おしゃれな家づくり

公開日2024.11.07

中古物件の断熱工事は必要?|戸建てをリノベーションしたい!【6】

光熱費削減や家の中で快適に過ごすために重要になるのが「断熱性」。高断熱の家は外気温に影響されにくく、夏は涼しく、冬は暖かく暮らせると言われています。今回は、中古物件での断熱工事の必要性やまずやるべき断熱工事やその注意点をご紹介します。

中古物件の断熱工事は必要?高めるための工事とは

2025年から断熱性の高い家を建てることが義務化

そもそも日本の住宅は「断熱性」をあまり重視していませんでした。1980年以前に建てられた家は国が定める断熱性の基準がなく、ほとんどの家が「無断熱の家」。

1980年に省エネルギー基準が制定され、断熱性能を数値化し断熱等性能等級であらわすようになりました(当時の最高レベルは断熱等性能等級2)。現在は脱炭素社会の観点から省エネルギー基準がとても高くなり、断熱等性能等級7が最高レベルです。

そして、2025年から新築住宅に対して省エネ基準適合となる断熱等性能等級4以上の家を建築することが義務化されます。つまり断熱等性能等級4以下の物件は建築できなくなります。同様に増改築リノベーション工事の場合も省エネ基準適合が義務化されますので断熱工事は必要になります。

断熱性が低い家は、光熱費以外にもデメリットがある

高断熱の家は外気温に影響されにくく、エアコンで適温になった室内温度をキープするので、夏は涼しく、冬は暖かく暮らせると言われています。では、断熱性が低いとどんなデメリットがあるのでしょうか?

まずはエアコンが効きにくい、光熱費が高くなることが挙げられます。そして怖いのが健康面でのデメリット。断熱性の低い家は、家の中で温度差が生じます。リビングではエアコンで温かくなっていても、トイレやお風呂はヒヤッと感じる家、ありますよね。これはとても怖い事なのです。というのも、急激な温度変化によって血圧が変動し、ヒートショックの原因になるかもしれないのです。特に年齢が高い方、高血圧など持病がある方は断熱性を高めることを意識しましょう。

リノベーション時にできる効果的な断熱工事

リノベーション時に断熱性を高める方法はたくさんあります。その中でも主な断熱方法をご紹介します。

熱の出入りが激しい「窓の交換・内窓設置」

実は、熱の出入りが一番激しいのは窓です。中古物件の場合、アルミサッシ+単板ガラスがほとんどだと思いますが、高断熱サッシ+複層ガラスに入れ替えると断熱性は飛躍的に向上します。しかし、窓の入れ替えはかなりコストがかかります。予算的に厳しい場合は内窓を付けることで断熱性を高めることができます。施工も窓全体を入れ替えるよりずっと簡単にできます。

「床断熱」

床下に断熱材を入れる、床材を断熱性の高いものに変えるなどで特に冬の底冷えを解消します。

「天井断熱」

夏の日差しからの熱を遮るために、小屋裏に断熱材を敷き詰めるなどします。特に平屋は生活スペースが天井と近いので、天井の断熱は需要です。

「内壁・外壁断熱」

内壁に断熱材を補強する、外壁を断熱性の高い素材で張り替えるなどをして、外気温の影響が少なく、室内温を逃さない住空間になります。


専門家に聞く「リノベーション時に断熱工事すべき場所」とは

中古戸建ての断熱性能を高める方法についてはYouTubeやSNSに情報があふれていますが、そこに正解があるか?というと疑問を感じる、というのは株式会社美想空間の鯛島社長。リノベーション時の断熱工事についてするべき場所と注意点をお伺いしました。

株式会社 美想空間
代表取締役社長 建築士・宅地建物取引士 鯛島康雄さん

中古物件購入からサポートしてくれるワンストップ型のリノベーション会社。一戸建てのリノベーションが得意で、住む人の安心・安全・快適をベースとした上で、あそび=日常生活の余白を楽しめる家づくりを提案。

──リノベーション時に断熱性能アップを依頼する方は多いですか?

鯛島さん: 断熱等級にこだわり、断熱材や断熱方法まで指定する方もいらっしゃいますが、全く気にしない方もおられます。

──断熱工事については施主側から工事内容を指定しないといけないのでしょうか?

鯛島さん:こだわる方は僕より詳しい方もいらっしゃいます(笑)。ですが、リノベーションの場合、購入する中古物件によって最適な断熱方法が異なります。断熱材も絶対にウレタン吹き付け断熱をしてくださいという方もいらっしゃいますが、中古物件によってはその断熱材が適していない場合もあります。ですから、YouTubeなどで勉強して決めつけずに、相談しながら断熱方法を決めていくことをおすすめします。

──リノベーション時にこれだけはしておいた方がいいという断熱工事はありますか?

鯛島さん:よく言われるのが「窓」ですが、僕は「床」をおすすめします。というのも、断熱性を高めるのは暮らす人の快適性を高めるためなので、体と接地しているところをまず改善した方がいいと思います。そうなると、窓よりも壁よりも、床です。床は足と接地しているので、冷たさを感じやすい。床が冷たいと体が冷えてしまいます。
窓や壁は触ることはほとんどなく、空気を温めたらいいわけですから、まず体と接地する床を断熱した方がいいですね。優先順位で言うなら、1階の床→窓→天井 かな。

▲ 適切な断熱工事をして断熱等性能等級4(新築レベル)まで引き上げた築55年の一戸建て(美想空間 施工例)

──断熱等級は取得した方がいいのでしょうか?

鯛島さん: 断熱等級を取得してなおかつ土間を造るとかキッチンを造作するなどやりたいこともできるならば、断熱等級の数値にこだわり工事してもいいと思います。ですが、数値にこだわるあまり、やりたいリノベーションができなくては本末転倒です
ちなみに僕は数年前に中古一戸建てを購入してリノベーションしましたが、断熱工事は一切していません。その代わりに業務用のエアコンを入れました。個人的な意見ですが、数値にこだわるより体感値にこだわった方がいいと思います。

──リノベーション時にする断熱工事で注意しなければいけないことはありますか?

鯛島さん:中古物件は千差万別で、その中古物件の状態によってコストを抑えて断熱できる方法がちがってきます。美想空間でも毎回、異なる断熱方法をご提案しています。断熱性や耐震性など家自体の性能を上げることも重要ですが、憧れている暮らしを実現することも重要です。ですから、まずはプロに検証してもらって、コストとのバランスをとりながら断熱方法を決めていくことが満足のコツではないでしょうか。

──ありがとうございました。

▲ 適切な断熱工事をして断熱等性能等級4(新築レベル)まで引き上げた築55年の一戸建て(美想空間 施工例)

気密断熱性の高い家だから起こる問題も。まずはプロに相談!

昨今、話題になっている気密断熱性の高い家だから生じる内部結露の問題もあります。内部結露が起こると壁の内部にカビが生じ、構造の腐食の原因になるといわれていますので、中古戸建てを内見して、内壁にカビがある家は要注意です。

リノベーション時の断熱性を高める方法はその中古物件の建て方や現在の状態によって最適な工事が異なるので、慎重に進めなければいけませんね。まずは家の状態をプロに確認してもらうことが大切です。相談しながらどんな断熱工事をするかを検討しましょう。
また、リノベーション時の断熱工事については補助金の対象となる場合があります(2024年10月現在)ので、補助金を利用するのも賢い方法です。

取材協力

株式会社 美想空間

中古物件購入からサポートしてくれるワンストップ型のリノベーション会社。一戸建てのリノベーションが得意で、住む人の安心・安全・快適をベースとした上で、あそび=日常生活の余白を楽しめる家づくりを提案。大阪港駅から徒歩2分にあるKLASI COLLEGEでは、リノベーションセミナーやワークショップなどのイベントを随時開催。おしゃれなキッチンなどのショールーム、カフェ、キッズルームもあり、リノベーションのワクワク感を体感することができます。

▲ 築70年の建物をリノベーションした
KLASI COLLEGE

▲ 受付では日替わりでスタッフが
お出迎えしてくれる

筆者

著者

住宅ライター/プロインタビュアー 大内 夏実

株式会社リクルートで情報誌のイロハを学び、独立。不動産・住宅系ライターとして経験を積む。大手ハウスメーカーから小さな街の工務店までさまざまな建築会社の注文住宅施工例やモデルハウスなどを取材し、また実際に購入した方、家を建てた方のインタビューも多数実施。年間100軒ほどの取材に基づいた知識と経験から多くの建築会社の広告戦略なども手掛けている。

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