公開日2022.07.14
なぜ節電が必要?家庭の電化製品で今すぐできる「節電方法」
最近よく耳にする「電力ひっ迫」「電気料金の値上げ」。さまざまな影響から節電の風潮が広がっています。なぜ電力が足りなくなったのか? 家庭でできる節電方法とは? 私たちがあまり知らない電気のこと、家庭でできる節電の方法について、消費生活アドバイザー/うちエコ診断士の村上 なつきさんにお話しをお聞きしました。
アドバイスいただいたのは
消費生活アドバイザー/うちエコ診断士
村上 なつきさん
1990年代、ロサンゼルス生活で欠陥商品や有害食品から身を守るための消費者運動、コンシューマリズムに出会う。帰国後、消費生活アドバイザーとして講座を担当。その中で “省エネに関心はあるが、よくわからない” との声を聴くように。暮らしのちょっとした工夫が省エネにつながることを、誰もが楽しく取り組めるよう、各地でわかりやすく伝えている。
電力のひっ迫が続くと電気が使えなくなる?
電力会社で作られる電気は貯めておくのが難しく、使うのに必要な電気はその時に作って送られています。電力需給というのは、同時同量、特定の時間帯に使用される可能性がある電力の消費量と発電する量を合わせてバランスを保つ必要があります。このバランスが崩れ、電力の需要が発電量(供給力)を上回ると、予測不能な大規模停電が発生する恐れもあるとされています。
コップをイメージしてみましょう。水がいっぱいになったら溢れてしまいますが、少ないと飲むには足りません。電気も同じです。
最近よく耳にする「電力ひっ迫」は、老朽化した火力発電所の廃止が進んでいること、東日本大震災以降、原子力発電をストップしていること、省エネ対応とは言え、電気エネルギーを使う製品が増え続けていることなどが影響しています。
現在の日本では、電力の予備率が3%を下回ると予想される時に「電力需給ひっ迫警報」が発令され、さらにひっ迫状態が進むと計画停電が実施されるかもしれません。
停電で電気が使えなくなったら・・・
電気が使えなくなった状況を想像してみましょう。電車など交通機関が止まり、ガソリンスタンドも電気を使ってポンプで給油しているのでストップ、いわゆる交通機関全般が麻痺します。ATM・キャッシュレス決済も使えない、食料も購入できない、スマホやパソコンの充電もできなくなり連絡ができない、情報が入ってこないなど、あらゆることがストップしてしまうのです。
電気はみんなのもの。停電により社会が機能しなくなるのを防ぐためにも、一人ひとりが節電を心がけることで需要と供給のバランスが取れた状態を保つことができます。
家庭でできる「節電」とは
冷蔵庫、エアコン、洗濯機、ドライヤー、アイロン、スマホやテレビなど、私たちの暮らしに直結している家電。節電を考えるときに、家電製品の見直しは大切な要素です。いつ購入したものか、適切な使い方も含めて、一度確認して、どんな家電を持っていて、本当に必要なのかも考えてみましょう。
-
1. 使う電力を減らす
家電を使っていない時はプラグをコンセントから抜いたり、消費電力ができるだけ小さくなるような工夫をしましょう。家庭での消費電力の5%が待機電力とも言われています。最近は待機電力がかからない家電製品も出てきています。
-
2. 使う時間をずらす
一般的に家電製品を多く使う時間帯を避けること(ピークシフト)で、電気を貯める時間を確保することができます。例:食事の調理時間を少しずらすなど。
-
3. 省エネに優れた家電製品に買い替える
昔から使っている家電製品は、消費電力が大きいものがあります。タイミングを見て省エネ型の製品に買い替えをするのも節電の効果が高くなります。
意外と知らない?家庭で消費電力が大きい「給湯器」
給湯器
村上さんが「うちエコ診断」をしてきたなかで、多くの家庭で消費エネルギーの3割ほどを占めていたのが給湯器。実はガス給湯器でも電気を使っています。お湯を沸かす時、リモコン操作パネル、追い焚きの際のポンプなど、蛇口を開けてからお湯が出てくるまで、制御センサーで電気を使います。
お風呂、シャワー、食器洗い、手洗い、うがい、歯磨きなど毎日の生活で何気なくお湯を使っていませんか? 流しっぱなしも多く、シャワーに関しては、1分流し続けると12リットル使うと言われています。家族が合計で12分間使ったとしたら、浴槽一杯分とほぼ同じ量になります。「小まめに止める」「適した温度設定で使う」「お風呂は追い焚きをせずに続けて入る」「節水シャワーヘッドを使う」。これだけで節電効果は大きく、さらにガスと水道の節約にも繋がります。普段使っている「お湯」の使い方を見直してみましょう。
家庭で消費電力が大きい家電と節電方法
1. 冷蔵庫
冷蔵庫は365日24時間使っているので、消費電力が最も大きい家電製品の一つです。これを節電工夫することでとても効果的になると言えるでしょう。
・扉を開ける回数と時間を減らす
冷蔵庫は温度を保とうと常に動いています。扉を開ける回数や、開いている時間が長いと冷気を逃してしまいます。意味もなく開けないなど、習慣づけることを意識しましょう。
・冷蔵室は詰めすぎず、整理をする
冷蔵庫には冷気を出している箇所があります。その前に食材を入れて塞いでしまうと、庫内に冷気が回らなくなり、温度が上がります。また整理できていないと食材を探すのに時間がかかり、扉を開けている時間も増え、庫内を冷やすために電気を使います。
・冷凍室は詰めて整理する
保冷効果を高めるために、冷凍室は詰めて入れるようにすると、食品同士が保冷剤の役目をします。ただし、開けたらすぐに取り出せるよう、整理して入れましょう。
・設定温度を調整する
冷蔵庫の機能に、弱・中・強など、温度設定機能が付いているのをご存知ですか?
季節ごとに調整するだけでも節電効果があります。夏でも「強」ではなく「中」に変えたり、冬は「弱」でもいいかもしれません。また、食品を冷蔵庫に入れる時は、十分に冷ましてから入れるようにしましょう。温かいまま入れると庫内の温度が上がり、急速で冷やそうとするので電気を使います。
・省エネの冷蔵庫に買い替える
365日24時間稼働している冷蔵庫。長い目で見ると古いものは買い替えることも考えましょう。ファミリータイプ(500リットルクラス)のものが一番節電に優れていると言われていますが、最近では2人暮らし向きの400リットルクラスでも省エネに対応したものが増えてきています。年間目安電気料金が表示されているので、確認するようにしましょう。
冷蔵庫を置く位置はできる限り壁に隙間をつくるようにするのもポイント。冷蔵庫は本体の側面や背面(古いタイプ)から放熱しているので、隙間がないと熱がこもって電気を使います。最近は上部から放熱するタイプが増えてきましたが、持っている冷蔵庫がどのタイプなのかを確認して配置しましょう。
2.照明器具
ご自宅のリビング、ダイニング、キッチン、玄関、トイレ、お風呂、洗面所、寝室、子供部屋など、どの部屋にも照明器具はついています。家庭では照明器具の節電効果も高くなります。
・LEDライトに変える
LEDライトは4万時間も使用できると言われています。24時間照明は点けないので、使用できる期間は8年~10年と言われています。LEDライトに変更するだけで節電は圧倒的に効果が得られます。昔に比べると安価になってきているので、長い目でみるとLEDライトに変えることをおすすめします。また、LEDライトは点けたり消したりを繰り返しても、電気をより消費することはありません。スイッチから小まめに消すようにしましょう。どうしても消し忘れが多いトイレなどは、人感センサーのLEDライトに変えてみるのもおすすめです。
・調光、ランプやシェードの掃除をする
調光ができるタイプは、必要な明るさに調整しましょう。昼は明るいので極力下げるなど工夫をしましょう。またランプやシェードが汚れていたり、埃が付いていると暗くなり、つい明るくしてしまいがち。掃除をすることで必要以上に明るくすることが防げます。寝る前は、暗めにするとリラックス効果もあるのでおすすめです。
・寝る時はリモコンではなく、スイッチから消す
リモコンで消すと大元の電源は入ったままで、待機電力が発生しています。寝る前はスイッチから消すように心がけましょう。
3.エアコン
夏は冷房、冬は暖房、梅雨は除湿と何かと一年中稼働しているのがエアコンです。工夫することで節電効果は高くなります。
・扇風機やサーキュレーターを併用する
夏は温度設定を1度上げる、冬は1度下げることで、消費電力が10%程度削減できると言われています。また冷気は下に溜まる性質で、必然的に下は温度が低く、上は高くなります。エアコンの位置は大体上にあるので、温度が高いと判断しフル稼働し続け、より電気を使います。エアコンの羽根(風向)は、夏は水平、冬は下向きにして、扇風機やサーキュレーターで空気を対流させ、部屋温度を均一にすることがエアコンの稼働を減らし節電に繋がります。ちなみに、扇風機とサーキュレーターは、あまり電気を使いません。また、エアコンの風量は自動設定が一番節電効果が高くなります。
・冬の暖房の方がより電気を消費する
お湯と同じように、温度や熱を上げること、保つことに電気を一番使います。除湿は一定の温度を保ちながら除湿をするので条件が複雑になっており、冷房よりも電気を使う場合もあります。節電は暖房や除湿の使い方に気をつけましょう。
・夏は部屋の暑い空気を外に出してからエアコンをつける
夏は部屋にこもった暑い空気を、扇風機やサーキュレーターで窓やドアから外に出してからエアコンをつけるようにしましょう。暑いままつけると温度が高いと判断してより電気を使います。また、窓を断熱することは節電にとても効果的です。窓は、家の中で熱が最も伝わりやすいところで、夏は熱の約7割が窓から入り、冬は約6割の熱が出ていきます。簾(すだれ)やグリーンカーテンで外から遮光と遮熱をしたり、最近では窓に貼る断熱シートも市販されているので、それを使用するのも効果的です。
・室外機の上側をカバーする
エアコンは室外機に多くの電気を使っています。室外機に熱が当たっていると、熱を排出しにくくなるためとても電力を消費しますので遮熱遮光するだけで効果があります。最近は光を反射したり、遮る日除けも市販されています。注意する点は、室外機の前(ファン)は塞がず風通しをよくすること。電子部品が故障するので水を直接かけることはやめましょう。
・エアコンのフィルターを掃除する
2週間に1回くらいのペースで、掃除機で吸う程度でOK。
・オンとオフを繰り返すのはNG
照明とは違い、エアコンは小まめにスイッチのオンオフを繰り返すと、より電気を使いますのでやめましょう。
4.テレビ
意外とつけっぱなしが多いテレビ。朝起きてまずテレビをつける、テレビをつけたまま家事をする、見ているかいないかは別に、そのまま1日中ついていませんか?
・見ていない時は消す
見ていないのにつけていることは無駄な電気を消費していることになります。消す習慣を身につけましょう。もしくは、見たい時間や番組だけを決めてオンオフタイマーを活用しましょう。
・画面の明るさ、音量を調整する
画面を明るくすればするほど、電気の消費量は増えます。音量も同じです。適切な場所で見るようにして、必要以上の設定にしないようにしましょう。またテレビは静電気で埃が付きやすいので、週1回程度画面を拭きましょう。テレビのサイズも大きければ大きいほど電力を使いますので、適したサイズのテレビを選びましょう。
・寝る時はリモコンではなく、スイッチから消すようにする
リモコンで消すと大元の電源は入ったままで、待機電力が発生しています。寝る前は電源スイッチから消すように心がけましょう。テレビをつけたまま寝たい方はオンオフタイマーを活用しましょう。
部屋別で考える節電方法
キッチン
キッチンには、電子レンジ、炊飯器、電気ポット、トースター、ホットプレート、細かい調理機器など家電製品がたくさん集まります。
・お湯の温度設定を下げる
お湯は給湯器で電気を使います。特に洗い物の際は、できる限り低く設定することを心がけましょう。無駄に熱いお湯を流しっぱなしにして洗ったりしないようにしましょう。
・長時間の保温を止める
炊飯器や電気ポットの長時間保温は、熱を保つ機能なので電気消費が多くなります。炊飯器であれば、保温を止めて1食分ずつに分けて食べるときにレンジで温めた方が節電になります。
電気ポットはできるだけ低温モードで保温するようにして、必要な時だけ再沸騰するようにしましょう。すぐに沸く電気ケトルに変えることもおすすめです。圧力鍋を使うのも電気やガスの使用時間が短くなるのでおすすめです。
・まとめ洗いをする
食洗機を使用する際は、食器の汚れや食べ残しはあらかじめ落としてから、できるだけまとめ洗いをするようにしましょう。また乾燥はせずに扉を開けて余熱で自然乾燥するだけでも節電になります。
・ピークシフトをする
オーブンやトースターは、焼くために熱を出し、使用時間も比較的長いので電気消費量は大きくなります。できる限り一般的に使用する時間帯を避けて使いましょう。
電子レンジは意外と電気を使わない?
大体は600Wで使用することが多い電子レンジ。長時間使うことも意外と少ないのであまり電気は使いません。電子レンジは野菜の下ごしらえなど適していて、ガス代よりも安くなり、栄養価も高いまま調理できます。作るものによって使い分けしましょう。
洗面所
・温度を低めにして、お湯を出しっぱなしにしない
できる限り温度設定を低くしましょう。手を洗うときは、石鹸で手をこするのに30秒、洗い流しに15秒と言われています。この30秒の間は水栓を止めるように心がけましょう。
・ドライヤーの使用時間を短くする
ドライヤーはとても電力を使います。製品によっては1200Wも使用するので、髪はタオルでよく拭いて、できる限り乾かしてから使うようにしましょう。また最初だけ熱風で乾かし、あとは冷風で乾かすなど工夫しましょう。
・洗濯機はまとめ洗いをする
小まめに回数を増やして洗うのではなく、できる限りまとめ洗いを心がけ、洗濯機の使用頻度を少なくしましょう。
・乾燥機よりも天日干し
乾燥機も熱を出すので電気を多く使います。夏や天気の良い日は、できる限り天日干しをするようにしましょう。
トイレ
・大小のレバーをちゃんと使い分ける
水を作る過程でも電力を使っています。つまり、水を流すと電気も流れているという意識を持つように心がけましょう。
・便座の温度設定を調整する
低めの温度に設定して、夏など必要ない時は使わないようにしましょう。蓋を開けたままにすると放熱してしまうので、トイレが終わると蓋を閉めるようにしましょう。
家計の節約にもつながる節電
節電とは、電気の消費量を少なくすること。家庭での節電を心がけることで電気の消費量は少なくなり、電気代が安くなります。普段何気なく使っている「お湯」や「家電」の使い方を見直して行動することで、その効果が電気代として目に見えてわかるようになります。最近では、電力会社のサイトやアプリなどでも毎月どれだけ使ったか、電力の「見える化」ができるようになっています。昨年と比較してどれだけ節約できたかなど確認してみるのもおすすめです。
最後に
限りあるエネルギー資源を有効に使っていくことや、地球温暖化にストップをかけるためにも、 一人ひとりが問題意識を持って行動に移すことが必要です。ひとりで頑張っても効果が少ないように思えますが、みんなで行動することで大きな効果が得られます。
大切なことは「決して無理をしない」、「できることから始めて習慣にする」こと。楽しく取り組める工夫をしていきましょう。命を守るためにも頑張り過ぎず、適度に家電に頼り、なるべくストレスのかからない節電方法を心がけてお過ごしください。
協力アドバイザー
消費生活アドバイザー
村上 なつきさん
1990年代、ロサンゼルス生活で欠陥商品や有害食品から身を守るための消費者運動、コンシューマリズムに出会う。
帰国後、消費生活アドバイザーとして講座を担当。暮らしのそばにあるトラブルや詐欺にあわないための心構えを伝えている。そのほか家庭の省エネ講座にも取り組んでいる。