確認された場合は「在宅避難」として自宅で過ごすことが注目されています。在宅避難ができると、避難所の共同生活でのストレスを感じることがなく、ペットと一緒に過ごせるという大きなメリットがあります。
在宅避難をするためには必要な備えが3つあります。
1.停電の備え:太陽光発電と蓄電池システム
太陽光発電と蓄電池システムがあれば、停電時でもエアコンや冷蔵庫、照明、スマートフォンの充電などにも使えます。災害時だけでなく太陽光などの自家発電システムは家計にも環境にもうれしいことばかり。建築時の初期コストはかかりますが、長い目で見ると導入する価値はあります。
2.断水の備え:エコキュートや雨水タンク
オール電化住宅で導入されることが多い、電力で空気の熱を利用してお湯を沸かす省エネ給湯機「エコキュート」、は、災害時に備えて貯湯タンクに常に水を貯めておく仕組みになっているので断水時にタンク内の水を生活用水として使えます。さらに、雨どいを通じて屋根の雨水をタンクに集める「雨水タンク」があれば、トイレなどの用途に活用できます。
3.備蓄と収納計画
食料・飲料水は最低3日分、できれば1週間分の備蓄が推奨されています。簡易トイレ、カセットコンロ、ペットフードなども忘れてはいけません。大切なのは、「備えること」と同時に「取り出しやすく収納すること」。家づくりの段階で防災収納スペースをあわせて計画しておきましょう。
いざというときの行動がスムーズになります。
『非常食』は何日分必要?防災士がおすすめする食品と備蓄のコツ
自宅を安全な避難所にする!日常の延長で考える防災対策とは?
チェックポイント
- ✓ 停電時の備え:太陽光発電・蓄電池
- ✓ 断水時に備え:エコキュート、雨水タンクなど
- ✓ 備蓄と収納計画
【5】災害目線では見落とされがちな「断熱性」が命を守る
災害が起こった際に意外と重要になるのが「断熱性」です。というのも、真夏や真冬に停電が起きた場合、断熱性の低い家では、室内温度が急激に外気温へ近づきます。その結果、熱中症や低体温症のリスクが高まる可能性があります。断熱性が高い家は、外気の影響を受けにくく、停電時でも室温の変化が緩やかです。
断熱性の指標となるのは「断熱等性能等級」です。地球温暖化防止のための脱炭素社会に向けて家の断熱性の向上は国も力を入れており、2025年現在、新築する家には「断熱等性能等級4」の次世代省エネ基準が義務化されています。2030年には等級5が最低基準となり、さらに等級6、等級7(最高レベル)と続きます。
「断熱等性能等級4」の家は、外気温が0度の夜に、室内温度20度の部屋でエアコンを消して就寝し、翌朝の室内温度は8度になるぐらいの性能です。断熱等性能等級6、7になると、室内の温度が朝でも13~15度を下回ることがなくなります。
断熱等性能等級が上がるほど建築コストは増しますが、生涯の光熱費をトータルで考えればその費用対効果は高くなり、環境配慮にもつながります。定められた基準をクリアする省エネ住宅の場合、国や地域からの補助金がもらえる場合があります。
断熱性が高い家を建てるメリットは、以下の記事を参考に
新築でこだわるなら断熱性!冷暖房効率が高い家の5つのメリットとポイント
チェックポイント
- ✓ 断熱等性能等級4以上は義務化
- ✓ 在宅避難時に安心な断熱性が高い家を目指す
まとめ
家を買う・建てるは、一生に一度の大きな決断です。
デザインや立地も大切ですが、「もしもの日」に家族を守れるかどうかも、同じくらい重要です。
とくに地盤は建築後には変えられません。これから購入予定の方は、ぜひ“固い地盤”という条件を追加してください。
ライター
住宅ライター / プロインタビュアー
大内 夏実
株式会社リクルートで情報誌のイロハを学び、独立。不動産・住宅系ライターとして経験を積む。大手ハウスメーカーから小さな街の工務店までさまざまな建築会社の注文住宅施工例やモデルハウスなどを取材。実際に家を購入した方、建てた方のインタビューも多数実施。





