らしさのある家

公開日2024.12.04

愛犬と暮らす家は、DIYがいい。家づくりは、わんちゃんファースト

奥野美鈴さんご夫婦は、1匹のトイプードルと2匹のビションフリーゼと築60年越えの古民家をフルDIYした自宅で暮らしています。「全てが犬中心の生活」だという生活は、自然体そのもの。
これまで6回の大型DIYを経てこられたという、大のDIY好きの美鈴さん。どのようにDIYを楽しんでこられたか、お話を伺いました。

たまたま見たテレビ番組に背中を押されて、初DIY

▲ 海外に来たかのような、爽やかな色合いの外観

ホワイトと淡いブルーのカラートーンにセンスを感じる外壁。築60年越えの古民家だったとは想像できません。奥野美鈴さんは、「犬服ネットショップ inun(アイヌーン)」を運営されたり、犬のカメラ講座を開催されています。ブロガーとしても活動する彼女のファンも多く、DIYをする時にもファンがお手伝いに来てくれることもあるのだそう。

▲ 玄関もまるでお店のよう!?

元々実家が縫製工場をされていたり、親戚が家具製造メーカーを営んでいたこともあり、現場を見る機会も多かったそう。見て覚えた洋裁の技術は、いつしか美鈴さんのライフワークへ。

「手作りしたものを、着て楽しむまでをコンセプトにした洋裁教室を始めました。作って終わりじゃなくて、その場で実際に着てみるという、達成感を得られることを大切にしていました。洋服を作っていると、生地がどうしても余ってしまうので、それを犬の服とペアルックにしてみたんです。それをSNSで発信したら結構反響があったので、それならやってみようかとはじまったのが、犬服ブランド『inun(アイヌーン)』なんです」。

周りからの要望や相談に答えることで、活動の幅が広がってきたと美鈴さんは話します。

そんな美鈴さんにも初めてのDIYがありました。「20年くらい前でしょうか。NHKの番組で、漆喰を塗ろうというコーナーがあって女性のアナウンサーがやっていたんです。びっくりしましたね。慣れてない人でもこんなふうにできるんだ、やってみたいなと素直に思いました 」。
そのまま自宅のトイレの壁をDIY。白い漆喰を塗るとトイレが明るくなり、家族も喜んでくれた様子を見て、DIYが楽しくなってきたのだと言います。

▲ 奥野美鈴さん

友達や知り合いで集まってつくるDIY

実はこのご自宅は、2度目のフルDIY。10年前に一度DIYで生まれ変わり、洋裁教室などに使われていました。コロナ禍に入り、教室としての利用ができなくなったことがきっかけに、再度DIYにチャレンジ。それまではマンション暮らしでしたが、「お風呂と洗濯機があれば住めるかもしれない。車も敷地内に置けるし、犬の散歩も行きやすいし」と考えて、これを機に引っ越すことに。
こうして以前とは異なるテイストでDIYがスタートし、今の状態になりました。

▲ リビング。元々押入れだった場所も襖を取り外し、一つの空間に。

▲ ダイニング。ラウンドテーブルは美鈴さんが大学時代に購入したもの。奥にあるソファも60年前のものを、生地を張り替えて使用している。

DIYをする時は、電気工事はプロに頼みますが、それ以外は美鈴さんのアイデアです。壁を塗ったり床を剥がしたりする作業は、ブログで呼びかけると、近隣の方から県外の方まで、いつもたくさんの協力者の方に来てもらえるそうです。協力者の方のおもてなしも美鈴さんは楽しいのだそう。

夫婦と犬3匹が心地よく暮らせる家。DIYはプチ達成感の積み重ね

こうして完成したご自宅は、ワンフロアのオープンな構造。シャッターチャンスを逃さないようにと設えられており、押入れを解放して、リビングやキッチン、ダイニングの仕切りも取り外し、行き来がしやすくなっています。もちろん愛犬が暮らしやすいために、床材は愛犬が滑りにくい素材をセレクト。柔らかい無垢材を使っているので、日に焼けて自然と色味が変わっていくのも楽しみの一つです。

▲ 無垢材を利用しているので、柔らかい。わんちゃんファースト。

「キッチンに立つと、部屋を全部見渡すことができるんですよね。空間を区切るのはソファで、目隠しは植物で。夫は背が高いので、空間の圧迫感をなくすために、天井の板を取り外しました」。

実はこのお家はセイキスイハウスA型と名付けられた日本初のプレハブ住宅。基本的な構造は変えておらずそのままのため、当時の名残も残っています。

▲ キッチンに立てば、リビングとダイニングが一望できる。

▲ ソファの背で空間を仕切る。わんちゃんがぶつからないように、床にも物を置かず植物などもなるべく吊るスタイルで。

▲ 洗面所との区切りは、暖簾で。

インテリアにも美鈴さんのこだわりが。「古いものやヴィンテージが好きなんです」と話すように、家具やインテリアは昔から使っているものばかり。ソファは、祖母の自宅にあったものを譲り受けたもの、食器棚やテーブルに至っては、美鈴さんが大学生の頃に買ったものなのだとか!

「インテリアも、元々持っている家具を生かして考えています。昭和レトロやアメリカの米軍基地をイメージしてアレンジしました」。

想い出が詰まった家具たちも年月が経って、より一層味わい深さが増しています。愛着の持てるものが暮らしの中にある、というのは暮らしを豊かにしてくれる一つの大切なキーワードですね。

▲ アイランドキッチンも天板を組み合わせてDIY。色をウッド調に塗り直した。

▲ 靴箱もDIY。キッチンと玄関を分けている仕切りは、元々あった窓枠を活用。

DIYの楽しさは段取りにあるといいます。
「小さな家づくりみたいなものですね。家づくりをする時って、短期間であれこれと決めていくことが多いじゃないですか?その忙しさが好きなんですよね。いついつまでに何を用意しておかなければいけないとか、小さいミッションがどんどんクリアされていく過程が楽しい。DIYは、プチ達成感の積み重ねですね。小さな達成感をその都度感じられるので好きなんです。あと、自分がOKだったら正解なのもいいところ。OKラインは緩くていい。新しいペンキに変えてみたりとか、鉄板に濡れるペンキを試してみたりとか、色々な実験は、気付きであり決して失敗ではないのだから」

▲ 家の裏にあるドッグラン。

▲ 撮影スポットにも!

▲ 敷地内に、わんちゃん撮影用のスタジオも用意されている。時々、愛犬家の人たちが集まって撮影会も開かれている。

▲ 家の敷地内に、撮影スポットがたくさん。

ペットから学ぶことは多い。自然体で生活すること

美鈴さんの今の暮らしは、わんちゃん中心。朝5時に起きて、わんちゃんたちの目覚めを待ちながら、SNSを一つ投稿する。その後お弁当を作って旦那さんを送り出してから、植木に水やりをします。気がついたら8時くらい。それからはわんちゃんの洋服オーダーの仕事をしたり、お出かけしたりお散歩したりと、自由に時間を過ごしています。こういう暮らしができるようになったのは、わんちゃんを飼いだしてからなのだそう。

▲ リビングの脇にあるデスク。美鈴さんが作業をする時に使っている。

「元は、スケジュールが埋まっていないと不安なタイプでした。忙しくしすぎてイライラしたり、体調を崩したりすることもありました。でもそんなに頑張らなくてもいいなと、穏やかに過ごす時間を大切にしています。ぼーっとする時間も大事な時間。わんちゃんを見ているとこれでいいんだーと安心します。犬中心の生活になったことで、心が穏やかになった気がします」

▲ 家の中は、いつでもどこでも撮影できるスポット。

暮らしも満喫されている美鈴さん。DIYは、暇が続くとむくむくと次第にやりたい気持ちが湧き上がってくるそうで、大体7年周期でやってくるのだとか。次のタイミングについて伺ってみると、「やりたいが満タンになったら、そのうち突然動き出すかもしれない」と微笑んでいました。

▲ 最近は出かけるより、おうちに来てもらって、おもてなしをする方が楽しいのだと美鈴さん。

▲ 遊びに来てわん!

美鈴さんにとってのDIYは、暮らしの中にちょっとしたミッションを与えてくれるもの。小さな達成感と刺激を与えてくれるもの。毎日の中に楽しみを作るためのワクワク創出装置のように感じました。完璧を求めず、その時の流れに沿って、どんどん変更していけばいい。そんな柔軟さのあるDIY、お手本にしたいですね。

筆者

ライター 小倉ちあき

ライター

小倉ちあき

企業内での広報部経験を経て、現在フリーランスのライター・インタビュアー。地域・文化・ものづくりの領域で主に活動し、今を捉えている。ジャンルの境界を越えて、有機的につなぎあわせる編集術を日々模索する。

取材協力

奥野美鈴さん

ものづくりで得られる達成感や誰かに褒められる喜び、それによって人々とつながれることなど、ものづくりが生むさまざまな喜びを多くの人に伝えたいと活動中。 座右の銘は、「お手は宝」。

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