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公開日2024.08.20

災害後に増えるリフォームトラブル。プロに聞く、詐欺の手口と対策は?

「契約を急かされて、よく考えずに契約した」「聞いていたよりも高額な支払いになった」「予定していた工事がされなかった」…など、リフォーム工事にまつわる詐欺は、数え上げるときりがありません。自分や家族がいつか遭うかもしれないリフォーム詐欺はどうすれば避けられるのか。消費生活アドバイザーの村上なつきさんに、最近の事例と対策を伺いました。

リフォーム詐欺の被害件数は、年々増加

「リフォーム詐欺」とは、大げさに不安をあおって家の修理を訴えてきたり、保険や補助金が出るといって契約をさせるなどして、本来必要の無い作業をして工事費・材料費などを請求することを指します。

リフォーム詐欺の被害の多くは、巧みな口ぶりで「工事をしなければ危険」や「〇〇の無料点検を行っている」と謳う業者が家に上がりこむ訪問によるものです。特に狙われているのは、一人暮らしの高齢者や日中自宅で過ごしている主婦(主夫)層。彼らは、家に一人でいるところを狙ってやってくるのです。最近は都市だけではなく、地方にも拡がっています。

国民生活センターによると、2023年の訪問販売によるリフォーム工事(※)のトラブル件数は1万件を超えており、2021年の9,756件に対して約20%も増加。年々相談件数は増加傾向にあります。
※ここでは、「屋根工事」「壁工事」「増改築工事」「塗装工事」「内装工事」の合計を「リフォーム工事」としています。


そのリフォーム詐欺には、実際にどのようなケースがあるのでしょう?

ケース1:災害後に増える「屋根修理」詐欺

リフォーム詐欺のうちでも、最も多い家の箇所が「屋根」。
事例としては、地震や台風などの後に、突然リフォーム業者が来訪し、「近所を回っていると、お宅の屋根が浮いているのが見えた。無料で点検を行えます」と自宅に入りこみ、その後、屋根が破損している写真を見せられ、「今にも水漏れが起こりそうなので工事をした方がいい」と急かされて契約をしてしまったというケースです。この破損した屋根の写真は、自宅ではなく、彼らがあらかじめ用意していた偽物の写真です。それを見せて恐怖心を煽っているのです。
ここで注意すべき点は、近所を回っているという点と、本当にその写真は、自宅の屋根の写真か?という点です。普通のリフォーム業者であれば近所を回って訪問してくることはありませんし、急な契約を進めたりはしません。

また、屋根のリフォーム詐欺で悪質なのが、被災地での詐欺です。災害で家の屋根が破損した際は雨漏りを防ぐために、応急処置として屋根にブルーシートをかけて防ぐ場合がありますが、実際に災害に遭い、屋根が破損してしまったので慌てて手元にあったチラシの業者に電話をして来てもらったら、ブルーシートや屋根の工事の費用を相場よりも高額な金額で契約させられたというひどい詐欺も起こっています。

ケース2:「補助金」を謳う詐欺にも注意

東日本大震災の後から増えたのが、補助金・補償金詐欺です。地震で被災した事例を挙げながら不安を煽り、「今なら補助金が出るから」と屋根や家の修理を勧めてくるケースです。「火災保険に入っていれば、経年劣化でも実費負担なしで直せる」や「保険の申請は無料で代行する」と勧められ、修理していざ申請したところ、火災保険は経年劣化は対象ではないため審査が通らず、結果として契約者本人が保険会社に虚偽の請求をしたとみなされ、法律違反になってしまったという被害ケースもあります。火災保険だけでなく、元々存在しない補助金制度の名前を出してくることもあるので注意が必要です。

このような場合、工事前から「補助金が出る」と業者が断言する時点で疑ってください。補助金や補償金が出るかどうかは工事が終わって、書類を申請してから決定されることです。保険の申請についても、分からなければ保険会社に直接聞くのがベストです。大事な保険の申請を、突然訪れた業者に代行してもらうのはやめましょう。くれぐれも手続きを任せないようにしましょう。

ケース3:「給湯器」の交換詐欺

近年増えているのが、給湯器のトラブル。突然来訪してきた業者に、「給湯器は10〜15年で買い換えが必要だ」といわれて高額な契約をしてしまうケースです。彼らは、事前に給湯器をチェックしていて、ちょうど適しているような時期の給湯器があるお宅をピンポイントで訪れています。小さいお子さまがいるお宅も狙われやすいのでご注意を。子供が夏の汗をかく時季に、給湯器が壊れたら大変だと不安を煽ってきます。
リフォームされたばかりの家や古民家も要注意です。「給湯器はちゃんと買い換えましたか?そろそろ危ないですよ」と畳みかけてきます。数年前に換えたばかりの給湯器を交換させられてしまうという悪質なケースもあります。

リフォーム詐欺を防ぐためのポイント

このようなリフォーム詐欺の被害に遭わないためのポイントがあります。

リフォーム詐欺を防ぐポイント
  • 突然の訪問者は必ずドアホン越しに確認し、いきなりドアを開けない。家の中に上げない。
  • その場で契約は絶対しない。
    「今だけ」「今すぐ」には注意。冷静に判断する時間を作りましょう。
  • 不安な時はすぐ連絡を。
    家族や近所の知り合いなどに、その場で電話をするのもいいでしょう。
  • 業者の会社名を確認する。
    名刺をもらうなどして、実在している会社かどうかネットや電話で調べましょう。リフォーム詐欺の業者名は、消費者庁の特定商取引法ガイドで調べることができます。

自分の家のことを知っておくことも大切

なぜ、このような詐欺に遭ってしまうのでしょうか?それは、自分たちが普段あまり見ない場所だということと、その修理にかかる費用の相場が分からないことが挙げられます。通常の状態を知らないので、偽物の写真を見せられても、疑いようがなく、参考となる相場の費用もわからない、ということがあります。

その対策として、自分の家のことをしっかり知っておくことも大切です。詐欺に狙われやすいのが屋根・給湯器・水回りなど、普段は気にしないような場所。年に一度チェックして状態を確認しておくだけでも、詐欺かどうかを見抜けるかもしれません。また、万が一の時に修理する際はどこに依頼すればいいかを考えておくとよいでしょう。一番危険なのは、無関心なこと。付け込まれる隙を与えないためにも、自宅が今どのような状態かを知っておきましょう。


これは詐欺かも…と不安になったら

家のリフォームでトラブルが起こった場合、以下の相談窓口があります。

1:消費者ホットライン
188 (いやや)

電話で「188」とダイヤルし、お住まいの郵便番号を7桁で入力すると消費生活相談窓口につながります。

2:住まいるダイヤル

国土交通大臣指定の住まいの相談窓口。
以下の住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤルWebサイトより電話・チャットで相談可能

相場より高いのか安いのか、適切な作業かどうか分からないなど、不安感が少しでもあるならば、連絡するようにしましょう。話を聞いてもらうだけでも冷静さを取り戻せます。一人で抱えてしまわないことが何より大切です。

協力アドバイザー

消費生活アドバイザー
村上 なつきさん

1990年代、ロサンゼルス生活で欠陥商品や有害食品から身を守るための消費者運動、コンシューマリズムに出会う。
帰国後、消費生活アドバイザーとして講座を担当。暮らしのそばにあるトラブルや詐欺にあわないための心構えを伝えている。そのほか家庭の省エネ講座にも取り組んでいる。

村上 なつきさん

筆者

ライター 小倉ちあき

ライター

小倉ちあき

企業内での広報部経験を経て、現在フリーランスのライター・インタビュアー。地域・文化・ものづくりの領域で主に活動し、今を捉えている。ジャンルの境界を越えて、有機的につなぎあわせる編集術を日々模索する。

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