公開日2024.10.04
中古物件は耐震性が不安?|戸建てをリノベーションしたい!【5】
南海トラフなど巨大地震がいつ来てもおかしくない状態とされているだけに、気になる「耐震性」。中古戸建てを購入する際は、
・築年数が古い家は危険なの?
・耐震補強って高額なの?
・そもそも耐震性を見極めることはできるの?
などなど、耐震性についていろんな疑問や不安が頭をよぎります。そこで今回は耐震性の基準やリノベーション時にできる耐震補強の方法をご紹介します。
まずはココをチェック!築年数は2000年以前か、以後か
築年数によって国が定める「耐震基準」が異なる
そもそも「耐震性」とは家の構造部分なので、シロウトが見てこの家は耐震性が高いとか低いとかを判断できるものではありません。しかし、目安にできる基準があります。それが築年数によって異なる「耐震基準」。まずはココをチェックしてみましょう。
●1950年~1981年に建築された木造住宅
「旧耐震基準」
震度5程度の地震で倒壊しないレベル
●1981年~2000年5月までに建築された木造住宅
「新耐震基準」
震度6強の地震で倒壊しないレベル
●2000年6月以降に建築された木造住宅
「現行耐震基準」
新耐震基準をさらに強化
また、地震に対する建物の強さを表す指標である耐震等級も定められています。
耐震等級1
震度5程度までは軽微なひび程度にとどまり、震度6強程度でも即時に倒壊・崩壊しない
(現行耐震基準を満たす水準)
耐震等級2
耐震等級1の1.25倍の耐震性を備えている
(病院や学校など避難所や長期優良住宅に求められる水準)
耐震等級3
耐震等級1の1.5倍の耐震性を備えている
(消防署や警察署など災害復興の拠点となる建物に求められる水準)
2000年6月以降に建築されたのであれば、現行の耐震基準を満たし、耐震等級1レベルの耐震性を確保しているので安心の目安になります。ただ、2000年6月以前の木造住宅であっても耐震補強をすれば現行基準と同等レベルの耐震性まで引き上げることは可能です。
▲ 築57年の平屋をリノベーション。構造計算を⾏い、断熱材と耐震補強を適切に⾏うことで、耐震等級1と断熱等級4を達成(美想空間施工例)
リノベーション時にできる耐震補強
耐震補強の方法は主に4つ
次に、リノベーション工事の際にできる主な耐震補強の方法をご紹介します。耐震補強をすれば、旧耐震基準の木造住宅でも耐震性を担保することができます。
強い直下型地震が発生すると、家全体が下から突き上げられ柱が土台から抜け、浮き上がった状態になってしまう「ほぞ抜け」。家が倒壊してしまう原因のひとつです。このほぞ抜けを回避するために柱と土台・基礎など接合部を金物で強固に接合します。
家のバランスを整えるために筋交いや壁を新たに入れ地震による「ねじれ」現象を防止します。
重い瓦屋根を軽い屋根に葺き替えることで建物が受ける地震の力を低減させることができます。
家を支える土台となる部分の基礎にクラック(ひび割れ)などが入っていないかをチェックし、炭素繊維シートを基礎表面に貼り付けるなどをして耐震性を向上させます。
ここまで読まれた方は新耐震基準で建てられた家を購入したほうがいいのでは?と思うかもしれません。しかし、「そんなに旧耐震基準で建てられた家はダメ!という話ではない」と美想空間・代表の鯛島さん。リノベーション時に気を付けなくてはいけない耐震性について、専門家に詳しく話を聞きました。
専門家に聞く「必ずやるべきリノベーションの耐震補強」とは
株式会社 美想空間
代表取締役社長 建築士・宅地建物取引士 鯛島康雄さん
中古物件購入からサポートしてくれるワンストップ型のリノベーション会社。一戸建てのリノベーションが得意で、住む人の安心・安全・快適をベースとした上で、あそび=日常生活の余白を楽しめる家づくりを提案。
──旧耐震基準で建築された木造住宅は購入しない方がいいのですか?
鯛島さん:まずは、耐震性について誤解している方も多いかもしれません。中古戸建ての耐震性を高めることは、できます。ですから旧耐震基準の中古戸建てでも現行基準レベルの耐震性まで高められるので、そこまで築年数を気にする必要はないと思います。
──耐震等級は取得した方がいいのですか?
鯛島さん:耐震等級を取得した方が安心だという方もいらっしゃいます。ですが、数値を上げるための様々な工事をしなければならないですし、思っている以上に予算はかかる印象です。どうしても耐震等級を取得したいというのならば、現行基準で建築された家を購入し、工事をして数値化する方が予算はかかりません。
──リノベーション時にした方がいい耐震補強はありますか?
鯛島さん:金物補強がされていない家は絶対にすべきです。私たちの会社では、100%しています。というのも、リノベーションは間取りなどを変える際に壁を壊し構造が触りやすい状態になるので、金物補強がスムーズにできます。自宅を耐震補強だけするのは大変ですが、リノベーションの場合、金物補強の工事が比較的しやすい状況になります。
──耐震性が高い家か、それとも不安な家なのかを見極めるポイントは築年数以外にありますか?
鯛島さん: それは壁の内部を見ずにということですね?
でしたらぱっと見てわかる方法はありません。ですが、なんとなく地震に弱そうな家だな、強そうな家だなというのはわかります。
──その「地震に強そうな家」とはどんな家か教えてください。
鯛島さん:それは、正方形の家です。地震に耐えるためには、家のバランスが非常に大切です。変形の家だと、家を支えるバランスが悪くなる場合があります。そして軽い屋根というのも重要。ですから、軽い素材を使った屋根の正方形の家なら安心感はあります。
──リノベーション時にする耐震補強で注意することはありますか?
鯛島さん:耐震性を数値化して耐震等級を取得しないとダメだという考え方もわかりますが、数値化するには過剰な工事をしなければいけないという現状もあります。耐震等級にこだわるあまり予算がなくなってしまい、本当に自分たちがしたい暮らしの家がつくれなくなってしまう場合もあります。耐震等級にこだわらずとも耐震補強はできますので、リノベーションでしたい暮らしを叶えるためにも、そこまで数値化(耐震等級)にはこだわらなくてもいいのではないかと個人的には思います。
──ありがとうございました。
家族を守るために、自身で耐震性についてしっかり考えよう
▲ 築57年の平屋をリノベーション。構造計算を⾏い、断熱材と耐震補強を適切に⾏うことで、耐震等級1と断熱等級4を達成(美想空間施工例)
旧耐震基準の家でも補強をすれば地震に強い家になるなら、中古物件を購入する際に選択肢が広がりますよね。確かに、リノベーション時は壁を解体するので、構造内もしっかりチェックできますし、耐震補強だけする時よりもリノベーションのついでに耐震補強をした方が予算はかかりません。
南海トラフで不安な思いを抱えている方も多いと思います。地震に強い家にすることは家族を守ることにつながりますので、リノベーション会社まかせにせず、ご自身でもしっかり耐震性について考えてみましょう。
取材協力
株式会社 美想空間
中古物件購入からサポートしてくれるワンストップ型のリノベーション会社。一戸建てのリノベーションが得意で、住む人の安心・安全・快適をベースとした上で、あそび=日常生活の余白を楽しめる家づくりを提案。大阪港駅から徒歩2分にあるKLASI COLLEGEでは、リノベーションセミナーやワークショップなどのイベントを随時開催。おしゃれなキッチンなどのショールーム、カフェ、キッズルームもあり、リノベーションのワクワク感を体感することができます。
▲ 築70年の建物をリノベーションした
KLASI COLLEGE
▲ 受付では日替わりでスタッフが
お出迎えしてくれる
筆者
住宅ライター/プロインタビュアー 大内 夏実
株式会社リクルートで情報誌のイロハを学び、独立。不動産・住宅系ライターとして経験を積む。大手ハウスメーカーから小さな街の工務店までさまざまな建築会社の注文住宅施工例やモデルハウスなどを取材し、また実際に購入した方、家を建てた方のインタビューも多数実施。年間100軒ほどの取材に基づいた知識と経験から多くの建築会社の広告戦略なども手掛けている。