らしさのある家

2022.06.08

【田舎暮らし/移住】海外のオーダーも受注。兵庫・三田で見つけた古民家と自転車工房

【田舎暮らし/移住】海外のオーダーも受注。兵庫・三田で見つけた古民家と自転車工房

山間から続く視界の開けた国道沿いを、サイクリストたちが駆け抜けていきます。「ご縁と勢いで移住してしまいました」と話す、唯 陸奥男さん(52歳)・文砂子さん(51歳)。当時5人家族と猫2匹で移住したのは、2017年。自宅の横に併設された工房で、オーダーメイドサイクル製作「自転車工房eco」と自宅の1階でカフェ「古民家茶屋 花乃舎」を運営しています。移住のきっかけや日々の暮らしについて、ざっくばらんにお話しいただきました。

家族の理解を得て、勢いで移住

豊かな自然が残る兵庫県三田市。南エリアは、ニュータウンが広がる都市空間ですが、北エリアは自然の残る昔ながらの田園風景が広がっています。「自転車工房eco」があるのは北エリアに位置する三田市小野。自転車で10〜15分先には、西国三十三所札所0番である「花山院菩提寺」やハイキングコースとしても人気のある「飯盛山」などもあります。

▲ のどかな田園風景が広がる三田市小野。

唯 陸奥男さんは、オーダーメイドサイクル製作を専門で行う職人。2017年に移住。大阪府吹田市から15年間営んでいた自転車工房「自転車工房eco」も共に移転し、自然豊かなこの場所で職住一体の暮らしを家族5人で始めました。

▲ 自宅兼カフェ「古民家茶屋 花乃舎」、右側が工房「自転車工房eco」。
▲ 国道沿いに仲良く並ぶ看板。

「自転車で世界一周をされている坂本進さんという方の、自転車のメンテナンスを請け負っていました。会話の中で、坂本さんが引っ越す予定があるので、愛着のある自宅に住んでみない?と言われたんです。それが現在の家。この話がきっかけで、2016年11月頃に初めてサイクリングを兼ねて、夫婦でこの場所を訪れました。田舎暮らしに興味は持っていましたが、最初は興味本位で訪れましたね(笑)」と陸奥男さん。

▲ (右)唯 陸奥男さん(52歳)・(左)文砂子さん(51歳)

開けた山の風景に、澄んだ空気。近所にある大きな銀杏の木の黄色い葉が美しく、鳥の声が響く静かな環境。数ヶ月後、坂本さんの引越しが本格化したときに、一念発起。移住を決めたそうです。「ちょうどタイミング的には、お店の移転を考えていたところでした。最初訪れた時に、家の離れが工房にできるなというイメージはありました。移住は感覚的なものと、ほぼ勢いです。いつかは田舎暮らしをと思っていましたが、古民家を探していたわけでもなく。まさかこのタイミングだとは想像もしていませんでした」

▲ 「自転車工房eco」の入り口。
▲ 製作した様々な形状の自転車がたくさん置かれている。

陸奥男さんが心を決めた後に行われた家族会議。都会から田舎への移住に、文砂子さんも3人の子どもさんも「いいんじゃない」と快諾。とはいえ、文砂子さんも最初話を聞いたときは驚いたそうです。「昔から田舎暮らしがしたいと時折話していたので、そうかその時が来たかと。ただ次男は高校入学が決まったばかりだったので、通学が予定より時間がかかるようになりました。生活がガラッと変わったにも関わらず、すんなり田舎生活を受け入れてくれた子どもたちには感謝しています」


自然の音に囲まれた、ストレスフリーな暮らし

移住を決めた、築100年相当の古民家。いざ中に入ってみると、虫食いや雨漏り、傾いた床など修繕箇所だらけだったといいます。一番問題だったのは、寒さ。エアコンを設置するための配線工事も、古民家を扱う業者が少なく、手を焼いたそう。

▲ 築100年の古民家。

「自ら床下に潜って床を持ち上げたり、雨漏りを直したりと自分たちである程度修理しましたね。床が傾いていても、扉の立て付けが悪くても、それが古民家の醍醐味。暮らしに困りそうな最低限の部分のみ、応急処置をしています。完璧でなくても大丈夫だと思うようになってから、楽になりましたね。ちゃんと暮らせますよ」

水道・ガス・ネットのインフラ環境は整っていたため、生活に問題はなし。ネットが繋がっているおかげで、特に不自由を感じないとお二人は話します。

▲ 自作のサイクルで、自宅の前の道を走る陸奥男さん。「高校生の時に自転車サークルに入って魅了されてから、自転車に飽きたことがありません」

「私たちは車を所有していないので、大きな荷物や重い荷物が運びにくいという問題は、ネット通販が大活躍。日用品やトイレットペーパー、猫関係の商品、近所のスーパーで買えない商品を注文していますね。都会だと余分なものを買ってしまいがちでしたが、それもなくなりましたね」


仕事の変化とこれから

移住前や移住直後は、仕事の悩みもあったそうです。「最初はこんな田舎に来てしまって、お客さんが離れてしまうのではないか、という不安がよぎったこともあります。逆に、田舎でオーダーメイドサイクル工房をやっている状況を面白がってくれて、以前よりユニークなお客さんが増えた気がします。お客さんとのやり取りや業者さんとの図面データのやり取りもネットでスムーズ。離島や海外からのオーダーがあったりと、以前よりも、エリアが広がった気がします。仕事をする上で、もう距離はあまり関係ないですね」

▲ 工房の様子。溶接やプレスなど、塗装以外の工程は全てここで行っている。
▲ フレームを繋げる鉄の溶接も全て工房で行う。「クーラーがないので、夏は暑くて大変です。夜の方がはかどります」と陸奥男さん。食事以外は、遅いときは23時まで工房にこもって作業していることもあるという。
▲ フレームの「TADA」ロゴが、陸奥男さんが製作したというオリジナルの証し。

文砂子さんが経営する「古民家茶屋 花乃舎」のインテリアイメージは、懐かしさを感じるおばあちゃんち。近所の猟師さんから仕入れた新鮮な鹿肉がいただけるメニューは愛情たっぷり。お店に立ち寄るサイクリストたちの健康が考えられた、バランスの良い自称「お母さん料理」です。サイクリングのついでに、顔見せに来てくれるお客さんと過ごす談話の時間もやりがいの一つだといいます。

▲ 「古民家茶屋 花乃舎」の店内。畳和室は、風通しが良く開放的で落ち着ける空間。時々家族のリビングとして使用することもあるそう。
▲ 縁側はテーブル席。窓から見渡す限りの自然を楽しめる。
▲ 鹿肉のスパイスキーマカレー(¥1,100)で、お腹いっぱい!

現在は、夫婦2人と成人した息子の3人暮らし。朝7時頃に起きて、縁側でゆっくり朝ご飯。それから陸奥男さんは工房で仕事に専念し、文砂子さんは家事と飲食店をこなしながら、地域の貢献活動にも参加しています。夜ご飯は、家族で一緒に取るというライフスタイルなのだそう。都会で感じていた閉塞感やストレスも、移住してからはほぼなくなり、自分らしく過ごせるようになったと文砂子さんはいいます。自然と側にある生活は、人の心を柔らかく解きほぐしてくれるのかもしれません。

▲ 縁側での朝ご飯タイムが、夫婦2人の日課なのだそう。
▲ 陽だまりが大好きな「バジル」7歳

「満ち足りていますね。移住前は趣味として、よく自転車に乗って出かけていましたが、不思議なことに逆に乗らなくなってしまいました(笑)。家の前に出るだけで、いい環境に出会えるので、きっとそれで満足してしまうんですよね」と陸奥男さんは笑います。

▲ サイクルのフレームを生かしたオリジナル家具。

「古民家茶屋 花乃舎」でお客さんを迎えるテーブルや椅子に、陸奥男さんと息子さんが製作した手作り家具もちらほら。「昔から家具も作りたい欲もあったのですが、工房が持てたことでそれも叶いましたね。最近では息子も興味を持ち、手作り家具の受注販売も始めました。今後この場所から、家族経営でのものづくりが発信できたらいいですね」

▲ 始終仲の良さそうな2人に、取材チームもほっこり。

後記

今後は、家族そろってものづくりをやっていきたいと話すお二人。移住した後に大切なことをお聞きしたら、「土地や環境に自分自身から、積極的に馴染んでいこうとすること」と文砂子さんが話されていたのが印象的でした。都会でも田舎でも同じこと。どんな状況でも、受け入れて楽しもうとする心があれば、豊かな暮らしはどこでも実現できるのですね。

取材協力

自転車工房eco

世界に一つだけのオーダーメイドのオリジナルフレームを製作する工房。好みのサイクルフレームを、職人の手で一つ一つ丁寧に手作りしています。

古民家茶屋 花乃舎

サイクリストが集う古民家カフェ。地元の新鮮な鹿肉を使用したメニューは、栄養バランスが考えられた愛情レシピです。

移住先でも、安定したネット環境で快適な暮らしを

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