スライドレールを使った引き出しの作り方と取り付け方のポイント
前回はスライドレールの構造とローラーとベアリングタイプの2類の違い、購入時の選び方についてご紹介しました。今回は、実際にベアリングタイプのスライドレールを使った引き出しを作り方と取り付け方を詳しく解説します。少し難しそうなイメージのスライドレールですが、ポイントを押さえればDIY初心者の方も取り付けできますよ。
使用するスライドレールと準備
今回は、両端が壁になっているキッチンのレンジ下の空間に引き出しを作ります。新居に引越しをしましたが、以前の家で使っていたすき間用の収納ラックは取り出しづらいし、料理中に扱いづらい。調味料のパッケージも丸見えなので、このスペースにキッチン周りの物を収納できる使い勝手の良い4段の引き出し収納を作ります。
使用するスライドレール
スガツネ工業の「LAMP」シリーズ、3段引きのベアリングタイプスライドレール”4518”を採用しました。
このスライドレールを選んだ理由
- ・インナーレールを取り外せる上、左右兼用なので取り付け作業時に迷わなくて済む
- ・耐荷重が最大45kgまで耐えられるタイプがあること。一番下の引き出しに調味料(大)など重い物をたくさん入れることを想定
ベアリングタイプと構造については以下の記事で参考に。
【スライドレール】ローラーとベアリングの違いと選び方のポイント
引き出しの設計図を作る
まずは以下の順にサイズを計測して、設計図を作ります。
1.引き出しを設置する場所の内寸
2.引き出し前板のサイズ
3.引き出し内箱のサイズと注意点
1.引き出しを設置する場所の内寸
引き出しを設置する場所の内寸を測ります。
2.引き出し前板のサイズ
設置する場所の内寸がわかったら、次は前板のサイズです。前板とは、引き出しの内箱の前面に取り付ける板のことです。前板は内箱を組み立ててから取り付けます。その前板の高さは、引き出しの数や引き出しの開閉方法によって異なります。
前板の高さは、何を収納するか、何段にするかを決めてから計算します。
- ・引き出しは4つ。一番下の段のみ深さのある引き出しで、残り3段は同じサイズ
- ・引き出しに取っ手は付けず、引き出しの隙間に指を引っ掛けて引き出すタイプ
上記の前提条件をふまえ、指を引っ掛けるための隙間を20mm開けるとすると、以下のようなサイズになります。
このように前から見た設計図を作ると、わかりやすく整理できます。
もし、プッシュオープンタイプのスライドレールをつける場合や、取っ手を付けて開け閉めする場合は、前板同士の隙間は2〜3mm開けて、引き出しの段数や前板の高さを計算します。
前板の高さが決まったら、次は内箱のサイズを決めます。
3.内箱のサイズ
設置する場所の横幅は744mm、奥行きは450mmです。そのサイズをベースに内箱の横幅と奥行きのサイズを決めますが、ここで以下2点に注意しましょう。
内箱サイズの注意点
・スライドレールの取り付けしろ(厚み)合計26mmを左右からマイナスする
・内箱の前面につける前板の厚み(今回は15mm)を奥行きからマイナスする
今回使用するスライドレールの厚みは12.7mmで、ベアリングタイプのスライドレールでは標準的な厚みです。わかりやすく13mmとして計算します。設置する場所の内寸から取り付けしろ分、26mmをマイナスします。
内箱の横幅は719mm、奥行きは400mmとなりました。
次に内箱の高さを決めますが、高さは中に入れる物がこぼれない程度でOKです。なるべく低い方が引き出しの軽量化になりますし、材料の節約にもなります。
- 1〜3段目の高さは100mm、4段目は150mm、4段目は前板との接着面を増やすため、前板と接着する面のみ250mmにしました。
このように設計図を作ると、引き出しの内箱のサイズも整理できます。失敗しないためにも、設計図は描くようにしましょう。
引き出しのイメージやサイズが決まったら、いよいよDIYの作業に入ります。
引き出し作りとレールの取り付け方手順
1.引き出しの内箱を作る
内箱のサイズをもとに、必要な木材をホームセンターで購入し、準備します。
サンドペーパーでやすりがけをします。サンドペーパーの荒さは、#120〜#240程度がおすすめです。内箱の内側にあたる面を丁寧にやすります。内箱の外側にあたる面は、手触りや見た目に影響しないため、ささくれが取れる程度でOKです。
木材にボンドを塗って箱を組み立てていきます。はみ出したボンドは拭き取っておきます。
ボンドがある程度乾いたら、ビスで留めていきます。下穴が開けてから、ビスを打ちます。直角に留めづらい場合は、クランプを使います。
【DIY】直角固定がラクになる!コーナークランプの使い方
内箱の前面に取り付ける前板を塗装します。
まず、塗料の密着度を高めるために、シーラーを塗ります。
シーラーが乾いたことを確認して、塗装していきます。今回は、キッチンの壁と床の色に合わせてグレーにしました。
これで内箱作りは完了です。
次はいよいよ、スライドレールの取り付けです。
2.アウターレールを取り付ける位置に印をつける
アウターレールと取り付ける「高さ」に印をつけます。上の図の赤線のところにスライドレールが取り付けられるよう計測し印をつけます。
水平器を使って水平かどうか確認しながら、取り付ける位置にガイドラインを引きます。
ここでポイント
スライドレールは、アウターレールもインナーレールも、レールの中心線にビスを打つ仕様になっています。そのため、ガイドラインはスライドレールの中心に引きます。
次にアウターレールの「前面」に印をつけます。
奥行きを確認し、直角定規と水平器を使いながら、前板を取り付ける位置に印をつけます。
ここでポイント
アウターレールの先端は、内箱の前端に合うように取り付けるので、前板の厚みを引いたところに印をつけましょう。(今回は15mmマイナス)
3.アウターレールの取り付け方
アウターレールの中心に先ほど引いたガイドラインを当て、ビスで仮止めをします。
ここでポイント
最後まで留め切らずに、ビスは仮止めの状態でマスキングテープを剥がします。こうすることで、中心線を確認しながらビス留めすることができます。他の段と、反対側も同様に取り付けていきます。
4.インナーレールの取り付け方
内箱側面の中心線に印をつけて水平にガイドラインを引きます。
インナーレールを中心線に当てて、ビスで留めていきます。この時、インナーレールは内箱の先端に揃えます。
他の内箱も同様に、左右にレールを取り付けていきます。
すべて取り付けができたらアウターレールにはめ込みます。引き出しとしてはほぼ完成ですが、ここでもうひと踏ん張り!
最後に塗装して乾かしておいた前板を取り付けます。両面テープで仮止めしてから、裏からビス留めをするとしっかり固定できます。
5.完成!
既製品の収納棚を置くよりもしっくり馴染む引き出しが完成しました。スライドレールを使えば、その場所のテイストに合わせたカラーやデザインの引き出しを作ることができます。
カトラリー類も、取り出しやすく便利に。
まとめ
スライドレールを使った引き出し作りはレールの取り付け位置を把握することがポイントです。特に、レールの取り付けしろと厚み、前板の厚みを考慮して正確な位置を決め、丁寧に取り付けること。これができるようになると、どんな場所にもオリジナルな引き出しが作ることができますよ。
スライドレールを使った引き出し、ぜひチャレンジしてみてください。
協力アドバイザー
建築、内装設計デザイン
TO DO 藤田 剛
2008年より設計デザイン事務所主宰
住宅や店舗のデザイン・設計業務を主に、素材や質感、ストーリーを大切にしたデザイン業務を行う。空き家問題にも取り組み、淡路島に移住し築100年の古民家を自ら改装しながら地域交流拠点としての活用を目指す。